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こまつ座『イヌの仇討』出演、彩吹真央に聞く/上

吉良上野介の立場から描く『忠臣蔵』異聞が29年ぶりによみがえる

中本千晶 演劇ジャーナリスト


拡大こまつ座『イヌの仇討』に出演する彩吹真央=岩村美佳撮影

 井上ひさし作『イヌの仇討』がこまつ座で上演される。物語の舞台は赤穂浪士の討ち入り当日。だが、そこには大石内蔵助も四十七士も出てこない。吉良の側から見た『忠臣蔵』を描いた異色作の29年ぶりの再演だ。演出を担当するのは、劇団桟敷童子の東憲司である。

 この作品に、上野介の愛妾・お吟役として出演する彩吹真央に話を聞いた。念願だったというこまつ座への出演が叶い、役作りや作品への思いについて熱っぽく語る様子からも、佳境を迎えるお稽古の充実ぶりがうかがえた。宝塚を退団して今年で8年目となる彩吹だが、今、女優として一歩ずつ着実に前に進み続けているようだ。

お吟の上野介さまへの一途な愛を伝えたい

拡大こまつ座『イヌの仇討』に出演する彩吹真央=岩村美佳撮影
――今回ご出演の『イヌの仇討』の脚本、私も図書館で借りて読んでみたのですが、とても面白くて一気に読んでしまいました。

 そうですよね! 私も最後まで一気に読みました。「こんなに面白い戯曲が、どうして29年間も再演されなかったのだろう」と思うぐらい。そんな作品に出させていただけるのはとても嬉しいです。

――彩吹さんが演じられるのは、お吟さまという吉良上野介の愛妾の役ですが、どんな方なのでしょう?

 最初に台本を読んだときから「果たして私はどの役だろう? お吟だったら嬉しいなあ」と思っていたので、お吟に決まったと連絡をいただいたときは本当に嬉しかったです。とても感情移入しやすくて、もしお吟をやるならこう演じたいというインスピレーションもありました。お吟は何とかして上野介さんのお命を助けたいと思っている、その一途なところに女性らしさを感じます。お吟はきっと上野介さんの身分などではなく、本当の優しさや心の深さ、男らしさに惹かれていると思うので、そんな純粋な愛が伝わればいいなと思います。 

――そこでぜひお聞きしたいのですが、彩吹さんは『アドルフに告ぐ』(2015年)でヒトラーの恋人であるエヴァ・ブラウン役も演じられました。歴史的に見るとどちらかというと悪役とされる男性を愛し、また愛されるという役を演じるのは、どんな感じですか?

 何かあるのかもしれないですね。彩吹真央というキャラクターが、そういう役にハマるのかな(笑)。昨年の『九条丸家の殺人事件』というコメディーでも「愛人気質でね」というセリフがありましたし、どうやら愛人気質なのかもしれないですね(笑)。

◆公演情報◆
山形新聞・山形放送 後援
こまつ座118回公演
『イヌの仇討』
2017年7月5日(水)~23日(日) 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
[スタッフ]
作:井上ひさし
演出:東 憲司
[出演]大谷亮介、彩吹真央、久保酎吉、植本潤、加治将樹、石原由宇、大手忍、尾身美詞、木村靖司、三田和代
公式ホームページ
〈彩吹真央プロフィル〉
1994年宝塚歌劇団入団。繊細な演技力とのびやかな歌声を持つ男役スターとして活躍。2010年宝塚歌劇団を退団。主な出演作品は『DRAMATICA/ROMANTICA』『Pal Joey』『COCO』『モンティ・パイソンのスパマロット』『サンセット大通り』『シラノ』『ウェディング・シンガー』など。また、コンサートなどの歌手活動や声優など様々なジャンルにも積極的に挑戦している。
彩吹真央Official Web Site

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筆者

中本千晶

中本千晶(なかもと・ちあき) 演劇ジャーナリスト

山口県出身。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て独立。ミュージカル・2.5次元から古典芸能まで広く目を向け、舞台芸術の「今」をウォッチ。とくに宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。主著に『タカラヅカの解剖図館』(エクスナレッジ )、『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』『宝塚歌劇に誘(いざな)う7つの扉』(東京堂出版)、『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡』(ポプラ新書)など。早稲田大学非常勤講師。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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