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山本耕史×伊礼彼方インタビュー/下

『メンフィス』、作品が持つエネルギーや爽快感をシンプルに見せたい

真名子陽子 ライター、エディター


山本耕史×伊礼彼方インタビュー/上

稽古初日って実は勝負のしどころなんです

拡大山本耕史(左)と伊礼彼方=冨田実布撮影

――演出家として、役者・伊礼さんをどのように見ていらっしゃるんでしょうか?

山本:伊礼君は、僕がおもしろいなと思う伊礼君のおもしろさが出てくれたらなと思ってるし、出るような気がしています。思っていたより器用だなと思いました。以前、共演した時に、すごく不器用なイメージがあったんだけど。

伊礼:あの時は、自分の考えてるもの、感じたものを出しても通らないことが多くて悩んでいたんですよね。それで耕史さんに、「ここは、こうしたいんだけど」って直談判したんです。そうしたら、やってみようって言ってくださって。あの時はすごく救われました。

――お稽古場でやりとりはとても大切なんですね。

山本:僕は稽古初日に巻き起こったことで心を動かせなければ、人の心も動かせないと思っているから、稽古初日って実は勝負のしどころなんです、役者として。どうしようと思いながら動いていると演出家に動かされます。でも、確信を持って動いてそれが画になったら、もうできた、って演出家は思うじゃないですか。僕はまず、そこを目指します。だから、稽古初日までにいろいろと演技の方向性を考えますね。もちろん、稽古しながら変えていきますけどね。伊礼君は、その方向性が初日に見えたんです。言われるまで待つというのは時代遅れだと思っています。自分でキャラクターを決めて、どういう関係性なんだろうって思ってやると絶対に芝居は変わるから。

空いているポジションがあったら、そこへ行く

拡大山本耕史(左)と伊礼彼方=冨田実布撮影

――伊礼さんはどのようにお稽古の初日に臨まれたんですか?

伊礼:初演ででき上がっているものがあるので、稽古しているシーンを見て、整理して、空いているポジションがあったら、あっ、ここ使えるなと思って、そこへ行くようにしています。サッカーで言うところのデッドスペースですね。ボビーという役ではなくて、舞台の画として完成させようと思ってやってます。一つのピースとしてね。全員が出ているシーンなどは、今足りないところはどこなんだろうって俯瞰して見ています。その作業を繰り返していたら、なんとなく、自分の居方が少しずつ見えてきましたね。元々思い描いていたボビーのイメージと、今自分がやっているボビーは違ってきています。実際、芝居を受け渡ししていると、それぞれ空気を持っているので、おのずと自分がどこへ行けばいいのか分かってくるんですよね。

――いつも俯瞰して見るようにしているんですか?

伊礼:結構そういう見方をしますね。もちろん台本を読みながら、いろいろ動きを考えるんですよ。でもあまり通ることがないんですよ。10個考えたら2個くらいかな、通るの。稽古場で相手の声を聞くと自分の感情が動きますしね。「あっ、考えていたのと全然イメージが違った」ってなるんです。でもそこを無視して自分の好きなようにやってしまうと、芝居じゃなくなっちゃうんですよ。稽古はその変化が楽しいです。思っていたイメージとまったく違ったトーンで返ってくると、そうくるんだこの方は、ならばこう受けた方がいいよね、こんな受け方もあるよねって、その瞬間にひらめくんです。それが楽しい。

◆公演情報◆
ミュージカル『メンフィス』
2017年12月2日(土)~17日(日) 東京・新国立劇場 中劇場
[スタッフ]
脚本・作詞:ジョー・ディピエトロ
音楽・作詞:デヴィッド・ブライアン
翻訳・訳詞:吉川徹
演出・振付:ジェフリー・ページ  演出・主演:山本耕史
[出演]
山本耕史 濱田めぐみ/ジェロ 米倉利紀 伊礼彼方・栗原英雄/根岸季衣 ほか
公式ホームページ
〈山本耕史プロフィル〉
0歳でモデルデビュー。10歳の時に『レ・ミゼラブル』のガブローシュ役で舞台デビュー。以降、舞台をはじめとしてドラマや映画などで活躍。主な舞台出演作に『髑髏城の七人 Season花』『マハゴニー市の興亡』『嵐が丘』『オーシャンズ11』など。2015年の初演『メンフィス』で、読売演劇大賞優秀男優賞を受賞している。
山本耕史official FanClub site
 〈伊礼彼方プロフィル〉
沖縄県出身の父とチリ出身の母の間に生まれる。中学生の頃より音楽活動を始め、ライブ活動をしていたときにミュージカルと出会う。最近の主な出演作は、『ビューティフル』『王家の紋章』『お気に召すまま』『サバイバーズ・ギルト&シェイム』『あわれ彼女は娼婦』『グランドホテル』『ピアフ』など。
★伊礼彼方official web site:伊礼彼方official web site

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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