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中川晃教インタビュー(下)

大河ファンタジー『精霊の守り人~最終章~』ラダール役で出演、今年を振り返って

岩村美佳 フリーランスフォトグラファー、ライター


中川晃教インタビュー(上)

帝国劇場にジャストフィットするもの

拡大中川晃教=岩村美佳撮影

――『ビューティフル』は、客席の雰囲気がいつもの帝国劇場とは全然違いましたね。

 そうですね。いい悪いではなく、もっと広い目で見たときに、すごく可能性を感じましたし、中川晃教としては、バリー・マンに心惹かれたのは、彼の作る音楽がすごく好きだと思える音楽だったということ。それはミュージカルだからということではなく、音楽として純粋に思えたんです。ただ残念だったのは、その歌を歌うのは自分ではなかった(笑)。やはり僕はシンガー・ソングライターで、自分が作った歌を自分で歌う、ということをやってきている人間なんだなと改めて実感しました。バリー・マンが提供した楽曲が多い作品構成でしたが、彼が自分で歌っている曲もあり、「On Broadway」はシンプルで格好いいんですよ。

――そうなんですね!

 音楽って、その音楽が生まれた瞬間を知っている人たちがいますよね。『ジャージー・ボーイズ』もそうですが、フォー・シーズンズが誕生した時代を知っている人たちが、今その音楽を聴きたいと思うときに、コンサートがあったり、CDやレコードがあったり、映画やミュージカルになったりする。そして、聞いたり足を運んだりして、その時代を感じるんですよね。『ビューティフル』もあの曲が生まれた瞬間を演じていましたが、実際に歌った人たちはアンサンブルの方々でした。同じ音楽が主役のミュージカルだからどうしても比べてしまいますが、『ジャージー・ボーイズ』はそこが埋まるんですよね。

――ご自身の役が歌えるからですね。

 作品の構成の違いですよね。『ビューティフル』はキャロル・キングという人間に集約されていましたが、『ジャージー・ボーイズ』はフォー・シーズンズ4人を描いていた。その違いがありますよね。帝国劇場という大きい劇場で今まで上演してきた作品は、『ミス・サイゴン』ならば本物のヘリコプターが降りて来る、『レ・ミゼラブル』ならばバリケードが出来上がるように、『ビューティフル』はキャロル・キングがカーネギーホールで歌っているという、あの姿が物語の山場ですべてを物語っているなと。帝国劇場にジャストフィットするということは、こういうことなんだなと。『ジャージー・ボーイズ』を帝国劇場でしたらどうなるんだろうかと考えましたが、やはりシアタークリエのサイズだからこそ、より感動したのかもしれないとも思いました。ふたつの作品を比較しながらバリー・マンを演じてしまったという熱がありましたね。

――それはちょっとしたフラストレーションとしてたまるんですか? 自分が歌いたいなとか。

 作品を支えるために自分はここに呼ばれていることがわかる反面、バリー・マンが音楽を作り出すその瞬間を演じることの面白味を感じていました。物語の中でバリー・マンは裏方に徹していて、作った曲を歌っているアンサンブルのシーンにハイライトがあり、それが作品の正解だとわかります。一方、『ジャージー・ボーイズ』はみんなが歌っていて、全員で春夏秋冬を物語るという構成で、うまく出来ていると思うんです。だから、『ビューティフル』をきっかけに、もっと歌を聞きたい、ミュージカルを見たいと思ってくれたならば、絶対に『ジャージー・ボーイズ』を見に来てほしいと思うんです。

――なるほど。

 水樹さんが「ミュージカルを見たことがない自分のファンの方を感動させてくれたのは、カンパニーの仲間のおかげだと思う」と言ってくれました。とても嬉しかったですね。

◆中川晃教 出演情報◆
★NHK大河ファンタジー『精霊の守り人~最終章~』
2017年11月25日(土)スタート
NHK総合 毎週土曜 午後9時00分から9時58分 <連続9回>
公式ホームページ
★ミュージカル『HEADS UP!』
2017年12月14日(木)~17日(日) 神奈川・KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉
2018年1月20日(土) 富山・オーバード・ホール
2018年1月26日(金)~27日(土) 長野・サントミューゼ
2018年2月2日(金)~4日(日) 大阪・新歌舞伎座
2018年2月15日(木)~16日(金) 名古屋・刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
2018年3月2日(金)~12日(月) 東京・TBS赤坂ACTシアター
公式ホームページ
公式twitter
★『銀河鉄道999 GALAXY OPERA』
2018年6月23日(土)~30日(土) 東京・明治座
2018年7月21日(土)~22日(日) 北九州・北九州芸術劇場大ホール
2018年7月25日(水)~29日(日) 大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
公式ホームページ
★ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』
2018年9月に東京・シアタークリエにて上演
10月に全国ツアー
公式ホームページ
〈中川晃教プロフィル〉
俳優、シンガー・ソングライター。2001年デビュー。その後、ミュージカル『モーツァルト!』の主演に抜擢され、第57回文化庁芸術祭賞演劇部門新人賞、読売演劇大賞優秀男優賞、杉村春子賞を受賞。主な舞台出演作に『ビューティフル』『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』『フランケンシュタイン』『マーダー・バラッド』『ジャージー・ボーイズ』『グランドホテル』『DNA―SHARAKU』『HEADS UP!』など。『SONG WRITERS』『あかい壁の家』『星めぐりのうた』『銀河英雄伝説 撃墜王篇』『女信長』『ピトレスク』など、舞台出演と同時に楽曲提供もしている。
中川晃教official web site

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筆者

岩村美佳

岩村美佳(いわむら・みか) フリーランスフォトグラファー、ライター

ウェディング小物のディレクターをしていたときに、多くのデザイナーや職人たちの仕事に触れ、「自分も手に職をつけたい」と以前から好きだったカメラの勉強をはじめたことがきっかけで、フォトグラファーに。現在、演劇分野をメインにライターとしても活動している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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