『ハイジ』と『もののけ姫』に学んだもの
2018年02月20日
『ぼくの名前はズッキーニ』
2016年/スイス・フランス/66分 原題/Ma vie de Courgette
監督/クロード・バラス
脚本/セリーヌ・シアマ
原作/ジル・パリス「Autobiographie d'une courgette」
配給/ビターズ・エンド、ミラクルヴォイス
2016年アヌシー国際アニメーション映画祭最優秀作品賞・観客賞/第89回アカデミー賞長編アニメーション部門ノミネート/第42回フランス・セザール賞最優秀長編アニメーション賞・最優秀脚色賞/東京アニメアワードフェスティバルTAAF2017 長編部門優秀賞 他受賞/全米映画批評サイトRotten Tomatoes満足度100%
2018年2月10日(土)より、東京・新宿ピカデリー、YEBISU GARDEN CINEMA他にて公開中
公式サイト
クロード・バラス(Claude Barras)
1973年、スイス・シエール生まれ。フランス・リヨンの美術学校エコール・エミール・コールでイラストレーションとCGを学ぶ。『Fantasmagories(原題)』(1997年)など、短編アニメーションを多数制作。ストップモーションで制作された『Le génie de la boîte de raviolis(邦題「ラビオリ缶の妖精」または「魔法のラビオリ缶」)』(2006年)が国内外の映画祭で受賞。初の長編監督作品『ぼくの名前はズッキーニ』(2016年)は、フランス・アヌシー国際アニメーション映画祭長編部門クリスタル賞(グランプリ)・同観客賞他、世界各国で多数の賞を受賞。アカデミー長編アニメーション賞にもノミネートされた。
『ぼくの名前はズッキーニ』バラス監督に聞く――心の傷を仲間と乗り越える子供たちを描く
――バラス監督は日本のアニメーションもよくご覧になっていると伺いました。影響を受けた作品などはあるのでしょうか。
バラス 高畑勲監督の『アルプスの少女ハイジ』(1974年)は、幼い頃からよく観ていました。ハイジもズッキーニと同じように、孤児で過酷な環境で生きて来たことが深く印象に残っています。最近も姪っ子に『ハイジ』のDVDをプレゼントしましたよ(笑)
高畑勲監督と宮崎駿監督は、先ほど申し上げたような人物の二面性や複雑さを作品の中で何度も描かれて来たと思います。そうした影響を受けていると言えるかも知れません。
――『ハイジ』のオープニングに空高くブランコをこぐ名シーンがあります。高畑監督は著書で「ぶらんこは女性によく似合う」と記されています(『一枚の絵から/海外編』2009年、岩波書店)。原画を描いたのは宮崎駿監督でした。本作にもブランコが重要なシーンに出て来ますね。
バラス 残念ながら『ハイジ』のブランコのシーンはあまり覚えておりません。私は、ブランコは「愛のシンボル」だと思っております。近づいたり離れたりする様子が愛情に似ていますね。また、ブランコを押したり押されたりする動作には信頼が不可欠です。
――宮崎駿監督の『もののけ姫』(1997年)が特にお好きだと伺ったのですが、その理由を伺えますか。
バラス 私が環境問題に敏感だということがその理由の一つです。『もののけ姫』は、スタジオジブリの作品の中でも特に環境というテーマを大きく扱っている作品だと思います。「ドキュメンタリーに近いお伽話」という構成、自然からのメッセージや森林破壊を考えさせるという点、自然と産業間の闘争を単純に「どちらが善か悪か」で表現していない点などが素晴らしいと思いました。たとえば、産業側の「エボシ御前」というキャラクターは、単なる敵役として描かれるのでなく、病者や女性も平等に生きられる社会を維持するために闘う――といった深い理由を描いている点も良かったです。
――多義的で複雑な人物像、社会的テーマなど本作とも共通する点があるような気がします。
バラス そう感じてもらえると嬉しいですね。
――アニメーションの演出について伺います。
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