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[7]忖度、北……今年を表す言葉への妙な納得感

今年のギャル流行語の大賞は「マ?」。「だいしてる」「フロリダ」、わかります?

梅田悟司 電通コピーライター・コンセプター

連載「『と思います』禁止令」と著者の梅田悟司さん拡大連載「『と思います』禁止令」と著者の梅田悟司さん

今年一年を総括する言葉とは

今年の言葉が全体的に暗い印象がある拡大今年の言葉が全体的に暗い印象がある

 12月である。それにしても、1年が経つのは早いものだ。

 1月には「今年はあれやろう、これやろう」と考えていたにもかかわらず、半分も実現できていない自分のふがいなさを痛感する。かといって、実現可能な目標を立てたところで、目標の半分程度しか達成できないことは目に見えている。そのため、来年もこの1年の自分に期待して、大いなる目標を立てることになるのだろう。

 12月と言えば、1年を振り返る節目の時期でもある。

 そこでひときわ注目を集めるのが、新語・流行語大賞であろう。1984年に始まった新語・流行語大賞は、今年を象徴する言葉を決めるものである。

 今年の大賞に選ばれたのは「インスタ映え」と「忖度(そんたく)」であった。

 インスタ映えは、皆さんご存じのように、インスタグラムで映えるような写真を撮影して、アップロードすることである。多くの飲食店ではインスタ映えするメニュー開発に乗り出し「インスタ映え消費」を狙っているようにも感じられる。

 その一方で、インスタグラムで日本人最多のフォワー数を誇る「インスタの女王」こと渡辺直美氏がメディアにおいて、「『インスタ映え』という言葉が一番嫌い」と明言しているのも、なかなか興味深い。

 もう一方の「忖度」は、森友学園問題に端を発した言葉で、その見慣れなさと不穏な語感から一気に一般化したきらいがある。意味としては「相手の気持ちをおしはかること」であり、「空気を読む」とほぼ同じなのだが、やや後ろ向きな空気の読み方であると言えよう。

 新語・流行語大賞の後に発表されるのが、「今年の漢字」である。京都の清水寺で発表される今年の世相を反映した豪筆は、インスタ映えならぬ「映像映え」「写真映え」するため、ほぼ全てのメディアで取り上げられる。

 今年の漢字は「北」であった。

 北朝鮮によるミサイルや核実験の脅威に翻弄(ほんろう)された一年であったことが、選出の理由である。発表社のリリースによると、その他にも、北海道日本ハムファイターズの大谷選手の活躍、清宮選手の入団決定などのポジティブなニュースも含まれているようだが、市民感覚としては、北朝鮮以外のことが浮かばないのが現実であろう。

 この両者に共通するもの。それは「暗さ」である。

 仮に5年後10年後、2017年を振り返る際に新語・流行語大賞や今年の漢字が引用されたら、まるで2017年が暗い年であったように感じてしまうだろう。

客観と主観のギャップの大きかった一年

客観と主観のギャップの大きかった一年拡大客観と主観のギャップの大きかった一年

 このように、「忖度」や「北」といった暗い言葉が今年の言葉として選ばれている一方で、経済は活況を見せているのが現実である。

 NYダウ平均株価はトランプ相場が続き、過去最高値をつけた。日本の株価も、この追い風を受けるように、うなぎ登りである。第48回衆議院選挙時には、安倍首相がアベノミクスの効果を数字で示し、どれだけ日本が良くなったのかを、誇らしげに語っていた。そして、自民党が圧勝した後は、日経平均株価が16日連続で上昇し、過去最長記録を更新した。

 爆買いの勢いは衰えつつあるとは言えど、日本のあらゆる場所に外国人観光客が訪れるようになり、観光業や小売業へは引き続きプラスの効果をもたらしている。

 こうした客観的な景気の良さが語られているなかで、私たち一般生活者の主観的な暮らし向きはどう変わったのだろうか。きちんと好景気の恩恵を受けているのだろうか。

 答えは「ノー」である。

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筆者

梅田悟司

梅田悟司(うめだ・さとし) 電通コピーライター・コンセプター

1979年生まれ。上智大学大学院理工学研究科修了。主な仕事に、ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、のどごし<生>「がんばるあなたがNo.1」、東北六魂祭事業構想メンバーなど。著書に10万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』(日本経済新聞出版社)他。CM総合研究所が発表するコピーライタートップ10に、2014年から3年連続選出される。横浜市立大学客員研究員。

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