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ネットフリックス=映像配信は映画界を変えるのか

現在は映像文化の過渡期。カンヌ映画祭の反応は時代遅れ?

古賀太 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

ネットフリックスの映画「ウォー・マシーン」の宣伝で来日した主演のブラッド・ピット(右から2人目)や制作陣ら=5月22日、東京都港区20170525拡大ネットフリックスの映画『ウォー・マシーン』の宣伝で来日した主演のブラッド・ピット(右から2人目)や制作スタッフたち=2017年5月25日
 今年のカンヌ国際映画祭のコンペに出たネットフリックス製作の2本が物議をかもしたことを受けて、この春まで東京国際映画祭のトップを務めていた椎名保さんは私にこう言った。

 「もし私がまだ映画祭の責任者だったら、ああいう劇場ファーストの判断はしないでしょうね」

 カンヌは、この2本がフランスの映画館で上映されないことがコンペ選出後にわかり、来年以降はフランスで劇場公開されない映画はコンペに入れないと宣言した。このニュースは日本でも報道されたが、実際のところはあまり話題にはならなかったと思う。

 理由はいくつかあるが、一番はカンヌのコンペ作品が必ずしも日本で公開されるとは限らないこと。2005年から08年頃、日本ヘラルド映画など独立系洋画配給会社が倒産したり買収された頃は、コンペの半分も配給されなかった。今では大半が配給されるが、例えば去年のカンヌのコンペ21本のうち、ブラジル映画『アクエリアス』、ルーマニア映画『シエラネバダ』、フランス映画『マ・ルート』『垂直のままで』などが未公開のまま。国内の東京国際映画祭のコンペは選ばれる作品が地味なこともあって、その後の劇場未公開作品はもっと多い。

ファンにはありがたい配信

 そもそも2016年に日本で公開された映画は、映画祭を除いて1149本(邦画610本、洋画539本)。このうちいくつかが配信オンリーになっても誰も困らないだろう。

 既に2015年のベネチア国際映画祭のコンペで上映されたキャリー・フクナガ監督の『ビースト・オブ・ノー・ネーション』はネットフリックスが配給権を買い、日本では劇場公開なしですぐに配信されている。アフリカの内戦下に生きる少年を描いた力作だが、劇場公開はとても無理だと思っていたので、映画ファンにはむしろ配信はありがたい話になる。

ネットフリックスのオリジナル映画「オクジャ」=カンヌ国際映画祭提供拡大ネットフリックスのオリジナル映画『オクジャ/okja』=カンヌ国際映画祭提供
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筆者

古賀太

古賀太(こが・ふとし) 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

1961年生まれ。国際交流基金勤務後、朝日新聞社の文化事業部企画委員や文化部記者を経て、2009年より日本大学芸術学部映画学科教授。専門は映画史と映画ビジネス。訳書に『魔術師メリエス――映画の世紀を開いたわが祖父の生涯』(マドレーヌ・マルテット=メリエス著、フィルムアート社)、共著に『日本映画史叢書15 日本映画の誕生』(岩本憲児編、森話社)など。個人ブログ「そして、人生も映画も続く」をほぼ毎日更新中。http://images2.cocolog-nifty.com/

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