「モーニング娘。」結成から20年、「冬の時代」から「戦国時代」を経て…
2017年12月22日
(1)「アイドル戦国時代」のかげり
「Good bye, Idol」(@goodbyeidol)というツイッターアカウントがある。アイドルの引退やグループからの脱退を淡々と報告するアカウントで2015年にスタートした。年度代わりの今年3月末には連日数十件の引退・脱退を報告していた。「家庭の事情により」「重大な規律違反が発覚したため」「ファンとのつながり(交際)が発覚したため」など理由は様々だ。
「アイドル戦国時代」が言われるようになったのはAKB48がブレークした2010年ごろからだが、昨年あたりからかげりが感じられる。ゼロ年代はほとんどなかった女性アイドルの日本武道館公演は、2013年から14年ごろは2カ月に1度くらいのペースであったが、最近はめっきり少なくなった。
「戦国時代」以後、異業種からアイドル運営に参入するケースや、ファンが運営を始めるケースもある。それにつれて運営とアイドルのもめ事も増えていく。ツイッターでアイドルと運営が互いに批判するケースも散見される。炎上事件を紹介する「地下アイドルまとめブログ」なるサイトも昨年から登場している。
自身も地下アイドルである姫乃たまによる『職業としての地下アイドル』(朝日新書)は地下アイドルの世界を特徴づけるものとして、アイドルとファン、相互の承認欲求を挙げる。
アイドルへの楽曲提供も多いヒャダインは「(今のアイドルは)自己承認欲求を満たしたいだけ」「めちゃくちゃな運営と、メンヘラ気質の脆弱な精神が組み合わさればそりゃあ悲劇が起きますよ」と語り、「デビューからメジャーになるまでを応援しながら見守るのが前時代の楽しみ方だとしたら、これからの地下アイドルは、デビューから運営とのいざこざを経て、引退に至るまでをひとつの物語として、肥大した自意識の崩壊すらも楽しめばいいんじゃないでしょうか」と「悪趣味」と自ら呼ぶ楽しみ方を提案する(「TVBros.」17年2月25日号)。
(2)「楽曲派」の興隆
とはいうものの、武道館には届かないが、東京なら渋谷クラブクアトロ、リキッドルーム、赤坂ブリッツ、Shibuya O-EASTなど数百人~千人規模の会場でライブをするアイドルはいまだに山のようにいる。ほんの10年前には考えられなかったことだ。背景には、AKB以降のファン層の広がりとともに、以前だったらシンガーソングライターや小劇場女優を目指していたような「表現したい女子」がアイドルを目指すようになったことがある。4人組「フィロソフィーのダンス」の日向ハルはバンドのボーカルからアイドルに転じたが、売れるためにアイドルになったと語っている。
楽曲を提供する側にも、アイドルという枠を使って「自分のやりたい音楽」をやってみようとする人々がいる。
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