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【ヅカナビ】歴代パーシーそれぞれの魅力

『スカーレット ピンパーネル』3度の上演を見比べてみた

中本千晶 演劇ジャーナリスト


 目下、日比谷の東京宝塚劇場は星組公演『スカーレットピンパーネル』の上演で盛り上がっている。2008年に星組の安蘭けい・遠野あすかが主演して大好評を博し、読売演劇大賞優秀作品賞、菊田一夫演劇大賞を受賞した作品だ。その後、2012年には霧矢大夢・蒼乃夕妃が率いる月組でも上演されている。再演希望の声も多かったこの作品に今回挑むのが、この公演が新トップコンビお披露目となる紅ゆずる&綺咲愛里だ。

 実力派の呼び声高いトップコンビが演じてきた作品である。「やっぱり星組初演が一番でしょ」「月組版こそ味わい深かった」「いやいや、私は今回の星組版が一番好き」etc.etc. 巷のタカラヅカファンの間では侃々諤々の議論が繰り広げられていそうだが、本当のところは何が違うのか? はたまたどのバージョンが一番なのか? せっかくなので、この機会に過去2回の映像も見直して比較してみようと思い立った。

まさに「イギリスの伊達男」、安蘭パーシー

 まず2008年の星組初演版を観てみると、幕開けからパーシー(安蘭けい)が歌う『ひとかけらの勇気』に圧倒される。対するマルグリット(遠野あすか)の歌唱力も素晴らしく、やはり初演がこの二人だったからこそ成功した作品だということを改めて感じたのだった。

 安蘭パーシーはまさに「イギリスの伊達男」という表現がしっくり来る、包容力のある洒脱な大人の男性だ。ピンパーネル団としての活動も、イギリス貴族のノブレス・オブリージュ(高貴な者の義務)を胸に秘めつつも、ゲーム感覚で楽しんでいる余裕さえ感じさせる。そんなパーシーが引っ張る星組初演版は、全編通じて遊び心に溢れ、ワクワクドキドキの冒険活劇の色彩が強い。

 恋愛に関しても安蘭パーシーはこれまで散々浮名を流してきたように見える。そんな色男が「年貢を納めた」のがマルグリットとの結婚というわけだ。だが、遠野マルグリットも恋愛経験の豊富さでは決して負けてはいないだろう。二人の間で展開する、スリリングな大人の恋模様も初演版の見どころだ。

 そんな二人とは対照的なアルマン(和涼華)とマリー(夢咲ねね)の爽やかさも際立っている。また、この初演版で一皮むけたのが、当時二番手の柚希礼音だった。柚希演じるショーヴランは、登場した瞬間からして敵役としての威圧感充分だ。己の信念のもと真っ直ぐに突き進む熱いショーヴランである。

 英真なおきのプリンス・オブ・ウェールズ、美稀千種のピポー軍曹は初演版と今回とが同じキャスティングだ。だが、今回の方が芝居の深みがぐっと増しているところに9年の歳月が感じられた。

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筆者

中本千晶

中本千晶(なかもと・ちあき) 演劇ジャーナリスト

山口県出身。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て独立。ミュージカル・2.5次元から古典芸能まで広く目を向け、舞台芸術の「今」をウォッチ。とくに宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。主著に『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』『タカラヅカ流世界史』『宝塚歌劇に誘(いざな)う7つの扉』(東京堂出版)、『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡』(ポプラ新書)など。早稲田大学非常勤講師、NHK文化センター講師。

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