2017年12月14日
ミニ盆栽づくりで再犯防止へ――医療刑務所の挑戦(WEBRONZA)
11月18日土曜日。私は、再び、愛知県岡崎市にある岡崎医療刑務所に来ていた。この日、刑務所と地域との交流イベントのひとつである「岡崎矯正展」が開催されることになっていたからだ。施設内の見学やちびっこ刑務官の写真撮影、受刑者が社会復帰を目的に作成した陶器やミニ盆栽の展示販売などが主な内容だった。
昨晩から降り出したあいにくの雨は、少し弱くなっていたけれど、空の色はどんよりと暗く、12月中旬並みの寒さだと、朝のお天気番組が伝えていた。
前回、岡崎医療刑務所の新しい挑戦として、ミニ盆栽づくりの記事を執筆していた時、
「ぜひ、地域の理解を深めるために行っているイベントも見てほしい」
と、誘われていたこともあり、私は取材に行くことにした。
前稿の繰り返しになるが、「医療刑務所」の役割について説明する。精神的に何らかの障害を有する男子受刑者(=M指標受刑者)を収容し、治療することを目的とした刑事施設である。
精神障害を持つ受刑者というと、「猟奇的殺人犯」や放火犯をイメージする人が少なくないと思う。中にはそうした受刑者もいるが、大半は窃盗や覚醒剤所持・使用などを繰り返す常習累犯者(5年以内に再び犯罪を繰り返す者)だ。ちなみに、食べ物の窃盗を繰り返す累犯者は、摂食障害を煩(わずら)っているケースが少なからずあるということだった。
私が「岡崎」に再訪を決めたのは、前回の取材の後、私の元義弟が犯罪被害者となり、亡くなったことが大きい。
彼のかつての妻である私の妹やその息子(甥)は、「殺人」だと思っているし、実際、あらましを聞いた限りでは、撲殺されたようなものだと私も思うが、容疑名は、「傷害致死」となった。加害者は現在、拘置所に勾留されている。この事件については、「裁判員裁判」が適用され、来年(2018年)4月に初公判が予定されている。事件の詳細とともに改めて書く予定なので、本稿では深く触れない。いずれにしても、元義弟が犯罪被害者となって落命したという事実は揺るがない。
担当検事に確認すると、加害者は、47歳の元累犯受刑者だった。1年半前まで、覚醒剤所持・使用で刑務所に入っていたというではないか。それより以前も合計で7、8回、覚醒剤で逮捕されているという。「医療刑務所に収容されるレベルではない」そうだが、精神疾患がないだけで、クスリの累犯者であることに変わりはない。加害者について、「暴行系は今回が初めてですね」と、担当検事も言っていたので、「犯罪傾向」が進んでいることは間違いないだろう。そこで、この事件の何か参考になるのではとも思い、岡崎まで足を伸ばしてみることに決めたのだ。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください