真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター
大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
やると決まったからには、全力でやりたい
新しいピーターパンが誕生する!
世代を超えて愛されてきたブロードウェイミュージカル『ピーターパン』。37年目を迎える今年のピーターパン役は、第41回ホリプロタレントスカウトキャラバンでグランプリに輝いた、13歳の吉柳咲良(きりゅう・さくら)。10代目ピーターパン、そして最年少タイピーターパンとしてこの夏、躍動する。
そのフレッシュなピーターパンを囲むキャストには、フック船長・ダーリング氏役に鶴見辰吾、ウェンディ役に神田沙也加、スミー役に石井正則、タイガー・リリー役に宮澤佐江、ダーリング夫人役に入絵加奈子、そして、ライザ役が復活し久保田磨希があたる。
さらに、第24回読売演劇大賞・最優秀作品賞を受賞したミュージカル『ジャージーボーイズ』を演出し、自らも優秀演出家賞を受賞した藤田俊太郎が演出をすることでも注目されており、今回はブロードウェイ版に寄せた作品になるという。
運動会の練習での日焼けが初々しい吉柳咲良と6年ぶりにウェンディ役を演じる神田沙也加が、大阪で開かれた取材会で作品への意気込みを語ってくれた。
――(吉柳へ)ピーターパン役が決まった時の気持ちは?
吉柳:最初は本当に実感がわかなかったです。驚きを隠せなくて、『ピーターパン』のチラシを目を見開いてずっと見ていました(笑)。最近になってやっと実感してきて、やると決まったからには、全力でやりたいと思っています。
――(神田へ)6年ぶりのウェンディ役ですが、見え方が変わったところなどありますか?
神田:30歳になるので大丈夫か?(笑)という気持ちはありましたが、吉柳さんの13歳のフレッシュさに一生懸命ついていこうと思っています。以前3年間務めさせていただいた、とても大切な役ですので、役への思い入れはそのままにしながらも、演出が新しくなり、衣裳も今までと趣向が違ったものになりますので、そこには染まりつつ、新しいアイデアなどもお稽古をしながらディスカッションしていけたらいいなと思っています。
――ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』への想いと魅力を教えてください。
吉柳:役をいただいてから資料用DVDを拝見して、「こんなにすごい舞台なんだ!」とびっくりしました。映像なのに引き込まれて、ネバーランドにいる気分になりました。そのピーターパンを演じられることは光栄ですし、とてもうれしいです。ピーターパンは子供だし、私もまだ13歳なので、今の私にしかできないピーターパンを演じられたらいいなと思っています。
神田:初めて見た舞台が『ピーターパン』で、7歳だったと思います。目の前で飛ぶピーターパンにものすごくびっくりしましたし、「ピーターパンはここにいたんだ!」と思った記憶があります。夏休みに見に来てくれる子供たちが、ピーターパンもウェンディもここにいたんだと、そう思っていただけるようなキャラクター作り、そういう説得力を持たせられたらいいなと思っています。私が知っている中で一番夢のある作品だと思いますし、関わらせていただいてから、ピーターパンは私の中で絶対的ヒーローになっています。
――子供たちに見て欲しいポイントは?
吉柳:すごく元気で活発で友だち思いで、そしてカッコいいです! 大人の方は子供の頃に戻れると思いますし、幕ごとに違うピーターパンにも注目して見て欲しいです。
神田:男の子でしたらピーターパンに憧れてもらいたいですし、一緒に飛べるんだという気持ちになってもらいたいですね。そして女の子には、もしかしたらピーターパンが来てくれるかもしれないと空想してもらえたらいいなと思います。僕や私の身にも起こりうるんじゃないかと思ってもらえるような身近な作品として、受け止めてもらえたらいいなと思います。
――お互いの印象を教えてください。
吉柳:『キューティ・ブロンド』を観させてもらったのですが、歌声がとてもきれいで演技も素晴らしくて、見ている途中なのに立ち上がって拍手したくなりました。ミュージカル界のスターなので、そんな方と一緒に同じ作品に出演できることは、本当に光栄で信じられない気持ちです。
神田:ピーターパンをされる女優さんは、“ピーターパンの声”や“ピーターパンの瞳”を持っていると感じるのですが、咲良さんも初めてお会いした時、誰が見ても納得のピーターパンだという説得力がありました。髪の毛を伸ばしていたり、ワンピースが似合ったりするんだけども、ボーイッシュな雰囲気が見え隠れして、中性的な魅力も持ち合わせているなとすごく感じています。ご一緒できることが楽しみですし、自分では思いつかない発想やフレッシュな感覚を学ばせていただきたいなと思っています。
――(神田へ)13歳の吉柳さんと並ぶと貫禄があるように見えますが、並んでみていかがですか?
神田:え~~!? 貫禄がありますか? デビューしたのが13歳の終わりくらいだったので、その頃を思い出しますね。その年齢での主演というのは楽しみでもありますし、わからないならではの強みが絶対にあるんですね。どんなことにも挑んでいける、恐くない、というのは、今、手に入れようと思っても入らないので、そこはうらやましく思います。そして、貫禄が出てると言ってくださって、すごくうれしいです(笑)! そうじゃなきゃいけないですよね。
――感覚として、吉柳さんは妹ですか? 娘さんですか??
神田:どっちだろう……。強いてお姉ちゃんでいられたらいいなと思います。ピーターパンの世界に入ると、年齢を飛び越えて向き合えるんじゃないかなと……そういう風にもっていきます(笑)!!
――(吉柳へ)運動神経が良さそうですね。
吉柳:(照れ笑い)……運動が得意なわけではないんです。でも、ヒップホップダンスを習っていましたので、踊るシーンはがんばりたいですし楽しみです。
――(神田へ)結婚されてから演じるウェンディ役、なにか変化はありそうですか?
神田:大人になったウェンディの描写が終盤にあるのですが、その作り方について悩んだ思い出があります。今は大人になったウェンディに年齢が近くなったので、考え込まなくても作れるかなと思う反面、活発で可愛らしい部分は、子供たちと触れあう機会をもって作ろうかなと思っています。
でも、あまりテクニックに頼らないほうが良いかなとも……。わざとらしくキャッキャしても子供たちに見抜かれてしまうと思うんですね。子供は素直な心で作品を見てくれます。私自身が心からピーターパンの言葉にときめいて、驚いて、毎日新鮮に受けとれたら、見ている方も楽しんでくれるんじゃないかなと思うので、知らない世界が開けていく喜びを、日々絶対に忘れないようにしようと思います。
――(吉柳へ)10代目という節目、そして最年少タイのピーターパン役ということについてどう感じていますか?
吉柳:歴代の方々は素晴らしい先輩方ばかりですし、その歴史と責任を背負って10代目のピーターパンをやるのは、重大だなと思います。『ピーターパン』をずっと見てきた方の期待に応えられるよう、私にしかできないピーターパンを演じたいなと思っています。最年少タイということですが、今の私の活発さや明るさは、今までの誰よりも出せるという自信があります! そこを生かしながら、ボイストレーニングやフライングの練習など、これからがんばっていきたいと思います。
――最後にメッセージをお願いします。
吉柳:『ピーターパン』は歴史のあるすごい作品で、感動したり笑ったりできる作品です。この作品を見て、子供たちには夢を持って欲しいですし、大人の方には子供の頃を思い出してもらえたら、と思います。今年のピーターパンは良かったと思っていただけるように、お稽古からコツコツとがんばりたいです。フライング、ダンス、歌や演技、全部に注目していただいて、夏の思い出にしていただきたいと思います。
神田:6年ぶりの参加、そして新演出を楽しみにしています。そして、人の初舞台に関われることは光栄ですし、責任があることだと思っています。初舞台は1回しかないので、最高の思い出だったと咲良さんが胸を張って言えるような作品になるよう、お手伝いができたらいいなと思っています。ぜひ、見にいらしてください。
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