2018年01月12日
ミニ盆栽づくりで再犯防止へ――医療刑務所の挑戦(WEBRONZA)
[1]“身内”が覚醒剤累犯者の犠牲になって……(WEBRONZA)
「昔はね、駅まで官用車で送り、列車に乗せるまで付き添ったり、措置入院になった者を病院まで付き添って送り届けたりするのがやっとでした。それでも、治療するために入院した精神科病院も3か月ぐらいで出されちゃたり入所した施設を飛び出したりして、結局、またすぐにここ(刑務所)に戻ってきてしまう。うちの受刑者は、電車で目的地に行くことすらままならないのに、出所日になって、本人が事前に福祉支援を希望せず、ご家族など身元引受人が迎えに来なければ、“放り出さざる”を得ないんです。我々刑務官は、受刑者が刑務所の門を出た瞬間から、私的に関わってはいけない。だから、何の手助けも出来ない。『再犯防止』を謳う一方で、やるせない気持ちでいっぱいでした。今は、福祉士さんたちが常駐してくれて、出所後のサポートもできるようになった。それでも、難しいと感じることは多いけど、以前とは比べものにならないぐらい改善されました」
そう、「岡崎医療刑務所」の脇嶋守首席は、いつものように木訥とした口調で話しはじめた。
私が、脇嶋首席に会うのは、これで3回目だ。最初は仏頂面で無口に感じたが、何度も話すうちに、彼が極めて、純粋で優しく、生真面目な人柄であることがわかってきた。
脇嶋首席は、今から約10年前にも「岡崎」に勤務していたことがある。医療刑務所や受刑者を取り巻く変化について、実体験を交えて語れる数少ない貴重な職員だ。
岡崎に収容されているM指標受刑者(=精神的に何らかの障害を有する男子受刑者)は、その障害ゆえに、他人とコミュニケーションをとることを苦手とする傾向が強い。岡崎の累犯障害者は、話を聞いていると、性犯罪や重大な殺人事件の累犯者は別として、大きく以下の3パターンに分かれているような気がする。
(ア)様々な事情で家族と住むことができないため、知らない土地で知らない人と、イチから人生をやり直そうと、初めは努力するのだが、結局は上手くいかないことが続き、薬物などの誘惑に負けてしまう。
(イ)出発点は(ア)と一緒だが、「住み慣れたところ(=刑務所)の方が生活しやすい」と、半ば自主的に、または強迫的に何らかの罪を犯して戻ってくる。
(ウ)そもそも人と交わるのが苦痛であり、長期的なスパンで物事を考えることもできないため、刑務所を出た瞬間、ようやく独りになれたと自由と解放感を感じ、そのまま行方をくらましてしまったり、「公園暮らし」に戻る。だが、当たり前のように生活に行き詰まり、窃盗や強盗などで再逮捕される。
いずれのケースでも、疾病や障害を有しながら生活する中で暴行や傷害事件などに発展することもある。しかしその背景には、過去、彼ら累犯障害者に対する出所後のケアの薄さもあったのではないかと思う。
(イ)のパターンで、鍋内智博処遇部長が忘れられないのは、ある元受刑者が、
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