2017年06月21日
前稿で書いたように、子どもたちに「アパルトヘイト」状態を強いないようにするためには、社会的な弱者である子どもを十分に視野におさめた都市計画が不可欠である。これは、主に高齢者を念頭においた――その中にはいわゆる「買い物難民」問題も入る――政策とも、おのずと通底する。すなわち、都市においてはいわゆる「歩行居住圏・歩いて住める街」(コンパクトシティ)の設計を重視し、かつ特に子どものために、そこではマイカー利用をできるだけ不便にする、という政策である。
これは、ヨーロッパ諸国ではある意味で当然の政策と見なされている。
例えばドイツ。西にフランスの、南にスイスの国境を臨む都市フライブルクでは、45年も前に策定された住宅地および都市中心部での「交通静穏化」Verkehrsberuhigung、つまりクルマの低速化・進入禁止措置・一方通行化等の政策が、今でも生きて都市環境を守っている。
以前からの政策を念頭に置けば、ヨーロッパ諸国ではたしかに、子ども等の社会的弱者を第一に考えた各種の交通施策が採用されてきた。オランダの「ボンエルフ」Woonerf(生活の庭)が有名だが――そこではクルマがスピードを出せないようにする各種の物理的システムを導入している――、「ゾーン30」(もしくは「テンポ30」)もまた広く採用されてきた。これもまた「ボンエルフ」と同様に、物理的なシステムによってクルマに低速を余儀なくさせる方策と結びついているが、後者がどちらかといえば線的な安全方策であるのに対して、「ゾーン30」は面的にそれを拡充することを目指している。
すでに1990年代からその応用がヨーロッパ、特にオランダ・ドイツ圏で始まり、これが――一定の進展とともに一時的に関心低下を招いた時期はあったものの――今日までほぼ連綿と続いてきたのである。
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