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男性が反対するべき「本当の男性差別」とは何か?

女性嫌悪を生む「男性差別被害」の原体験

勝部元気 コラムニスト・社会起業家

映画館などの「レディースデー」も「男性差別だ」と反対する人がいるが……映画館などの「レディースデー」も「男性差別だ」と反対する人がいるが……

 前回の記事「女性専用車両への嫌がらせをする気持ち悪い人たち――差別の3要件から考える「男性差別」の虚構」では、女性専用車両は男性差別には該当せず、その根拠として差別が成立するには以下の3つの要件が必要であることを論じました。

【1:権力勾配性】権力を持った者や集団内の多数派により、
【2:デモグラフィック(=人口統計学的)特性】本人の意思ではどうすることも出来ない属性(人種、性別、家柄等)を理由に、
【3:相対的不利益】集団内のスタンダードに満たない不利な状況に置かれること。

飲み会の女性差別は男性差別以上

 では、男性差別はこの社会に存在するのでしょうか? 私は基本的にジェンダーギャップ指数114位(世界経済フォーラム:2017年)の日本社会においては、ほぼ存在しないと思います。

 たとえば、飲み会で男性社員だけが己を辱めるような出し物をさせられたり、体育会系のノリによりむちゃぶり等のパワハラを受ける場合があります。これは一見男性差別のように思いますが、女性社員はお酌、配膳、取り分け等が要求されるセクハラを受けがちなので、男女というジェンダーの問題というよりも、単なる上司による、地位の低い部下に対するハラスメントであり、その形が男女によって違うだけです。

 ちなみに、ハラスメントが発生している飲み会の現場に限ればジェンダーは関係無いのですが、より長期的な視点では大いに関係します。男性がこのようなハラスメントに耐えたことが「よくやった」と上役からプラス評価され、出世への好材料になるケースがあります。ですが、女性がハラスメントに耐えても「やって当たり前」と見なされて、大半の場合、出世に繋がるわけではないというのはよく聞くケースです。

 ですから全体を俯瞰してみると、むしろこの飲み会におけるハラスメントは女性差別的な要素のほうが多いと判断することが出来るでしょう(※どちらの要素が多いかで言えば女性差別だと思うのですが、男女どちらに対してもハラスメントを無くさなければならないことは当然です)。

差別に当たるのはレディースデーより大相撲

 また、女性専用車両に反対している人々が、同様に男性差別だとしてよくやり玉にあげるのが、飲食店や映画館などの「レディースデー」です。確かにこれに関しては、痴漢という女性差別を理由とした女性専用車両とは異なり、目の前に対策をとらなければならない明確な社会課題があるわけではないので、私も決して適切な措置だとは思いません。

 ですが、レディースデーを実施している飲食店は少数派です。そのため、飲食店を選ぼうとする顧客と、選んで欲しいと思っている飲食店の関係では、(1)の権力勾配性における要件を満たしているとは言い切れないことから、「問題視する優先順位は低い」と思います。

 2018年4月4日に、くも膜下出血で土俵上に倒れこんだ舞鶴市長に胸骨圧迫をしていた女性に対して、日本相撲協会の行司が「女性は土俵から下りてください」とアナウンスしたことが、世界中のメディアからも非難が飛び交う事態に発展したことで、女人禁制の因習が注目を浴びています。

 以前から女性の首長が土俵で挨拶出来ないことが問題になっていましたが、この女人禁制の風習のほうこそ(1)~(3)全ての要件に該当する差別であるため、レディースデーより何倍も解消するべき事案ではないでしょうか?

 飲食店のレディースデーが嫌な場合、男性の顧客はそれを実施していない多数派のお店に行く等のことが出来ますが、土俵でスピーチを行う首長等が女性の場合、女人禁制を敷いていない別の大相撲巡業で挨拶を行おうにも、そういう巡業は存在しません。

レディースデーより男女の

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