彼女の感覚と世論は大きくズレている
2017年09月20日
9月18日、約3カ月間の沈黙を破って、豊田真由子議員(無所属、当選2回)がようやく謝罪会見をひらいた。茶髪の髪を黒に戻し、化粧は薄く、眉毛のカットもソフトに変え、黒いスーツに黒のローパンプスと、作り込んだ地味な装いで会見に挑んだ。
しかし、万全の態勢で臨んだはずの記者会見は、当初こそ、お詫びの気持ちが溢れ、反省の色が見えたが、時間が長引くにつれ、趣(おもむき)が変わっていった。途中、たびたび見せた笑顔の理由を追及され、最後、スクープを暴いた「週刊新潮」の記者に対する答えでは、それまでのしおらしさをかなぐり捨てて、戦闘モードでたたみ掛けた。これには、「秘書に暴言を吐いた姿が本当の豊田真由子」だと確信した人も多かったと思う。
元秘書への暴行の詳細については、明言を避けた。理由がまたふるっている。
「刑事事件については捜査中なので、詳細はお話しできない」
暴行事件どころか傷害事件にまで発展しかねない中、それでは、なぜ今「会見」をひらいたのか。誰もが疑問に感じただろう。(音源が残っている以上認めざるを得ない)暴言についても、
「どうしてあんなことを言ったのか、どうかしていたとしか思えない」
「過去、一度もこんなことを言ったことがない」
と、認めつつも、「パニックで自分自身を失った」と、体調やメンタルを原因にした。
「これで、次の衆議院選挙での当選は、絶望的になった。そもそも、都議選惨敗の一番の原因をつくったのに、『議員活動を続けたい』と宣言すること自体どうかしている。今や、国会議員のバッジが彼女にとって唯一のレゾンデートル(存在証明)なんだろう」
と、同期の自民党議員は突き放すように言った。
彼の選挙区でも、豊田議員のつくった傷は未だ癒えておらず、このまま選挙に突き進んでいくことがほぼ決まった今、自分自身も相当に厳しい戦いになるとつぶやいた。
会見翌日のワイドショーなどでは、大幅に時間を割いて豊田会見を特集していたが、肯定的な意見はほとんどなかったように思う。
前稿で私は、豊田議員に対して、かなり辛辣なコラムを書いたが、この会見を見て、改めて豊田議員の持つ“二面性”を認めるに至った。
豊田真由子議員の暴言・暴行事件に思う秘書の立場――それでも彼らは永田町で生きていく…
コメンテーターの意見の大半が厳しいものだったのは、私と同様の違和感をもったからではないか。会見場の外には、有権者が集まり、「ちがうだろ〜! !」と、書いた紙を持って抗議していたともいう。
何よりも有権者が「ちがうだろ~」と感じていたのは、豊田議員が議員辞職をすることなく、次期衆院選に無所属で出馬することを示唆したからではないか。
豊田議員は、後援会幹部の応援を頼みにしているようだが、それは考えが甘いというものだ。後援者の多くが応援しているのは、結局のところ、豊田真由子自身ではなく、政権与党である自民党所属で、自分たちに何らかの「利益をもたらす豊田真由子」である。
事実、豊田議員の後援会長は、会見から一夜明けた19日、「もはや協力できない」と不支持の意向を示した。また、二階俊博自民党幹事長も豊田議員の埼玉4区を含め「空白区はつくらない」と明言。当選は厳しいどころか、絶望的になったと言ってもいいだろう。この事態に一番驚嘆しているのは、豊田議員自身ではないかと思う。それほど彼女の感覚と世論とはズレていた。
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