現在は映像文化の過渡期。カンヌ映画祭の反応は時代遅れ?
2017年07月06日
「もし私がまだ映画祭の責任者だったら、ああいう劇場ファーストの判断はしないでしょうね」
カンヌは、この2本がフランスの映画館で上映されないことがコンペ選出後にわかり、来年以降はフランスで劇場公開されない映画はコンペに入れないと宣言した。このニュースは日本でも報道されたが、実際のところはあまり話題にはならなかったと思う。
理由はいくつかあるが、一番はカンヌのコンペ作品が必ずしも日本で公開されるとは限らないこと。2005年から08年頃、日本ヘラルド映画など独立系洋画配給会社が倒産したり買収された頃は、コンペの半分も配給されなかった。今では大半が配給されるが、例えば去年のカンヌのコンペ21本のうち、ブラジル映画『アクエリアス』、ルーマニア映画『シエラネバダ』、フランス映画『マ・ルート』『垂直のままで』などが未公開のまま。国内の東京国際映画祭のコンペは選ばれる作品が地味なこともあって、その後の劇場未公開作品はもっと多い。
そもそも2016年に日本で公開された映画は、映画祭を除いて1149本(邦画610本、洋画539本)。このうちいくつかが配信オンリーになっても誰も困らないだろう。
既に2015年のベネチア国際映画祭のコンペで上映されたキャリー・フクナガ監督の『ビースト・オブ・ノー・ネーション』はネットフリックスが配給権を買い、日本では劇場公開なしですぐに配信されている。アフリカの内戦下に生きる少年を描いた力作だが、劇場公開はとても無理だと思っていたので、映画ファンにはむしろ配信はありがたい話になる。
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