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公演評:『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』

ピリリと効いたスパイスに思わずクスッと笑ってしまう、癒し系ミュージカル

中本千晶 演劇ジャーナリスト


拡大『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』=東宝演劇部提供

 「いい人」というのは、果たしてほめ言葉なんだろうか?

 一般的に「いい人だね」と言われたとき、人は微妙な気分になるものだ。それでもやっぱり「いい人」っていいな、「いい人」のままでいいんだな。『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』は、そんな風にホッとさせてくれるミュージカルだ。

 スヌーピーと飼い主のチャーリー・ブラウン、その仲間達の日常を描いた、あの「ピーナッツ」の世界がミュージカルになっている。ポップでカラフルなセットを背景に、ショートストーリーが次々と展開する。ほんわかとした雰囲気の中にも「ピーナッツ」の世界らしい洒落っ気とスパイスがピリリと効いている。決してゲラゲラと爆笑するわけではない、でも思わずクスッと笑ってしまう、そんな作品だった。

各方面から多彩なキャストがそろう

拡大『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』=東宝演劇部提供

 じつはこのミュージカル、歴史は意外と古くて、初演は今から50年前の1967年だ。自身も「ピーナッツ」のファンだったというクラーク・ゲスナーが作詞作曲と脚本を手がけ、オフ・ブロードウェイで大ヒットした。そして1999年には脚本を改訂し新曲も追加したリバイバル版が上演される。この時はキャストも充実し、サリー役のクリスティン・チェノウスとスヌーピー役のロジャー・バートがそれぞれトニー賞最優秀助演賞にも輝いている。今回、日本で上演されるものは、この99年リバイバル版を元にしている。

 日本版でも各方面で活躍する多彩なキャストがそろった。不器用でさえない「いい人」チャーリー・ブラウンには、『弱虫ペダル』初演での主演などで知られる村井良大。口うるさいルーシーには、声優やシンガーとして活躍する高垣彩陽。チャーリーの妹サリーには、舞台での実績も豊富なAKB48の田野優花。安心毛布が手放せないライナスには、ミュージカル『テニスの王子様』3rd seasonで主役を務めた古田一紀、ベートーヴェンを敬愛する天才音楽家のシュローダーには自身もミュージシャン・作詞家として活動する東山光明。そして注目のスヌーピー役は、珠玉の歌声で日本のミュージカルをリードする中川晃教である。

◆公演情報◆
『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』
2017年4月9日(日)~25日(火) 東京・シアタークリエ
2017年4月29日(土) 福岡・キャナルシティ劇場
2017年5月6日(土)~7日(日) 大阪・サンケイホールブリーゼ
2017年5月9日(火)~10日(水) 愛知・日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
[スタッフ]
原作:チャールズ・M・シュルツ著、コミック『ピーナッツ』より
脚本・音楽・詞:クラーク・ゲスナー
訳詞・演出:小林香
[出演]
村井良大、高垣彩陽、田野優花(AKB48)、古田一紀、東山光明、中川晃教
声の出演/大和悠河
 公式ホームページ
★村井良大インタビューはこちら

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筆者

中本千晶

中本千晶(なかもと・ちあき) 演劇ジャーナリスト

山口県出身。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て独立。ミュージカル・2.5次元から古典芸能まで広く目を向け、舞台芸術の「今」をウォッチ。とくに宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。主著に『タカラヅカの解剖図館』(エクスナレッジ )、『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』『宝塚歌劇に誘(いざな)う7つの扉』(東京堂出版)、『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡』(ポプラ新書)など。早稲田大学非常勤講師。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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