横田由美子(よこた・ゆみこ) ジャーナリスト
1996年、青山学院大学卒。雑誌、新聞等で政界や官界をテーマにした記事を執筆、講演している。2009年4月~10年2月まで「ニュースの深層」サブキャスター。著書に『ヒラリーをさがせ!』(文春新書)、『官僚村生活白書』(新潮社)など。IT企業の代表取締役を経て、2015年2月、合同会社マグノリアを設立。代表社員に就任。女性のためのキャリアアップサイト「Mulan」を運営する。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「男女の一線」を越えたかどうかよりも、問われるのは「政治家の資質」
いつの間に、日本人はこんなに「不倫」に敏感な国となったのか、もっと議論すべきことが他にあるのではないか――と、今回の山尾志桜里衆議院議員(43歳、当選2回)のW不倫疑惑をめぐる報道が過熱していくのをみて、私は当初、違和感を感じていた。
社会的に立場のある人間を潰すには、下半身ネタが一番だ――この仕事を始めた頃、かなり年上の先輩がぽろりと話していたのを思い出しながら、私は、政治家の不倫報道について考えはじめた。
その直前まで、市議との不倫が表沙汰となり、批判の矢面に立っていたのは、自民党の今井絵理子参議院議員(33歳、当選1回)だ。
今井議員は、ネット上の「過去の不倫・略奪愛の歴史」で、日々、新しいネタで更新されるほどの嵐に揉まれていたが、さすがスキャンダルには慣れているのか、即座に謝罪会見を開き、進退については言及していない。
しかし、山尾議員が「火だるま」となり、最終的に離党の決断を余儀なくされたのを見て、胸をなでおろしているのか、それとも「明日は我が身」と思ったのかはわからない。
ふたりとも、「男女の一線は越えていない」と強弁したのは一緒だ。実際に関係があったか否かは別として、報じられた週刊誌記事を読むと、信じられないほど軽率な行動を重ねている。
政治家として道義的責任を問われるのは、当然のことだと思う。政治家としての仕事内容を見比べれば、山尾議員と今井議員とでは、天と地ほども差がある。あからさまな「芸能人枠」の今井議員に、そもそも「政治家としての仕事力」を求めること自体、間違っているかもしれないが。
とはいえ、国民の税金から給与をもらっている以上、他の職業以上に高い倫理感を持たなくてはいけないのは一緒だ。検事出身の山尾議員はなおさらだったのではないか。それゆえ、国会議員の不倫は、芸能人以上に、批判、追及されても致し方ないという結論に私は行き着いている。