2017年06月28日
インターネットにあふれる医療・健康情報。自身や大切な家族、友人が病を患ったり、体調を崩したりしたときに頼ってしまうものだが、あまたある記事のなかから自分が求める“正しい情報”を選び出すのは意外と難しい。
記事の信憑性や正確性に関する問題を浮き彫りにしたのは、IT 大手のDeNA(ディー・エヌ・エー)の健康・医療系サイト「WELQ(ウェルク)」の一件だろう。昨年(2016年)11月に「肩こりの原因は幽霊」などといった不正確な記事を載せていることが発覚し、同社はサイトの公開を中止した上で謝罪。今年3月には第三者委員会が調査結果を報告するとともに、同社の守安功代表取締役社長兼CEOらが改めて謝罪した。
報告書によると、委員会は同社が運営した10サイトの記事37万6671件についてサンプル調査を実施。その結果、複製権や翻訳権侵害、複製権侵害の可能性のある記事、画像が見つかったほか、WELQの記事19本のうち、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)や医療法、健康増進法に違反する可能性がある内容を含むと認められる記事が、計10本見つかった。
具体的には、製造販売元の添付文書にはない効能効果が記載されていたり、薬ではないサプリメントの効能効果を謳って顧客を誘導しようとしていたりすることなどが問題と指摘された。前者は、薬機法66条が禁止する「医薬品等の広告規制」に、後者は68条が禁止する「未承認の医薬品等の広告」に該当する可能性があるという。
「66条は、誇大、あるいは誤った情報を発信してはいけないという規制。68条は未承認薬の紹介をあたかも効果のあるように告知してはいけないという規制です。これは広告に限らず、一般的な記事も対象になりますし、医師が監修していた記事であっても、中身が問題であればアウトです」
と説明。その上でDeNAについてこう意見する。
「外部サイトの記事を集約するキュレーションサイトであっても、健康問題に関わる情報を発信すれば、被害が起こる危険性もある。そこが旅行やファッションなどの記事とは違うところです。もし裁判になったら、記事を提供する立場としてしっかり管理・監督する義務があると認定される可能性もあります」
いずれにしても、インターネットから情報を得るのが当たり前となった現在、一般のユーザーは医療・健康情報サイトについてどう考え、どんな記事を信頼して見ているのだろうか。今回、WEBRONZAでは総合医療メディアのQLife(キューライフ)の協力を得て、インターネットによるアンケート調査を試みた。
「WELQ問題を受けて多くの医療情報サイトが編集や校閲をさらに厳格化した一方、まとめサイトやQ&Aサイトでは、今も医療・健康に関する多くの誤った記事や回答が見受けられます。医療情報が正しく伝わっているかという問題では、WELQ すらも氷山の一角といっても過言ではありません」(QLife編集長の田中智貴氏)
回答したのは20代~80代以上のQLife会員292人。性別は男性150人、女性142人だった。では、その調査結果を見ていこう。
<Q1:WELQの問題について>
「大いに関心がある」「関心がある」49.4%(144人)
「あまり関心がない」「全く関心がない」21.9%(64人)
「ニュース自体知らない」28.8%(84人)
<Q3:WELQの問題はどこにあるか>
「誤った内容の記事を載せているところ」59.0%(85人)
「医者など専門家が記事を書いていないところ」55.6%(80人)
「他サイトの記事をコピー&ペーストするなどしたところ」54.9%(79人)
WELQの問題が最初に明るみに出たのは、昨年11月。その後、ネットメディアにとどまらず、新聞などでも度々報じられたが、それでも「知らない」と答えた人が3割もいた。他方、医療情報サイトが実施したアンケート調査であるためか、WELQの問題として、著作権の侵害と同様に記事の質や内容を問題視しているところは、興味深い。
WELQの問題では、「キュレーション」や「アルゴリズム」という言葉が頻繁に登場してきた。キュレーションとは、「インターネット上のコンテンツをある特定のテーマや切り口で読みやすくまとめ、編集・共有・公開すること」(報告書より)とある。「まとめサイト」とも呼ばれ、DeNAはWELQのほか、複数のキュレーション事業を展開していた。
アルゴリズムとは、GoogleやYahoo!などの検索サイトが独自に検索順位を決める計算式で、その「要素」を満たしているサイトほど検索の上位にくる。
我々はインターネットで何かを調べる際、検索サイトに関連するキーワードを入力して、該当する記事を探す。そこで上位に来たサイトが「調べたい情報に合致したサイト」と信用しがちだ。だが、
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