察するに「3つの方針」があり、結局はゼロになってしまい
2018年04月04日
親しい朝ドラ好き友だちと見解が一致したのだが、「わろてんか」で一番おもしろかったのは最終回だった。腹を抱えて、とは言わないが、クスクス笑いながら見た。
朝ドラ好きの知り合いは彼女の他に何人かいるが、「わろてんか」については、私が把握しているだけで2人、「途中で見るのをやめた」と言っていた。理由はわかる。笑ってください=わろてんか、とタイトルで誘いかけているにもかかわらず、「わろてんか」は全然笑えなかった。だからと言って、泣けもしなかった。
途中でやめることこそしなかった私だが、惰性で見ていたのであって、最終回も期待していなかった。そうしたら、笑えた。なんだ、できるじゃん。最初から、ずっとこんな感じでやればよかったのにね。これも、冒頭の彼女と一致した見解だ。
と言っても、そう簡単じゃないことはわかっている。最終回がなぜおもしろかったのかというと、ドラマの中で「吉本新喜劇」が見られたからなのだ。
未見の方のためにゆっくり説明するなら、最終回は戦後間もない焼け野原の大阪で、「吉本興業」をモデルとした「北村笑店」が再出発するため、お代を取らない「青空喜劇」を見せようということになり、そこで「北村笑店物語」と名付けた自分たちの歴史を描いた芝居を、急ごしらえの舞台で見せる。演じるのは芸人だけでなく、社長(=「わろてんか」のヒロイン・てん=葵わかな)以下、北村笑店にかかわる面々。素人も含め猛練習し、本番に。
そんな展開で見せる青空喜劇・北村笑店物語の演出は、そっくり吉本新喜劇の演出法だったから、それは笑えて当たり前といえば当たり前なのだ。
未見の方のために続けるなら、昨今ではNHKお抱え俳優のようになっている高橋一生の役名は「伊能栞」で、名前からしてカッコいい。不動産、鉄道、エンタテイメントを手がける伊能商会の社長で、阪急グループを思わせるわけだが、北村笑店の相談役でもある。青空喜劇の舞台では、てんの息子・隼也(成田凌)が伊能に扮している。
隼也が登場、「北村笑店相談役の伊能です」とカッコよく言うと、広瀬アリス演じるところの美人漫才師リリコが「昨日は金曜日やー」と言う。すると、「『きのう』やなくて『いのう』です」と隼也がカッコよく訂正する。そこで、てん本人が演じるてんが舞台の上で、「あのー、きのうさん」とまじめな調子で割って入る――と、こんな感じだ。
わかりやすくボケて、わかりやすく突っ込み、またボケて、みんなでガクッとする。完全に吉本新喜劇。最終回だからこその余興であって、ドラマ全体をこんな調子で作っていくわけにはいかないことは、私のようなドラマ制作の素人でもわかる。
じゃあ、「わろてんか」をどんな調子で作るのか、それを考えるのがドラマ制作のプロなのに、一生懸命考えてなかったんじゃないかなあ。そう思う。
考えたであろう方針のようなものは、なんとなくわかった。
方針その1 笑いの殿堂・吉本興業の創業者のお話だし、笑いの要素はほしいよね。そうだ、笑える小芝居を、達者な役者で入れていこう→濱田岳、内場勝則、藤井隆らで実行。
方針その2
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