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山本芳樹ソロミュージカル『ロートレック』/上

沢木順×山本芳樹対談「少しでも希望の光をそそげたら」

真名子陽子 ライター、エディター


拡大沢木順(左)と山本芳樹=伊藤華織撮影

 劇団スタジオライフの山本芳樹がソロミュージカル『ロートレック』に挑む。元劇団四季の沢木順が2004年から挑戦し続けているソロミュージカルで、今回、初めて沢木以外の俳優が演じる。『ロートレック』は、沢木が作るソロミュージカル2作目で、エジンバラ国際演劇祭で高い評価を受けた作品だ。

 フランスの画家・ロートレックは名門伯爵家に生まれ、父の愛情を一身に受けて育つも、足に障害を負ったことで父が望む伯爵家の跡取りになれず、孤独の中、心のよりどころであった絵画の世界で活路を見出していく。混沌とした退廃ムードの19世紀末、パリ・モンマルトルで活動をしていたロートレックは『ムーラン・ルージュ』のポスターで一躍脚光を浴びる。挫折や絶望を抱えた社会的弱者の心に寄り添い、愛し、闇に照らされた心を忠実に描いたロートレック。その人生は、36歳という若さで幕を閉じる――。

 ソロミュージカル『ロートレック』には、ロートレックの父や母、絵のモデルだった女性、ロートレックが愛し続けた女性、そして、親交のあった画家・ゴッホも登場する。山本はそれらの登場人物をひとりで演じ分け、20曲以上もあるという楽曲はエレクトーンのみの生演奏で歌われる。

 約10年前に初めて出会ったという沢木順と山本芳樹。本作品への思いから演技論まで話題が広がり、それぞれの思いをたっぷりと語ってくれた。

ギリギリの表現ができる役者がやっと見つかった

拡大山本芳樹=伊藤華織撮影

――まずは沢木さんへ。ソロミュージカルをやろうと思われたきっかけは?

沢木:62歳の時に初めて、ソロミュージカル『YAKUMO~小泉八雲』をやりました。そもそも役者というのは待つ仕事なんです。場を与えてくれて、みんなで作って初めて成り立つもの。ひとりだけのものじゃないんですよね。そういう駒としての自分を確立しながら、そうではない自分の場が欲しいと思ったんです。歌や落語はひとりでできますが、役者はひとりでは難しい。それが理不尽だなと思って、待たなくてもいい自分の芸術を作ろうと思いました。作曲をやろうとも思ったのですが、やはり役者ですから、演技でもって一人でできる芸術を作ろう、ソロミュージカルを5本作って市民権を得ようと、劇団四季を辞めたあとに決意しました。

 ただ、最初に作った『YAKUMO~小泉八雲』がとても好評をいただいて、5年もやってしまったんです。それでは次へ進めないと思って、『YAKUMO~小泉八雲』を封印して『ロートレック』を作りました。その時に、自分だけやっていても仕方がないと思ったんですね。まだ市民権が得られていない。その市民権を得るためには、誰かにやってもらわないといけないと思いました。でも、やると言ってくれる人がいなくて。

――そうなんですか?

山本:大変ですもん。

沢木:そう。大変だからみんな嫌がっちゃう。でも、芳樹は始めからやりたいと言ってくれましたし、『PHANTOM(ファントム)』(2011年・2012年/劇団スタジオライフ公演)を見た時に、芳樹にやって欲しいと思ったんです。ロートレックを演じるには激しさが必要なんですね。芸術家はギリギリのところで生きています。そのギリギリの表現ができる、舞台上で死ねる役者がなかなかいない。そのギリギリの一瞬にテンションを持っていけるのは芳樹しかいないと、その時に確信しました。自分を究極に持っていくことはスタジオライフで鍛えられていますし、ダンスの素質もあるんでね。僕は肉体を使うダンサーが、一番演技力を持ってると思っているんです。芳樹は優れたダンサーでもあるし、ずば抜けた表現力があるんだよね。それでお願いしたわけです。やっと見つかったという感じです。

拡大沢木順(左)と山本芳樹=伊藤華織撮影

――山本さん、そのお話を聞いていかがでしょう?

山本:いろんな方が敬遠するというのもわかるんです。ひとりでやるって大変なことですから。でも、役者なら誰もがやってみたいことでもあると思うんです。自分がどこまでできるのか……それは役者として目指していくところなので、挑戦してみようと思いました。沢木さんからそう思っていただけるのはとても幸せなことなので、精一杯その期待に応えたいですし、市民権じゃないけれど、何かをこの演劇界に投じられたらいいなと思っています。ただただ、挑戦ですね。

 あとは単純に、お客さまにいろんな僕を見て欲しいので、楽しんでいただける新たなステージを作っていきたいなと思っています。いい意味で期待を裏切って、お互いに高みを目指していけるような関係性じゃないといけないなと思っているので。

かなわない人が身近にいる僕は幸せです

拡大沢木順=伊藤華織撮影
――この『ロートレック』を最初に見た感想は?

山本:資料としてDVDを見させてもらったのですが、「これ、絶対できない!」って思いました(笑)。ひとりで全部やりますから、スキルも気持ちも体力もないと無理ですからね。

――それでもやりたい、やろうと思われたんですね。

山本:最初は、沢木さんが作られた時の思いをどこまで僕が引き継ぐことができるか、そこを考えると難しいなと思いました。何十年ものキャリアを積み重ねてきたものをお見せしているわけですから。でも、この作品に詰まっているものにすごく心が揺さぶられますし、この作品を通していろんなお話をしてくださる中で、たくさん吸収することがあります。それをどう表現するか……。でも、結局は僕が積み重ねてきたものでしかお見せできないし、それでいいんだと思えたんです。まったく新しい僕で見せることはできないですし、背伸びして見せることは間違ってますから。

――DVDを見たのは、やると決めた後ですか?

山本:そうですね。何年か前からやりたいとは言っていて、劇団の公演スケジュールとの兼ね合いもあって、いつやれるだろうとタイミングを計っていたんです。倉田さん(倉田淳/スタジオライフの演出家)に、沢木さんからこういう話があるんだと話したら、『ロートレック』のCDや映像を持っていて、それを貸してくださったんです。沢木さんは河内さん(故・河内喜一郎/元スタジオライフ代表)や倉田さんをよく知っていて、エジンバラ国際演劇祭(スコットランドの首都エジンバラで毎年開催されている芸術の祭典)にも行ってるんです。

沢木:そうなんです。『YAKUMO~小泉八雲』を見せた時に、「これ、エジンバラに持っていけるぞ」と河内さんが言ってくれたんです。でも、持っていくなら新作を作ろうと思って『ロートレック』を作りエジンバラへ持っていきました。

山本:エジンバラへ作品を持っていくことって大変なことなんです。でも、そうやって挑戦し続けている大先輩がそばにいるので、やはり刺激を受けますよね。これはやらなきゃダメだろうと。出会った10年前から沢木さんは変わっていなくて、むしろ熱量は上がっていってますからね。そういう方が身近にいてくれるとやっぱりうれしいですよね。キャリアが全然違うから到底かなわないんだけど、かなわないことがうれしかったりするんです、目標になるから。だから、かなわない人がいて欲しいですし、かなわない人がいる僕は幸せですよね。

◆公演情報◆
2017年12月5日(火)~6日(水) 東京・内幸町ホール
[スタッフ]
構成・脚本・作詞:さらだたまこ
演出・歌唱演出:沢木順
作曲:玉麻尚一
主演・演出:山本芳樹
●チケットのお申し込み・お問い合わせ
オフィスサワキ/090-9368-4708:0467-44-4401
sawaking365@gmail.com
※メールでのお申し込みは、お名前・ご住所・返信先・ご希望日時・枚数をご記入ください。
〈沢木順プロフィル〉
早稲田大学文学部演劇科に在学中、東宝ミュージカル『ファンタスティックス』のオーディションで主役に抜擢。その後『ラ・マンチャの男』などに出演後、劇団四季に入団。数々の作品で主演を演じる。四季退団後、2004年からソロミュージカルに挑戦。『YAKUMO~小泉八雲』『ロートレック』を企画・制作・出演と精力的な活動を続けている。
〈山本芳樹プロフィル〉
劇団スタジオライフ所属。作品へ誘う圧倒的な存在感と繊細な演技力に定評がある。劇団の代表作『トーマの心臓』や『PHANTOM』で主演を務めるほか、外部作品へも出演している。作詞・作曲も手がけ、定期的にソロライブも開催している。2018年1月13日(土)・14日(日)に、『Y’s Live vol.2』の開催が決まっている。

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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