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月組博多座『長崎しぐれ坂』『カルーセル輪舞曲』

和物の芝居と王道レビュー、タカラヅカのエッセンスが凝縮された二本立て

中本千晶 演劇ジャーナリスト


拡大『カルーセル輪舞曲』公演から、轟悠(左)と珠城りょう=博多座提供

 5月4日、どんたくで盛り上がる博多にて、宝塚歌劇博多座公演『長崎しぐれ坂』『カルーセル輪舞曲(ロンド)』が初日の幕を開けた(5月27日まで上演)。新トップスター珠城りょう率いる月組メンバーに加え、専科の轟悠、華形ひかるも共演する。

 宝塚ミュージカル・ロマン『長崎しぐれ坂』では、この作品の初演でも伊佐次を演じた轟が男役としてのさらなる新境地を見せ、卯之助役の珠城もハマリ役。敵味方の立場になりながらも、なおかつ分かち難い絆で結ばれる二人に心揺さぶられる。

 レヴューロマン『カルーセル輪舞曲』は、本年1月に宝塚大劇場で「モン・パリ90周年」のスタートを飾った華やかなレビューだが、新場面やキャスト変更など博多座バージョンならではの見どころも満載だ。叙情あふれる和物の芝居と王道レビュー、タカラヅカのエッセンスが凝縮された二本立てに湧いた博多座初日の模様をお伝えしよう。

それぞれハマリ役の伊佐次、卯之助、おしま

拡大『長崎しぐれ坂』公演から、伊佐次役の轟悠(左)と卯之助役の珠城りょう=博多座提供

 『長崎しぐれ坂』は2005年に星組(轟悠、湖月わたる、檀れい)で初演されて以来12年ぶりの再演である。ときは江戸時代、神田明神の氏子であった幼なじみの三人が流れ流れて20年、長崎の唐人屋敷で再会したことから始まる物語だ。

 江戸で悪事の限りを尽くした挙句、長崎の唐人屋敷に逃げ込んでいる伊佐次(轟)、いっぽう卯之助(珠城)は北町奉行所の岡っ引きであったが、伊佐次を自分の手で捕らえるためはるばる長崎までやって来ている。そこに現れたのが、芸者に身を落とし大阪商人の囲われ者となっているおしま(愛希れいか)だった。

 異国情緒あふれる長崎の、吹き溜まりのような唐人屋敷で、ともに懐かしい江戸に思いを馳せる三人。そして、伊佐次とおしまとの間に再燃した恋の炎が、三人を思いもよらぬ方向に押し流していく。

 轟演じる伊佐次が登場した瞬間には、その凄みに圧倒された。「数えきれぬほどの盗みを働き人を何人も殺した」という言葉にも説得力がある。だが、ふとしたはずみに見せる少年のような眼差しが女心をくすぐる。これはもう「タカラヅカの男役」の枠を超える男の色気である。

 珠城演じる卯之助の真っ直ぐさは伊佐次と好対照で、伊佐次を包み込む包容力も感じさせる。青天もよく似合い、若手ながら臆せず受けて立つ芝居も頼もしい。愛希演じるおしまは、世慣れた立ち居振る舞いの奥に覗かせる伊佐次への純な思いがいじらしい。

◆公演情報◆
宝塚ミュージカル・ロマン『長崎しぐれ坂』~榎本滋民作「江戸無宿」より~
モン・パリ誕生90周年 レヴューロマン『カルーセル輪舞曲(ロンド)』
2017年5月4日(木)~27日(土) 福岡・博多座
[スタッフ]
『長崎しぐれ坂』
脚色・演出:植田紳爾
『カルーセル輪舞曲』
作・演出:稲葉太地
公式ホームページ

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筆者

中本千晶

中本千晶(なかもと・ちあき) 演劇ジャーナリスト

山口県出身。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て独立。ミュージカル・2.5次元から古典芸能まで広く目を向け、舞台芸術の「今」をウォッチ。とくに宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。主著に『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』『タカラヅカ流世界史』『宝塚歌劇に誘(いざな)う7つの扉』(東京堂出版)、『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡』(ポプラ新書)など。早稲田大学非常勤講師、NHK文化センター講師。

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