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『PHOTOGRAPH 51』公演レポート

舞台初主演の板谷由夏がひたむきに生きる女性研究者を熱演

大原薫 演劇ライター


拡大『PHOTOGRAPH 51』公演から=花井智子撮影

 イギリス・ウエストエンドで好評を博した話題作『PHOTOGRAPH 51』が日本初上演。4月22日まで東京芸術劇場シアターウエストにて上演中で、4月25日、26日には梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演される。

 DNAの二重らせん構造という世紀の大発見をした女性科学者ロザリンド・フランクリンがなぜノーベル賞を受賞しなかったのか。彼女を取り巻く男性たちとのやりとりから、その謎が明らかになる。今に通じる問題が浮かび上がる、スリリングな会話劇だ。

なぜ彼女はノーベル賞を受賞しなかったのか?

 ユダヤ系イギリス人の女性科学者ロザリンド・フランクリンが遺伝子の最先端を誇るロンドン・キングスカレッジの特別研究員になったところから、物語は始まる。

 女性科学者がほとんどいなかった1950年代、共同研究者のウィルキンズと衝突を繰り返しながらも、DNA構造の謎解きに没頭するロザリンド。DNA二重らせん構造の重要なカギを握るX線解析写真の撮影に成功するが、協力体制が取れていないロザリンドとウィルキンズがその謎の解明にたどり着く前に、ライバル科学者のワトソンとクリックのチームが二重らせん構造の発見に成功する。ワトソンとクリック、ウィルキンズはノーベル賞を受賞。しかし、受賞者の中にロザリンドの名前はなかった――。

拡大『PHOTOGRAPH 51』公演から=花井智子撮影

 ストーリーは、DNAの二重らせん構造発見を巡る史実を元としたフィクション。2015年ロンドン・ウエストエンドでアカデミー賞受賞女優ニコール・キッドマン主演により上演された作品の日本初演である。劇場に入ると目につくのが白を基調としたシンプルなステージだ。芝居が始まると、中央の円形になっているステージングエリアがロザリンドの、右側がウィルキンズ、左側がロザリンドの理解者であるキャスパー、後方がワトソンとクリックのいる場所だということがわかってくる。

 「DNA」「二重らせん」と出てくる単語は小難しそうだが、そこで描かれている人間関係は、今も多くの女性たちが直面する普遍的なものだ。たとえば劇中で、博士号を持つロザリンドが「フランクリン博士と呼ばれたい」と主張しても「フランクリンさん」と呼ばれてしまうというエピソードが出てくるが、同じような経験をしたことがある人もいるだろう。男性社会で、ことある毎(ごと)に「女だから」「女のくせに」という意識にぶつかりながらも、一心に自分の研究に取り組むロザリンド。だが、彼女は決してスーパーウーマンではない。頑なで、不器用。「もっとうまく立ち回ればいいのに……」と思うようなところもあえて突っかかっていくロザリンドに人間味があり、共感を呼び起こされる。

◆公演情報◆
『PHOTOGRAPH 51(フォトグラフ 51)』
2018年4月6日(金)~22日(日)  東京・東京芸術劇場シアターウエスト
2018年4月25日(水)~26日(木) 大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
※お問い合わせ(10時~18時):梅田芸術劇場 0570-077-039[東京] 06-6377-3888[大阪]
※料金:全席指定・税込8,500円(東京・大阪)
[スタッフ]
作:アナ・ジーグラ
演出:サラナ・ラパイン
翻訳:芦澤いずみ
[出演]
板谷由夏、神尾佑、矢崎広、宮崎秋人、橋本淳、中村亀鶴
公式ホームページ
公式ツイッター
公式インスタグラム
板谷由夏取材会レポートはこちら
矢崎広インタビュー記事はこちら

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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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