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【公演評】雪組『義経妖狐夢幻桜』

摩訶不思議が香る和風ロックファンタジーで、朝美絢がバウホール単独初主演

さかせがわ猫丸 フリーライター


 雪組バウホール公演『義経妖狐夢幻桜 よしつねようこむげんざくら』が、3月29日、宝塚バウホールで初日を迎えました。この作品は、世界の果てを目指してさすらうヨシツネが、ある日、キツネの少女ツネに出会ったことから、摩訶不思議な世界に飛び込んでしまう和風ロックファンタジーです。

 ヨシツネを演じる朝美絢さんは、スターがひしめく花の95期生。昨年5月に月組から組替えし、雪組に新しい風を吹かせています。クールでエキゾチックな美貌と安定した実力を誇り、ただいま人気も急上昇中。2015年のバウ・ワークショップ『A-EN』では暁千星さんとダブル主演でしたが、今回は雪組らしい和物で初のバウホール単独主演となりました。

 きらびやかな衣装にも負けない朝美さんの美しさは、ちょうど今、満開となっている桜にも負けてはいません。タイトルの夢幻桜のごとく桜吹雪舞う「花のみち」も、劇場の中も、夢のような世界が広がっていました。

強さと優しさを持つ朝美ヨシツネの美

 朝美さん演じるヨシツネは、天才的軍略で平家を打倒した英雄と紹介されているので、源義経をモデルにしているようですが、あくまでも舞台は“日本によく似た国”らしい。セリフ回しも現代的で、どうやら普通に想像する日本物作品ではなさそうですが…。

――兄ヨリトモ(永久輝せあ)から敵対視され、あてどない旅を続けるヨシツネ(朝美)は、ある日、ツネ(星南のぞみ)と名乗る不思議な少女と出会った。ツネは「世界の果てに行きたい」と言うヨシツネをとある場所へと連れて行くが、そこは深い雪と不思議な香りに包まれたどこかおかしな村だった。村人たちは誰もツネを知らないと言い、キツネに化かされたのではないかと笑うばかりだ。

 舞台のセットはクリスタル風の柱など現代的かつ抽象的なもので、ここからも通常の日本物とは違うことがうかがえます。

 朝美さんは髪を高く結い、色とりどりのきらびやかな衣装に、足元はもちろんブーツ。ゴージャスな衣装がイケメン度合いを引き立てているだけでなく、セリフも歌声もクリアで、真ん中に立つ存在感も十分でした。

 ヨシツネは横暴な兄をかばう発言をしたり、人々の平和を願う優しさあふれた人物です。ツネと出会って戸惑いながらも、世界の果てに行きたいと願う強い気持ちが揺らぐことはありません。強さの中にも優しさを持ち、苦悩する表情もクールで、朝美さんの魅力がたっぷり詰まったヨシツネに、ファンのみなさんもドキドキすること間違いなしでしょう。

◆公演情報◆
『義経妖狐夢幻桜(よしつねようこむげんざくら)』
2018年3月29日(木)~ 4月9日(月) 宝塚バウホール
[スタッフ]
作・演出/谷貴矢
公式ホームページ

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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