真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター
大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
ミュージカル『ナイン・テイルズ ~九尾狐の物語~』
豊橋から世界へ。穂の国とよはし芸術劇場PLATは、1月20日(土)・21日(日)にプラット開館5年記念事業として、ミュージカル『ナイン・テイルズ~九尾狐(くみほ)の物語~』を上演する。2001年に韓国で上演されるはずだった本作。諸事情で上演されないままだったが、17年の時を経て上演されることとなった。作曲家・宮川彬良によって約20年前に楽曲は出来上がっており、演出は田尾下哲、振り付けは平山素子が担当。メインキャストは、昆夏美、小野田龍之介、JKimで、その歌声に期待が高まる。
九尾狐とは、もとは中国に伝わる神話だが、韓国や日本でも伝説として知られ、韓国では一般的によく知られている。その九尾狐の伝説をベースに韓国で作られ、千年を生きる九つの尾を持つ狐と人間の愛を描いた作品で、千年という時の中で、昆(梅花〈メイファ〉)とJKim(紅梅〈ホンメ〉は狐から人間へ生まれ変わり、小野田(河柳〈ハユ〉)は人間から狐へと生まれ変わる。ファンタジックな物語に宮川のダイナミックな音楽が重なり、その楽曲を3人の素晴らしい歌声で奏でるという贅沢なミュージカルだ。昆、小野田、JKim、そして本作のプロデューサー中島晴美さんにも入ってもらい、稽古初日に話を聞いた。
――みなさんは今作品が初めての共演ですか?
JKim:小野田さんとは、昨年4月の『プラット開館5年を祝うトーク&コンサート』で一緒に歌わせていただきました。昆さんとは初めてですね。
小野田:JKimさんとは穂の国とよはし芸術劇場の舞台袖で初めてお会いしたんですよね(笑)。昆さんとは何度も共演していますし、相手役もさせていただいてます。デュエットもしていますのでとても信頼していますし、JKimさんは歌声が素晴らしく大好きなので、共演するのが楽しみです。
JKim:小野田さんはとてもエネルギッシュで、昨年のコンサートで初めて歌声を聞いてびっくりしました。パッションが素晴らしいです。お若いのに集中力と表現力がすごいなと思いました。
小野田:うれしいお言葉をありがとうございます。集中力の塊のようなJKimさんに言っていただけて光栄です(笑)。
――この物語は韓国でよく知られた伝説がベースになっているとのことですが、みなさんは知っていましたか?
小野田:狐の神話があるというのは知っていました。それがミュージカルになるのはとてもおもしろいなと思います。いろんな愛の形があって、とても繊細で神経を使う物語だと思いました。
昆:このお話が韓国でドラマになっているのを知っていましたので、とてもポピュラーなお話だと思っていましたね。
――その伝説をベースに韓国で作られた物語ですが、台本を読んだ印象を聞かせて下さい。
昆:小野田さんが言ったようにいろんな愛が描かれています。梅花と河柳の純愛が基盤にありますがそれだけではなく、姉の紅梅が妹・梅花の河柳への愛を拒絶するのも、姉が妹を思う愛です。千年の時を超えて……といった人間同士のピュアラブストーリーだと臭くなりがちですけど、狐と人間の物語でファンタジーとして描かれていますので、お客さまも物語に入り込みやすいのではないかと思います。生まれ変わりとか千年かけて愛するとか、現実的ではないけれど、狐と人間の話だから成立すると思うので、この物語がファンタジーで良かったなと思います。でも、その現実的ではない物語に、いかに私たちがリアリティを持たせることができるかが大切だなと感じています。エネルギッシュなお二人について行こうと思っています。
JKim:九尾狐の物語は子供のころからよく聞いていましたし、韓国ではよくドラマの題材になっていました。昔の話を現代にアレンジしてドラマ化されていて、とても人気がありましたね。九尾狐が出てくるととても怖くて、何が起こるんだろうとワクワクしていました。
――なるほど。九尾狐は怖いイメージがあるんですね。
JKim:そうです。人の肝を食べて生き延びるとか、山の中で迷った男の人を誘惑するといった言い伝えがありますので。そこに今回はミュージカルとして宮川先生の素晴らしい音楽が入るのでとても楽しみです。
小野田:以前、『しあわせの詩』というミュージカルで狐の役をさせてもらったんです。その時に狐って妖艶だなという印象を持ちました。狐と人間って、現実の中でどこか切っても切り離せない関係だなとも。稲荷神社には狐の石像がありますしね。もちろん狐は話せませんが、もし話ができる狐と人間が出会ったら、今回の物語のようなことが起こるかもしれないと思わせられるんですよね。どこか妖艶でドラマティックで、命の儚さを感じます。
僕が演じる河柳役は普通の人間なのに千年も生きることになって、その中で人間に生まれ変わった紅梅と梅花と出会います。命の連鎖ですよね。それは絆なのか愛なのか、巡り合いというのでしょうか……。でも、それを劇的に描いているわけではないんです。音楽も日常的な音楽もたくさんありますし、とても物語に入りやすいなと思います。非現実的なんだけど、どこか現実的なことが描かれている。とてもおもしろいファンタジーですね。
◆公演情報◆
穂の国とよはし芸術劇場PLATプロデュース【PLAT開館5年記念事業】
ミュージカル『ナイン・テイルズ ~ 九尾狐(クミホ)の物語~』
2018年1月20日(土)~1月21日(日) 愛知・穂の国とよはし芸術劇場
[スタッフ]
原作:金是佑
作曲・音楽監督:宮川彬良
構成・演出:田尾下哲
[出演]
昆夏美、小野田龍之介、JKim ほか
[演奏]
宮川彬良(ピアノ)、森由利子(ヴァイオリン)、磯部朱美子(チェロ)、高柳安佐子(コントラバス)、中村祐子(パーカッション)
公式ホームページ
公式ツイッター
〈昆夏美プロフィル〉
2011年、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』初演のジュリエット役でデビュー。その後も、『ハムレット』のオフィーリア、『レ・ミゼラブル』のエポニーヌ、『ミス・サイゴン』のキムなど、大役を次々と射止める。また、アーティストとしても多数の CD をリリース。ディズニー映画『美女と野獣』プレミアム吹替版ではヒロイン・ベル役を演じた。
★昆夏美オフィシャルブログ
〈小野田龍之介プロフィル〉
幼少よりダンスを学び、以後ミュージカルを中心に活躍。2011年に開催された「第1回シルヴェスター・リーヴァイ国際ミュージカル歌唱コンクール&コンサート」にてリーヴァイ特別賞を受賞。主な出演作は、『パレード』『ミス・サイゴ ン』『三銃士』『ウェストサイド物語』『ひめゆり』『TITANIC』『アリス・イン・ワンダーランド』など。
★小野田龍之介オフィシャルツィッター
〈JKimプロフィル〉
劇団四季45周年記念オーディションに韓国人として初めて合格。『キャッツ』グリザベラ役、『ライオンキング』ラフィキ役、『ジーザス・クライスト=スーパースター』マリア役など主要な役を好演。2006年退団後、金志賢からJKimに改め多数のコンサート等にも出演。主な出演作は『ブラッド・ブラザーズ』、『蜘蛛女のキス』、『ピトレスク』、『カルメン』、『ビッグ・フィッシュ』、『SECRET SPLENDOUR』など。
★JKim オフィシャルブログ
★JKimオフィシャルホームページ
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