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小池百合子代表は「女性だから」負けたのではない

驕り高ぶっていた希望の党

横田由美子 ジャーナリスト

小池百合子・東京都知事拡大希望の党の「敗北」について小池百合子代表は、女性の進出を阻む「ガラスの天井」ならぬ「鉄の天井」があったと語ったが…
 「小池劇場は終わった」、「小池百合子という政治家は死んだも同然だ」――今の永田町で、小池百合子都知事と彼女率いる「希望の党」の人気が再燃することなど、誰ひとり信じていないだろう。しかし、小池都知事と希望の党への熱狂と勢いが、わずかひと月にして消え失せることもまた、誰ひとり予想だにしていなかったのではないかと思う。

 今回の「小池敗戦」の原因は、ひとえに小池氏の「排除します」発言と専横、その側近たちの驕りにあるとされる。私もその意見に賛成だ。

「あいつらは、何様だと思っているんだ」

 解散直後、東京の選挙区は、「希望の党」によって、他の党の地盤は「焼け野原」になると言われるほど勢いがあった。

 その頃、今や最後の圧力団体と異名をとる業界団体の長と希望の党との会合をとりもとうと、引退したがいまだ政界に影響力を持つ元大物政治家が動いた。その団体は力衰えたといえども、いまだに全国レベルでの組織力を誇っている。当然、小池氏たちから感謝されるだろうと、その長老も考えていた。

 公示日前、私が、「そういえば、あの話(=会合)ってどうなったんですか?」と、会話のついでに水を向けたところ、その長老は、

 「あいつらは、何様だと思っているんだ」

 と、語気を強めて怒り出した。

 だいたいこういうストーリーだったと思う。長老が、懇意にしている「希望の党」発足メンバーを通じて話を持ちかけたところ、

 「向こうが挨拶に来るならわかるけど、なんでわざわざ会合を持たなければいけないのか」

 という返答を申し訳なさそうに持ってきたというのだ。

 「野田(数・東京都知事特別秘書<政治担当>)が言ったのか若狭(勝・衆議院議員<当時>が言ったのかはわからないが、あまりにも思い上がっている。野田なんて、都議会議員と市議会議員を何期か務めただけで、『小池百合子』の看板がなければ何の価値もない男だろう。若狭にしても、元特捜検事だかなんだか知らないが、国会議員を2期やった程度だろう。それが、自分たちよりはるかに年上の社会的立場のある人間に対して『挨拶に来い』とは何事か! 人気が瞬間的に凋落するのも当然だ! 国民はバカじゃない」

 と、最後は机を叩いて怒った。その剣幕に私が恐れをなしたほどだ。

 結局、急激に失速した「希望の党」公認で、東京の小選挙区で当選したのは、長島昭久議員(21区)ただひとりだったが、失速の前兆は、安倍総理が解散宣言をし、希望の党人気が炸裂していた時に既に見えていたことになる。

 公示日直前には、候補者の強引な国替えも行った。これも、指摘されているポピュリズムどころか、有権者の目線から完全に乖離していたことのあらわれだろう。やはり国会議員は、地方議員や後援者を含めて、地元に支えられ、地元の声を聞き、国政に届けなくてはいけないと思う。だからこそ、国替えなど簡単にしてはいけないのに、小池代表たちはそんなことにすら気がまわらないほど、驕り高ぶっていたのだ。

「女」という武器を戦略的に使ってきた

 小池代表のこれまでの戦術にはひとつのパターンがある。

 自分より年上の男性で、権力を持ち、老獪に見える相手を「仮想敵」に仕立て、喧嘩を売るのが彼女の常套手段だ。古くは10年前の防衛相時代、守屋武昌次官との抗争にはじまったと私はみている。

 今回はその相手が安倍総理であり、彼をとりまくお友達と古い自民党の体質だったのだろう。この戦術を自らの都知事選、都議選で磨きをかけ、安倍自民に挑んだところまではよかったが、その2度の大勝で、「驕り」という沼に気づかぬうちに入り込んでしまったのではないか。

 実際に会って話をしてみると、小池代表から、か弱さなど微塵も感じないのだが、こうした構図を作り出すことによって「女だてらに強敵に立ち向かっている」、「守って、盛り立ててあげなくては」という印象操作をするのが上手いのだ。そういう意味では、「女」という武器を実に戦略的に使ってきた女性政治家だと思う。

 2008年の自民党総裁選もそうだった。小池氏は「女性初の総裁」を目指して、女性議員を側近に置き、「女の道は一本道でございます」と、出馬表明した。地方の女性票を意識し、自ら割烹着を着て割烹着隊なるものもつくったが、あまりの評判の悪さに、わずか数日にして、撤収した。今では、存在すらなかったことになっているようだ。

 2016年の都知事選では、石原慎太郎元都知事と内田茂都議(当時)を「悪役」に仕立て、都政を「ブラックボックス」に例えた。

 石原元都知事の言葉遣いが乱暴で、時にして相手に誤解を与えかねないことについては、事実だと思う。しかし私は、石原氏へのインタビューの最中、気遣いを受けたことの方が記憶に残っている。緊張して上手く出来なかった質問を都知事が補って、エピソードを交えて答えてくれた。「インタビューでは写真撮影NG」だったのが、私がフリーランスと知った後、仕事の成果を上げてくれるためだろうか、急遽撮影に応じるなど、相手の立場を慮る政治家だと知り、私はインタビュー終了後、それまでのイメージとの落差にしばし呆然とした。

 真逆だったのが、小池代表だ。

 数多く出している自著では、あんなに親しみやすい笑顔を見せているのに、インタビュー中、小池は口角こそあげて微笑をつくっていたが、その目は1度も笑うことなく、質問に対しても機械的に答えるのみだった。時折入室してくる男性秘書に対しては、笑みを向けていたが、それも本物だったかは謎だ。ただ、総理に対する野心と(防衛相時代に受けた)男社会に対する恨みについては、隠すことなくコメントしていたのが印象に残っている。

 内田氏も、一部の議員から「百合子姫」と呼ばれるほど、好印象で美貌の小池代表と比べると、あまりに印象が悪かった。都政を「ブラックボックス」に例え、内田氏を標的にした段階で、この「花いくさ」は勝利が決まっていたも同然だった。

 だが、このいずれの戦いも、「タイミング」という女神が小池代表に微笑んだに過ぎなかったことに彼女は気づいているだろうか。

 内田氏も批判される部分は多々あったと思うが、やはり気遣いの人で、大変な政策通だった。しかし、石原元都知事にしても内田氏にしても、権力を掌握していた時間が長すぎて、身内からの不満が噴出する寸前だった。小池代表は、うまくそのタイミングに乗り、賭けに勝ったのだ。

 小池代表率いる希望の党が船出した時、長期政権が続く安倍政権の驕りに対しても、不満が噴出しかけていた。しかし、それ以上に、小池代表も希望の党も驕り高ぶっていたのだ。

「鉄の天井」発言の真意

 「希望の党」が惨敗した10月22日、小池代表は都知事としての公務でパリにいた。当初の予想とは違って希望の党の地盤のほうが「焼け野原」となった東京のことなどどこ吹く風といった雰囲気で、翌23日には、パリジェンヌ風の衣装を身にまとってキャロライン・ケネディ前駐日大使と会談し、

 「都知事に当選して『ガラスの天井』を破った。都議選でもパーフェクトな戦いをしてガラスの天井を破ったかなと思ったけど、今回の総選挙で『鉄の天井』があることを改めて知った」

 と、話している。

 その後、発言の真意を問われると「女性だからということと直接関係ない」と釈明したが、この発言を聞いて、その通りに受け取る人がいるだろうか。

 この発言こそが、まさに彼女が「女性であること」を武器として使ってきた証左ではないかと私は受け止めた。

 今回の敗北は「女性だから」ではなく、戦略ミスと傲慢が招いたものであり、小池百合子という政治家は着実に終わりつつある。

 しかし、彼女のこれまでの執念を見ていると、時期をみて再び奇策を打ってくる可能性は充分にある。勝算は、極めて低いけれど、ゼロではない限り、彼女の挑戦は続くのだろう。

筆者

横田由美子

横田由美子(よこた・ゆみこ) ジャーナリスト

1996年、青山学院大学卒。雑誌、新聞等で政界や官界をテーマにした記事を執筆、講演している。2009年4月~10年2月まで「ニュースの深層」サブキャスター。著書に『ヒラリーをさがせ!』(文春新書)、『官僚村生活白書』(新潮社)など。IT企業の代表取締役を経て、2015年2月、合同会社マグノリアを設立。代表社員に就任。女性のためのキャリアアップサイト「Mulan」を運営する。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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