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スタジオライフ関戸博一×松本慎也×宇佐見輝/上

『THE SMALL POPPIES』で5歳児を演じる

岩橋朝美 フリーエディター、フリーライター


拡大『THE SMALL POPPIES』に出演する、左から松本慎也、宇佐見輝、関戸博一=伊藤華織撮影

 男性のみで構成された劇団スタジオライフが、オーストラリア発の傑作戯曲『THE SMALL POPPIES』を、2017年6月15日より新宿シアターサンモールで上演する。作品の舞台は、1980年代のオーストラリア・アデレード。小学校に入学し、さまざまな背景を持った“他者”と初めて出会う5歳の少年少女3人のエネルギッシュな成長物語を通して、母子家庭や移民、難民など、現代にも通じる社会問題を浮かび上がらせる。

 ユニークなのは、5歳の子どもたちをすべて大人が演じること。ギムナジウムの少年から女子高生まで、年齢も性別も超越する役柄を、ものにすることに長けたスタジオライフならではの新たな挑戦といえる。また、同じ役者が子ども役と大人役を演じるため、早替わりも見ものだ。舞台の中央には、大きな盆が設置され、大胆な場面転換やスピーディーな展開が期待される。

 本作で、5歳の子どもレップとテオの母をWキャストで演じる松本慎也と宇佐見輝、レップの担任のウォルシュ先生を演じる関戸博一に話を聞いた。

5歳の役には、それほど驚かなかった

――今回の作品は、5歳の子どもたちが主人公です。少年役のご経験は豊富なみなさんも、幼児の役は珍しいですよね。最初に企画を聞いたとき、どう思いましたか?

関戸:ついにここまで来たかと(笑)。今まで着々と若い年齢を演じてきていて、僕は『訪問者』で、10歳ぐらいの役は演じたのが最年少かな……。ほかにあった?

松本:『DRACULA』の時の子キンシ―は若かったんじゃない? 5歳にもなっていないかも。

宇佐見:僕は『PHANTOM』のレイザーですね。8歳ぐらいかな。

関戸:だから、5歳と聞いても、そこまで衝撃ではなかったです。

松本:僕たちは性別も超えますからね。

関戸:このふたりが演じるレップは、5歳の女の子なんですよ。

松本:演劇でしかできない設定なので、最初に聞いた時は大丈夫かな?というよりも面白そうだなと思いました。

宇佐見:5歳の役には、それほど驚かなかったです。実年齢とかけ離れた役を演じるという点では50代の役でも同じですし。今までには妖怪も演じているので、違和感はなかったです。

拡大『THE SMALL POPPIES』に出演する、左から松本慎也、宇佐見輝、関戸博一=伊藤華織撮影

――この作品は、演出の倉田さんが30年間温めてきた企画だそうですが、みなさんにもその思いは伝えられていますか?

関戸:こういう作品を上演したいという話は今まで聞いたことがなくて、今回上演が決まって初めて、そんな思いがあったんだと知りました。(ロンドン公演を観た)倉田さんは、最初はワチャワチャして楽しい作品かと思っていたら、観ているうちにどんどん引き込まれていって感動したそうです。このチラシも、5歳の子どもたちがふざけてお互いの服に絵を描き合うというコンセプトで作ったんですけど、それだけの話ではないんですよ。

宇佐見:僕たちが演じるレップは、内戦中のカンボジアから命からがら逃れてオーストラリアに亡命してきた子どもです。ただ楽しいだけの作品ではないんだなと台本を読んで思いましたし、倉田さんもそのあたりをこだわりたいとおっしゃっていました。

関戸:カンボジアの内戦が起こっていた1980年代の話なんですよね。移民や人種の違いなど、子どもと周りにいる大人の状況が複雑で深い話だなと思います。

松本:社会的なメッセージが入っていますが、5歳の子どもたちが主人公なので、言葉ではいっさい説明しないんです。子どもたちの日常生活の一部に、垣間見えるような作りになっているんです。

関戸:描かれるのは、いろんな事情があってアデレードに集まった人々の日常なんだよね。

――関戸さんは、レップのお姉さんのノイと、ウォルシュ先生の2役を演じられるんですよね。

関戸:実は、稽古中にいろいろと変更がありまして、僕はウォルシュ先生だけになりそうです(※取材後に、ウォルシュ先生のみに正式決定)。僕は大人の立場で子どもたちを見守る側になると思います。

――稽古中に配役が変更になることはよくあることなのですか?

関戸:新作では、たまにありますね。『少年十字軍』では宇佐見とWキャストの予定でしたが、ドミニクという役に変更になりました。この方が面白くなりそうとか、全体のバランスを見て変わることはあります。

――関戸さんが演じるウォルシュ先生は、子どもたちの担任の先生ですか?

関戸:はい、最下級生のクラスの担任の先生です。先に入学している子どもたちがいて、そこにクリント、テオ、レップが同時に入学してくるんですね。

――3人に影響を与える大人という、大事な役どころになりそうですね。

関戸:とてもとても大事な役です。この作品は大人が子どもを演じているという設定で物語が展開します。ウォルシュ先生は、担任として子どもたちを見守る役でもあり、舞台全体を見守る立ち位置でもあるんです。演じていない人も全員舞台上にいる設定になっているので、舞台上で起こっていることをどう見守るか。狂言回し的な部分もあると思います。ウォルシュ先生はミセスなので、おそらく子どももいると思うので……。愛にあふれた人なので、先生としての愛と、この構造としての先生の愛をどう見せていくかを考えているところです。

いつ倉田さんが「うるさいから飛ばないで!」っていうかなぁ

拡大『THE SMALL POPPIES』に出演する、左から松本慎也、宇佐見輝、関戸博一=伊藤華織撮影
――松本さんと宇佐見さんは、レップと、テオのお母さんの2役を演じられますね。

宇佐見:レップはカンボジアの内戦で恐ろしい体験をした後に、言葉の通じないオーストラリアにきたので、言葉でのコミュニケーションができず心もふさぎこんでいます。セリフが少ないなかで、心情をどう表現するかが難しいところですね。テオのお母さんの役はギリシャ人なので、周囲との人種の違いを、倉田さんは丁寧に描きたいとおっしゃっていました。

松本:セリフが本当に少なく、心情表現はセリフ以外で伝える必要があるので、周りと一緒に作っていければと思っています。まだ5歳の子どもなので、わけもわからずに助けてもらって、オーストラリアに来て、今自分が不幸なのか幸福なのかもどのくらいわかっているんだろうと思うんですね。大人の僕たちから見れば悲劇なんですけど、彼女には子どもの強さがあるのではと思っていて、そこを探していけたらいいです。ほかの子どもたちも反応が素直で、それが人として自然な反応だなと思います。

――レップが、同級生として出会うクリントとテオは、どのようなキャラクターなのでしょうか? すでに、稽古場では、はっちゃけているという話も聞きましたが。

関戸:船戸さんが凄いです。

宇佐見:テオはとにかく元気。無駄に活発で明るい元気な子です。

関戸:台本では、ずっとジャンプしていて空中にパンチを打っているという設定なんですが、笠原さんと船戸さんなので、いつ倉田さんが「うるさいから飛ばないで!」っていうかなぁと思っています。

松本:ふたりとも大きいからね~(笑)。

宇佐見:初めての立ち稽古のときに、凄く元気で。あれ、これが5歳児? いや、でもレップは違うぞ……と、ちょっと混乱しました(笑)。

関戸:クリントたちをいじめる上級生のシェーンという役もいるんですよ。でも、船戸さん負けなさそうですよね。あれ、シェーンって誰が演じるんだっけ? あ、藤原(啓児)さんだ! それなら大丈夫だ。

松本:あははははは! いじめっ子を演じる座長(笑)。

◆公演情報◆
スタジオライフ公演『THE SMALL POPPIES』
2017年6月15日(木)~7月2日(日) 東京新宿・シアターサンモール
[スタッフ]
作:DAVID HOLMAN
上演台本・演出:倉田淳
企画・制作・問合せ:Studio Life〈03-5942-5067/平日12:00~18:00〉
[出演]
笠原浩夫、山本芳樹、岩﨑大、船戸慎士、牧島進一、関戸博一(koalaチームのみ)、松本慎也、仲原裕之、緒方和也、宇佐見輝、若林健吾、千葉健玖、江口翔平、吉成奨人、藤原啓児
公式ホームページ
〈関戸博一プロフィル〉
神奈川県出身。『トーマの心臓』『訪問者』『PHANTOM THE UNTOLD STORY 語られざりし物語』などスタジオライフ公演の他、『大図~月から江戸まで八百歩』『私が欲しいカラダ』など外部舞台への出演も多数。また、ドラマCD『青い羊の夢』、アニメ映画『桜の温度』などで声優としても活躍中。
〈松本慎也プロフィル〉
愛媛県出身。『トーマの心臓』『PHANTOM THE UNTOLD STORY 語られざりし物語』『エッグ・スタンド』などスタジオライフ公演の他、『ACT泉鏡花』『風が強く吹いている』『大正浪漫探偵譚 ~君影草の設計書~』『天球儀』『Silver Star, Silver Moon, Silver Snow』など外部舞台への出演も多数。
〈宇佐見輝プロフィル〉
千葉県出身。『トーマの心臓』『DAISY PULLS IT OFF』『エッグ・スタンド』などスタジオライフ公演の他、危婦人『福憑~そこはかとなく忠臣蔵~』dopeⒶdope step.2『コンダクター-The conductor-』などの外部出演も行う。

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筆者

岩橋朝美

岩橋朝美(いわはし・あさみ) フリーエディター、フリーライター

映画関連のムック・書籍の編集に携わった後、女性向けWEBメディア・Eコマースサイトのディレクションを担当。現在はWEBを中心に、ファッション・美容・Eコマースなど多様なコンテンツの企画、編集、取材、執筆を行う。また、宝塚やミュージカルを中心とした舞台観劇歴を生かし、演劇関連の取材や執筆も行う。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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