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柳家喬太郎インタビュー(上)

『たいこどんどん』は「豪華絢爛な落語」です

中本千晶 演劇ジャーナリスト


拡大柳家喬太郎=宮川舞子撮影

 こまつ座『たいこどんどん』に出演する落語家・柳家喬太郎に話を聞いた。井上ひさし作『たいこどんどん』は、江戸を飛び出し旅に出た商家の若旦那・清之助とたいこ持ち・桃八の物語である。お気楽な道中かと思いきや、二人はやがてとんでもない方向に流されていくことになる。

 この桃八役を「いま最もチケットが取れない」人気落語家の柳家喬太郎が演じる。喬太郎がとらえる独自の桃八像から、大好きな演劇への思い、そして、気になる新作落語の作り方まで、「落語とお芝居のはざま」のお話をたっぷり伺った。途中、ほぼ即興落語のように語ってくださったところも何カ所かある。文字面でしかお伝えできないのが何とももどかしいが、落語好きな方も必読だ。

 ちなみにこのインタビュー、三ノ輪(東京都台東区)にあるお稽古場にて行われたが、喬太郎師匠の観察眼による三ノ輪語りがこれまた面白い。こうやって新作落語の種が引き出しに溜め込まれていくのかと体感するインタビューでもあった。

「受けなきゃ良かった」後悔真っただ中!?

拡大柳家喬太郎=宮川舞子撮影

――初めて出演依頼のお話があったとき、どう思われましたか?

 「え〜〜っ?」ていう感じですかね。

――「え〜〜っ?」ですか。

 まずびっくりですよね。僕もお芝居は今まで3、4回やらせていただきましたけども、こまつ座に噺家が出るなんて、ないぜ! ありえないぜ! こう言っちゃナンだけど、「この機会を逃す手はありませんよ〜」みたいな感じで壺か何かを売られるんじゃないかと思いました。

――(笑)。

 まあ、大げさに言えばですよ。でも、お話を伺って芸人としてここで断っちゃいけないような気持ちでお受けして。で、戯曲を読ませていただいて「やっぱりこれは受けなきゃよかった」ていう(笑)。今は後悔の真っただ中です。

――それは何故ですか?

 できるわけがないじゃないですか、俺が。

――ええっ(笑)。

 観客として拝見する分には、とてつもなく面白いと思うんですがね。だけどお客さんはきっと「おやりになる方は大変だよな」と思いながらご覧になるんですよ。その「おやりになる方」になっちゃったよっていう感じだね(笑)。去年もある劇団のお芝居に出たんですが、お客さんから見えるところでハケ間違えて、「あれ? 目の前が壁?」(実演付)みたいなことになっちゃって。そんな人が「たいこどんどん」をできるわけじゃないじゃないですか(笑)。

――でも、たいこ持ちって落語にもたくさん出てきますから「お手の物なのでは?」とも思うし、 逆に「ちょっとやりにくい部分もあるのかな」とも思うのですが、どうなのでしょう。

 口調として落語とかなりリンクするので喋りやすいっていうのはあります。逆に舞台上の桃八さんじゃなくて、柳家喬太郎になっちゃうのが怖いですよね。口慣れちゃってるからこそ、それはとても気をつけなきゃいけないと思いますよ。まあそれ以前にまずセリフや動きを覚えろよという話で、柳家喬太郎の地が出るなんていう余裕はないとは思うんですけどね。

◆公演情報◆
こまつ座第121回公演
『たいこどんどん』
2018年5月5日(土・祝)~20日(日) 東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
[スタッフ]
作:井上ひさし
演出:ラサール石井
[出演]
柳家喬太郎、江端英久、あめくみちこ ほか
※窪塚俊介は急病のため降板いたします。
公式ホームページ
〈柳家喬太郎プロフィール〉
東京都出身。1989年柳家さん喬に入門。前座名、さん坊を名乗る。1993年に二つ目に昇進し、喬太郎に改名。2000年に真打に昇進。古典落語を演じるとともに、数多くの新作落語を発表している。テレビや舞台にも積極的に出演。主な出演作品は、『齋藤幸子』『ぼっちゃま』(舞台)、『ちゅらさん4』『坂の上の雲』(テレビ)、『落語物語』『スプリング、ハズ、カム』(映画)など、多数。こまつ座へは今作が初出演となる。

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筆者

中本千晶

中本千晶(なかもと・ちあき) 演劇ジャーナリスト

山口県出身。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て独立。ミュージカル・2.5次元から古典芸能まで広く目を向け、舞台芸術の「今」をウォッチ。とくに宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。主著に『タカラヅカの解剖図館』(エクスナレッジ )、『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』『宝塚歌劇に誘(いざな)う7つの扉』(東京堂出版)、『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡』(ポプラ新書)など。早稲田大学非常勤講師。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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