2017年05月10日
イベントの成功は、運営する内部の人間の手腕や努力にかかっている。とはいえ、ある程度の規模のイベントの場合、それを受け入れる自治体や地元企業、住民からの支持や連携、協力がないと続かないだろう。
どんなに立派な家屋を建てても、支える土台が危ういと、地盤沈下を引き起こしかねない。
だとすれば、カンヌ映画祭という世界最大級の文化イベントを受け入れる「カンヌ市」の存在にも、今一度注目する価値がありそうだ。
最近、ちょうどカンヌ市の個性について考えさせられた文化ニュースが流れた。
それは来年2018年から、国が助成金100万ユーロ(約1億2000万円)を出してバックアップするTVドラマ祭の開催地が決定したというもの。
近年、世界的にTVドラマの人気が高まっているのは周知の通り。ベルリン、トロント、サンダンスといった大規模な映画祭もTVドラマを積極的に紹介している。
わりに「映画」のフォーマットにこだわってきたカンヌでさえ、いよいよ今年はデヴィッド・リンチの「ツイン・ピークス」、ジェーン・カンピオンの「トップ・オブ・ザ・レイク」といった人気TVシリーズの新作を目玉上映として前面に据えた。もう世界のトップ映画祭も、TVドラマの存在を無視できなくなっている。
だが現時点では「映画におけるカンヌ」のように、海外まで名を轟かせられる決定的な存在のTVドラマ祭は、まだ誕生していない。
そのためフランスは、他国で同種のイベントが巨大な力を持ってしまう前に、世界に誇れるTVドラマ祭を立ち上げ、手厚いサポートをすることに決めたのだ。去る3月24日にフランスのオードレ・アズレ文化・通信大臣は、開催場所を北の町「リール」に決定したと正式発表した。
ノール県リール市は、ベルギーとの国境近くにあるフランス最北の地。もとは炭鉱や繊維産業で知られた工業都市。近年は文化都市として発展を続ける。パリから列車で1時間。ロンドンや欧州の中心ブリュッセルからも近く、地の利が良いのが魅力だ。
実はカンヌ市もリール市と同様に、このTVドラマ祭の開催を希望しており、政府の助成金を申請していたが、残念ながら選に漏れた。だが興味深いのは、カンヌのダヴィッド・リスナール市長が、負けを認めていないこと。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください