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[4]悩みはチャンスだ

頭のモヤモヤを書き出して整理しつつ、解決を急がず、自らの成長を促す方法を見つける

梅田悟司 電通コピーライター・コンセプター

連載「『と思います』禁止令」と著者の梅田悟司さん連載「『と思います』禁止令」と著者の梅田悟司さん

悩みが思考を深くする

もしかして、CHANCEかも……?もしかして、CHANCEかも……?

 先日誕生日を迎えて38歳になった。

 世の中的には立派なおじさんの仲間入りである。こうして年を重ねることで、増えてくるものが、2つある。

 一つ目は、責任である。

 仕事に対して、家庭に対して、自分に対して。あらゆる局面で適切な判断を迫られ、その判断への結果責任が求められる。もちろん、多方に耳を傾けながらも、最終的に自分で判断を下せるのはストレスが少ない。「自由と責任は一蓮托生(いちれんたくしょう)の関係にある」と若い頃によく言われたものだが、その意味を実感している。その結果、白髪も増えることになるのだが。

 そして、二つ目は、相談である。

 若手でもなければ、上司や評価者というわけでもない。よく言えば何でも相談できる兄貴のような存在なのだろうが、悩める若者から相談を受けることが非常に多くなった。

 その内容は多岐にわたっている。

 たとえば、仕事のこと。これから何を頑張っていけばいいか分からない。希望の部署に異動できない。自分が思い描いているような企画を立てることができない……。仕事に限らず、結婚や恋愛、仕事と家庭の両立についてなど、相談の幅も広い。

 そこで私がすることは限られている。

 相手の話をとことん聞くこと。そして「悩みは自分の殻を破ろうとしている時に訪れる」と告げることである。そう、相談への答えは出さないのだ。

 相手が話し終えるまで自分の意見を言わないのは、相談される側の心得として重要であろう。相談する人は、根底に「話を聞いてほしい」という感情を抱いているため、良かれと思って意見を言ったところで「私はまだ全部話していない」と逆にストレスを与え、「この人は私の話を聞いてくれない」と逆恨みされることにもつながり兼ねない。そのため、まずすべてを語り切ってもらうこと、出し切ってもらうことが先決である。

 そこで聞く力と共に問われるのが、質問をする力である。話を聞きながら適切な質問を投げ掛けることで、胸の中にある思いを出し切る補助をするのである。

 すると、相談している側に変化が訪れる。話をすることによって頭の中身が整理され、「あ、自分が悩んでいたのは、そういうことだったのか」と納得し、悩みが解決されていることが多いのだ。

 しかしながら、それでも答えが出ない場合もある。それでも、私は自分の意見を言いたいところをぐっと我慢して、「そうかそうか、それは大変だね」と最大限の共感を示しつつ、「この悩みが解決した暁には、一段と大きな人間になれそうだね」との期待を込めて、先述した言葉を添える。

 その意図は明確だ。

 悩みとは単なる面倒なものではなく、適切な答えを自らの力で出すことで、自分をより深く理解するチャンスであることに気づいてもらうためである。

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