2017年07月05日
「SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)の広告に約400円でほくろ除去とあったので美容外科へ行った。しかし、30万円の手術を勧められ、断り切れず、結果的に22万円の契約をさせられた」
「包茎手術をしたが、カウンセリングの結果、ホームページに掲載されていた費用より高額な施術をすることになった」
これらは、国民生活センターに寄せられた美容医療サービスに対する相談内容の一部だ。相談件数は、2016年では1936件にのぼる。このうち販売方法や広告に問題がある相談は約半分の1068件だった。
「賢い患者」になるための支援活動を行う認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)。四半世紀以上にわたって患者の電話相談に応じているが、医療機関のホームページに関する相談が後を絶たない。先日も、男性からこんな悲痛な相談を受けた。
「妻からシワが気になると言われてウェブサイトで調べたら、『ヒアルロン酸』というキーワードとともに、『シワが完全に消えます』という美容医療のクリニックのホームページが出てきたんです。妻に施術を受けさせたら、しこりができてしまって……」
同法人理事長の山口育子さんは言う。
「この方のケースでは、ホームページの勧誘の言葉を一般的な医療情報だと誤解されていたわけです。実際、相談者の多くは、主に自由診療の医療機関のホームページに書かれている情報を信じたために、トラブルに巻き込まれています」
医療は、人の命や健康に関わるサービスであり、専門性が高い。そのため医療法施行規則の第一条の九では、「他の病院、診療所又は助産所と比較して優良である旨を広告してはならない」「誇大な広告を行ってはならない」「客観的事実であることを証明することができない内容の広告を行ってはならない」などと明記されている。
だが、医療機関のウェブサイトの場合、ページの左右や記事の途中に表示される、他のサイトに誘導するバナー広告や、検索時に掲示される広告枠の情報は「広告」として、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の66条(誇大広告等)、68条(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)に準じて規制されているものの、ホームページそのものは、国民や患者への情報提供の場であるため広告とは見なさず、自由に表現することが許されている。
繰り返すが、「ホームページは広告ではない」ため、規制されていないのだ。医療機関のホームページの問題に取り組む「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」の委員を務めた山口さんは、「私も検討会のときに初めてその話を聞いて驚きました。と同時に、多くの人はこのことを知らないのではないか。そこに危機感を覚えました」と話す。
美容医療だけではない。最近ではがんの免疫療法などを謳ったクリニックのホームページにも、エビデンス(科学的根拠)に基づかない治療法や、がん患者や家族を巧みに誘引するような表現をするホームページがあり、問題になっている。
「一般の人は免疫療法といっても、本来の使い方などは分からない。だから藁(わら)にもすがる思いでそういうクリニックに頼ってしまう。心配のあまり家族がそういうクリニックを探してきて、受診を勧めるというケースもあります。患者としては家族の好意を断ることは、やっぱりできにくいと思います」(同)
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