精神的不安や緊張感を和らげ、コミュニケーションにつながる効果も期待!
2017年10月04日
富士山やハリネズミをイメージした独創的な色とりどりの陶磁器に苔を敷き詰め、多肉植物や桜を植える。白色や縞模様の石の配置も、どことなくユニークだ。
これらのミニ盆栽は、愛知県岡崎市にある「岡崎医療刑務所」の受刑者が、刑務作業の一環としてつくったものだ。
そのため、同所の刑務作業は、医療効果を目的としたものもあり、社会復帰のための職業訓練では、土に触れることで不安や緊張感を和らげる窯業を実施している。
矯正指導の一環として、独自にとりいれたのが、「ミニ盆栽」づくりだ。鍋内智博処遇部長の提案で2015年からスタートした。各地の「矯正展」で販売したところ話題となり、今年6月に東京・北の丸公園内科学技術館で開催された第59回全国矯正展(全国刑務所作業製品展示即売会)でも、飛ぶように売れた。
同所の小さなブースの前には、
〈塀の中のジャパネスク 苔盆栽シリーズ 見るだけで癒されます〉
と、手作りのフライヤーが貼ってあった。300〜3000円の値付けがされていたが、出展した43個の盆栽で、売れ残ったのはわずか2個。
と、鍋内処遇部長は言う。
同所に収容される受刑者の数は、年々減っている。2010年の一日平均収容人員218人が2017年8月には123人(=8月の一日平均収容人員)になった。同所では、M指標受刑者以外に、犯罪傾向が低いA指標の受刑者(犯罪傾向の進んでいない受刑者)が3分の1程度いて、内訳は、M=80数名に対し、A=30数名となっている。A指標の受刑者は、各経理工場に配置されて食事づくりを担当したり、洗濯を担当したり、M指標受刑者のお世話係をする役割を担っている。
「数自体は確かに減っています。しかし、昔と比較して“手のかかる受刑者”が増えていることも確かです」
と、脇嶋守首席矯正処遇官は言う。
幹部職員の刑務官は、2~3年おきに全国の刑務所や拘置所、少年院、少年鑑別所などに転勤していくのが常だ。十数年前、脇嶋首席が岡崎医療刑務所に勤務していた頃は、受刑者の数こそ多いが、ほのぼのとした雰囲気が所内に漂っていたという。しかし、久しぶりに岡崎に転属して驚いたのは、全く意思疎通がとれずに大声を出すなどする受刑者が増えていたことだ。いわゆる「重度の精神障害者」が多くなっていた。
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