映画それ自体として訴求力をもつ作品
2017年12月30日
『パーソナル・ショッパー』(オリヴィエ・アサイヤス)
セレブの服などを買い付ける“パーソナル・ショッパー/買い物代行業者”であり、霊能者/霊媒でもあるヒロインの遭遇する超常現象を精妙かつ大胆に映像化した傑作。スマートフォンの画面が異界への入り口であるというアイデア、煙のような気体状の幽霊の出現/エクトプラズム現象の描写、いつも無表情で抑揚を抑えた低い声で喋るクリステン・スチュワートの演技などなど、すべてが素晴らしい。また、スマホによる彼女と謎の男とのメッセージ交換は、虚実ないまぜの情報が錯綜する今日の世相をリアルに映し出す。2017/6/13、同/6/15の本欄参照。
『アウトレイジ 最終章』(北野武)
ご存じ、“アウトレイジ”シリーズのcoda(コーダ)/完結編。前2作同様、裏社会の組織間の熾烈な覇権争い、えげつない罠の仕掛け合いが、残酷かつクールに描破されるが、つまりそこで前面に出るのは、義理も人情もへったくれもないヤクザ社会の裸形の暴力だ。ちょっとしたトラブルが取り返しのつかない暴力の連鎖を生む、という作劇は本作でも絶好調だが、各場面がそれぞれ緊密に呼応してドラマを加速度的にヒートアップさせる演出は、まったくもって見事である。それにしても、塩見三省、西田敏行、金田時男らの“顔圧(がんあつ)”の凄さはどうだ。2017/11/8の本欄参照。ちなみに、今般の政界、相撲界、某八幡宮で起きたoutrageな騒擾(そうじょう)、ないしは事件の報道を見るにつけ、本作は現代社会の端的な縮図にも思えてくる。
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