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[18]妊活夫婦が知るべき「子どもの未来」

横田由美子 ジャーナリスト

 女性の晩婚化・晩産化を受けて、今や“ブーム”にも近い妊活と不妊治療。一時期は、多くのタレントがこぞって「妊活宣言」していることもあった。しかし、私が最近、疑問を感じているように(前稿「[17]私は「わが子殺し」なのか「遺族」なのか」参照)、「妊活宣言」も少し変わってきたようだ。

マキシマム ザ ホルモンのナヲさん「マキシマム ザ ホルモン」のナヲさん
 2015年に「妊活宣言」し、流産経験を経て、第2子を出産した人気ロックバンド「マキシマム ザ ホルモン」のナヲさん。朝日新聞のインタビューに対して、こんな風に話している。

「(自分の妊活宣言で)傷ついた人もいただろうな」
「子どもを産まない人生を選択しても、それはOK……出産って当たり前ではない」(2017年5月8日付)

 それでも、前稿で紹介したナオミさんのようなケースを紹介し、「安易に不妊治療に飛びつく前に熟考すべき」、「子のない人生だっていいじゃないか」と、いくら警鐘を鳴らしたところで、今は無駄なのかもしれない。ナヲさんの声も妊活中の女性には届かないだろう。

「台湾ならまだ産めるかも…」

 5月7日付の読売新聞の一面トップは、「台湾で不妊治療 卵子提供受け110人誕生」というタイトルで、不妊治療のために台湾で卵子提供を受ける日本人女性が急増し、2014〜16年の3年間で少なくとも177人が治療を受けたことを報じている。

 「台湾で増えている理由は、恐らく、費用ではないか」

 と、不妊治療中のカップルは口を揃える。

 同紙によると、米国では「卵子提供」だけでも仲介業者を通すと500万円前後が相場とされている。ところが、台湾では、仲介業者を介さず日本語の通じるクリニックで治療を受ければ約200万円と半額以下だ。提供者には、休業補償の意味で、約37万円の「栄養費」が支払われる。これは台湾の大卒の初任給10万円を大きく上回る金額だ。ちなみに、台湾のひとりあたりの名目GDPは右肩上がりとはいえ、2万2453ドルだ(2016年、台湾行政院)

 そうした経済的背景を受けて、学費や家計の足しにするため、卵子を提供する若い女性が多いのだという。それこそ「命の選択だ」、「生命の倫理に反している」と、日本では非難囂々(ごうごう)の出生前診断(染色体異常があるか否かの検査)も台湾では、法的には難なくクリア。

 受精卵を自分の子宮に戻せば、卵子が老化して、自然妊娠も不妊治療もほとんど不可能な40代後半の女性でも「自己出産」が可能だ。着床障害を患っていたり、流産を繰り返す場合は、「代理母」という選択もある。これも米国では最低でも2000万円はかかると言われているが、台湾なら半値以下で可能になることは容易に想像がつく。

 いつの間にか台湾は、カジュアルな値段で、アラフィフ女性にも希望を与える「夢の土地」となっていたのだ。事実、もうすぐアラフィフの私も、「なるほど、台湾ならまだ産めるかも」と、一瞬だが妙な妄想に囚われてしまった。

 もし、唯一の難点があるとすれば、

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