AV的エロ量産の背景には男性の低い自己肯定感がある
2017年08月08日
2017年7月4日に公開された動画では、主演女優の壇蜜氏による「ぷっくり膨らんだ、ず・ん・だ」「肉汁トロットロ、牛のし・た」「え、おかわり? もう~、欲しがりなんですから」というセリフがあり、亀の頭が大きくなるという描写もあるなど、観光アピールとは無縁の性的なメタファーが至るところに散りばめられています。
当然のことながら、インターネット上をはじめとして、たくさんの批判の声が集まりました。県に対する苦情の電話やメールも、120件以上寄せられているとのことです。私のもとにも、「少なくとも毎年宮城県に行ってた人間が一人減ったことは確実です」等のメッセージをいくつか頂きました。
確かに動画に失望した人が来なくなったところで、全体の観光に与える影響は軽微だと思いますが、性的なCMがインターネットで炎上をするケースが相次いでいる昨今、自ら手を染めた宮城県のブランドイメージを大きく毀損したことは事実でしょう。
反対の声はネットや抗議の電話に留まらず、7月21日には、宮城県議会の女性議員全員が配信中止を申し入れました。全員といっても7名とのことですが、それでも特定の属性の議員全員が反対というのは、とても異常な事態です。
たとえばアメリカのある州で黒人の州議会議員全員が反対するPR動画があれば、それは人種差別の可能性が高いと判断するのが妥当でしょう。それと同様に女性議員全員が反対しているのですから、女性差別的である可能性は高いと考えるべきです。
ところが、対応した宮城県副知事の河端章好氏は、申し入れを精査することなく「問題はない」と回答しています。これは少数派の声は無視して良いということでしょうか? 河端副知事は「県男女共同参画推進条例の基本理念に反したとは考えていない」とも述べていますが、全女性議員が反対している状況でなぜそのようなことが言い切れるのか、その判断根拠は何なのか、意見を聞いてみたいところです。
もちろん、全女性議員の意見が無視されるというこの状況は、女性が議会少数派であることも原因の一つです。気になって県議会議員の名簿を見ると、政権与党である自民党・公明党の議員では女性がゼロ名でした。7月27日には県議会4会派が村井嘉浩知事に配信中止を申し入れていますが、自民党、公明党が申し入れに参加していないのも頷けます。
さらに、問題はそれだけに留まりません。今回の動画制作にあたり、県は東日本大震災関連の復興予算2300万円をつぎ込んでいるということが、県議会経済商工観光委員会で明らかになりました。
税金を使って下品なお色気動画を作ったこと自体が問題ですが、まだ生活が完全に元通りにはなっていない人が多数いるにもかかわらず、貴重な復興予算を利用していることには、当然のことながら納得できない県民も多いのではないでしょうか。
なお、2300万円は「沿岸部観光情報等発信事業費」の予算1億円から出したとのことですが、動画を見ても、沿岸部のシーンの割合は半分以下のように思います。観光客を沿岸部に誘致したいという想いよりも、エロ要素ありきで構成されたストーリーだと感じたのは私だけではないはずです。
知事は、動画の再生回数が伸び、賛否両論があって話題になったことを「成功だ」と述べています。再生回数を観光客増加のKPI(重要業績評価指標)に設定しているような発言ですが、それは誤っています。
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