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女装した漁師らが大漁旗やこいのぼりで飾り付けた船の上で扇子片手に浮かれて踊る奇祭「大瀬(おせ)まつり」拡大女装した漁師が踊る「大瀬(おせ)まつり」(静岡県沼津市)。女装は日本文化の様々なところに現れる

「女装」のしんどさ・性暴力の危険性

 連載第3回で紹介したような女装を試みた文化人は、その結果、逆に見えてきた、「女装」――ここでは女性自身の普通の装いを「 」をつけて「女装」と記す――の「しんどさ」でも指摘してくれたらよかったのだがと、私は思う。

 『たまゆら』では、例えばハイヒールをはく大変さを述べた人は何人かいるが、残念だが突っ込んだ発言はほとんどなかった。もっとも、短時間の体験で分かることにはおのずと限度がある。長年ハイヒール――典型的な女装に見られるような10センチもあるヒールでなかったとしても――をはき続けて外反拇趾になる女性がいるが、「たまゆら」の女装では、つまり周囲を歩き回るという体験でもしなければ、それはなかなか分からないのではないか。またハイヒールをはくと、疲労・炎症・腰痛等を起こしやすくなる(ただし私の理解はしょせん読書を通じた知識でしかないかもしれないことはお断りする)。

 そして女装家たちには、女性がしばしば遭う性被害などのことも、この際知ってもらいたかったと思う。一部の例外をのぞき、ほとんどの人にとって限定された空間での、かつ一時的な女装体験であっては無理だとは思うが、その気になれば十分な想像力を働かせることはできたのではないか。

 例えば性転換をしたある男性は、「女性」になり「女装」(スカート姿)し始めたばかりの頃、列車内で痴漢にあい、 ・・・続きを読む
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筆者

杉田聡

杉田聡(すぎた・さとし) 帯広畜産大学教授(哲学・思想史)

1953年生まれ。帯広畜産大学教授(哲学・思想史)。著書に、『福沢諭吉と帝国主義イデオロギー』(花伝社)、『逃げられない性犯罪被害者——無謀な最高裁判決』(編著、青弓社)、『レイプの政治学——レイプ神話と「性=人格原則」』(明石書店)、『AV神話——アダルトビデオをまねてはいけない』(大月書店)、『男権主義的セクシュアリティ——ポルノ・買売春擁護論批判』(青木書店)、『天は人の下に人を造る——「福沢諭吉神話」を超えて』(インパクト出版会)、『カント哲学と現代——疎外・啓蒙・正義・環境・ジェンダー』(行路社)、『「3・11」後の技術と人間——技術的理性への問い』(世界思想社)、『「買い物難民」をなくせ!——消える商店街、孤立する高齢者』(中公新書ラクレ)、など。

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