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[2]TVドラマ祭で見えたカンヌの粘り強さ

林瑞絵 フリーライター、映画ジャーナリスト

パリ市の映像施設フォーラム・デ・ジマージュで開催の「セリ・マニア」
(c)Gilles Coulon - Tendance Floue
パリ市の映像施設フォーラム・デ・ジマージュで開催の「セリ・マニア」  (c)Gilles Coulon - Tendance Floue

 イベントの成功は、運営する内部の人間の手腕や努力にかかっている。とはいえ、ある程度の規模のイベントの場合、それを受け入れる自治体や地元企業、住民からの支持や連携、協力がないと続かないだろう。

 どんなに立派な家屋を建てても、支える土台が危ういと、地盤沈下を引き起こしかねない。

 だとすれば、カンヌ映画祭という世界最大級の文化イベントを受け入れる「カンヌ市」の存在にも、今一度注目する価値がありそうだ。

国がサポートするTVドラマ祭

 最近、ちょうどカンヌ市の個性について考えさせられた文化ニュースが流れた。

 それは来年2018年から、国が助成金100万ユーロ(約1億2000万円)を出してバックアップするTVドラマ祭の開催地が決定したというもの。

 近年、世界的にTVドラマの人気が高まっているのは周知の通り。ベルリン、トロント、サンダンスといった大規模な映画祭もTVドラマを積極的に紹介している。

 わりに「映画」のフォーマットにこだわってきたカンヌでさえ、いよいよ今年はデヴィッド・リンチの「ツイン・ピークス」、ジェーン・カンピオンの「トップ・オブ・ザ・レイク」といった人気TVシリーズの新作を目玉上映として前面に据えた。もう世界のトップ映画祭も、TVドラマの存在を無視できなくなっている。

リール市のTVドラマ映画祭計画を支持したオードレ・アズレ文化・通信大臣リール市のTVドラマ祭計画を支持したオードレ・アズレ文化・通信大臣=撮影・筆者
 加えてTV番組を主軸に据えたフェスティバルも、パリ市や郊外のフォンテーヌブロー、南西のラ・ロシェル、モナコのモンテ・カルロなど国内外に散見できる。

 だが現時点では「映画におけるカンヌ」のように、海外まで名を轟かせられる決定的な存在のTVドラマ祭は、まだ誕生していない。

 そのためフランスは、他国で同種のイベントが巨大な力を持ってしまう前に、世界に誇れるTVドラマ祭を立ち上げ、手厚いサポートをすることに決めたのだ。去る3月24日にフランスのオードレ・アズレ文化・通信大臣は、開催場所を北の町「リール」に決定したと正式発表した。

 ノール県リール市は、ベルギーとの国境近くにあるフランス最北の地。もとは炭鉱や繊維産業で知られた工業都市。近年は文化都市として発展を続ける。パリから列車で1時間。ロンドンや欧州の中心ブリュッセルからも近く、地の利が良いのが魅力だ。

「三つ巴状態」のTVドラマ祭

 実はカンヌ市もリール市と同様に、このTVドラマ祭の開催を希望しており、政府の助成金を申請していたが、残念ながら選に漏れた。だが興味深いのは、カンヌのダヴィッド・リスナール市長が、負けを認めていないこと。

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