赤尾千波(あかお・ちなみ) 富山大学人文学部人文学科教授(アメリカ文学・文化専攻)
津田塾大学学芸学部英文学科卒。筑波大学大学院修士課程地域研究研究科、インディアナ大学大学院を経て、筑波大学大学院博士課程文芸・言語研究科途中退学。岐阜大学教育学部助手を経て現職。著書に『アメリカ映画に見る黒人ステレオタイプ――『国民の創生』から『アバター』まで』(富山大学出版会)など。 研究室HP、 アメリカ映画に見る黒人ステレオタイプ』関連資料
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
「イエローフェイス」の白人タレントを日本人は笑えるか
「イエローフェイス」とは、前稿で述べた「ブラックフェイス」同様、単に「黄色い顔」あるいは「黄色く化粧した顔」という意味ではない。白人俳優が、目じりにテープを貼って吊り目にし、眉を細く整えて作り上げた、ステレオタイプとしての「東洋人の顔」のことを言う。
浜田雅功「黒塗りメイク」論争を再考する――「ブラックフェイス」は、“忌まわしき過去の象徴”
アジア人自身が見ると、大変不自然なメーキャップであり、なぜアジア系の俳優に演じさせないのだろうと思われるが、「白人俳優のほうが……、クリシェ(常套句(じょうとうく))としての東洋人を心得ているから」(村上由見子『イエロー・フェイス――ハリウッド映画にみるアジア人の肖像』朝日選書、1993年、89頁)、クリシェ、言い換えればステレオタイプの「東洋人」として、より一層、誇張して演じることができて便利であったというのだ。
映画では、韓国系や中国系の俳優を起用することが多かったが、マンガやポスターなどに見る東条英機などの軍人は、イエローフェイスのイラストで描かれている。
このころ、吊り目・ほそ眉に加え、メガネをかけていて、歯並びが悪い(出っ歯)、頭でっかち(低身長)というのも、イエローフェイスの日本兵、日本男性を描く際の必須構成要素となっていった。
ネズミ、サル、ヘビなどの動物にイエローフェイスがのっかったイラストも描かれた。
白人女性を襲おうとする姿や、「血に飢えた怪物」の姿も、好んで描かれた。
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