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柳家喬太郎インタビュー(下)

『たいこどんどん』は「豪華絢爛な落語」です

中本千晶 演劇ジャーナリスト


柳家喬太郎インタビュー(上)

俺、根本的に落語家には向いてない気がする

拡大柳家喬太郎=宮川舞子撮影

――でも、師匠は落語も本業としてやりつつ、映画や舞台など、お芝居的なことも積極的にされていますよね。

 積極的じゃないです。非常〜〜に消極的です。

――(笑)。それもやっぱり新作落語を「作らざるを得ない」のと同じで「やらざるを得ない」からなのでしょうか?

 お芝居に対しては、もっと別の思いが根本的にありまして。僕、どっちかって言うと無趣味なタイプの人間で、演劇は数少ない好きなことなんです。でも、お芝居の話を受けたら、どうかするとそれが仕事になっちゃいますよね。

 そもそも落語っていう芸能を若い頃すごく好きになって、もう他のことを考えられなくなるぐらいになって。落語家になるなんて恐れ多くて、サラリーマンの仕事も好きだったし落語で飯食ってくなんてのは特殊な人たちだからできるわけないと思ったけど、やっぱりどうしてもなりたいと思って、会社辞めて落語家になったんです。でも、何の商売でも飯食っていくのは大変じゃないですか。そうすると落語はもう趣味じゃなくなっちゃうんですよね。「落語なんてものがあるから俺はこんなに苦しむんだよ」って思ったことすらありますよ。今でも「向いてないんじゃないか」とたまに思いますしね。

――ええっ! そうなんですか?

 僕、根本的に向いてない気がしますもの。

――それは何故ですか?

 こんなふうに真面目に喋っているから。だってもっと割り切って面白くやれる芸人さんっているじゃないですか。でも、今は結構真面目に喋っちゃってるよね。こういうところが向いてないと思う。今の話、別に面白くないと思うし(笑)。

――いえ、面白いです(笑)。

 僕はウルトラマンが好きでよくウルトラマンの話をするんですけど、それで円谷プロさんともお付き合いができて公認みたいな形でやらせてもらった事もあったんです。そうするとウルトラマンのイベントというとお声をかけていただけるようになってきて、半分仕事になっちゃうんですよね。もちろん、今も大好きだし、ありがたいんですけど……でも、お芝居は柳家喬太郎じゃなくて本名に戻って楽しみたいんですよ。だから、僕は自分のプロフィールに今までいっぺんも演劇に関することは書いてないです。

――それは好きなものはとっておきたいから?

 そう。放っておいてほしいから。

◆公演情報◆
こまつ座第121回公演
『たいこどんどん』
2018年5月5日(土・祝)~20日(日) 東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
[スタッフ]
作:井上ひさし
演出:ラサール石井
[出演]
柳家喬太郎、江端英久、あめくみちこ ほか
※窪塚俊介は急病のため降板いたします。
公式ホームページ
〈柳家喬太郎プロフィール〉
東京都出身。1989年柳家さん喬に入門。前座名、さん坊を名乗る。1993年に二つ目に昇進し、喬太郎に改名。2000年に真打に昇進。古典落語を演じるとともに、数多くの新作落語を発表している。テレビや舞台にも積極的に出演。主な出演作品は、『齋藤幸子』『ぼっちゃま』(舞台)、『ちゅらさん4』『坂の上の雲』(テレビ)、『落語物語』『スプリング、ハズ、カム』(映画)など、多数。こまつ座へは今作が初出演となる。

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筆者

中本千晶

中本千晶(なかもと・ちあき) 演劇ジャーナリスト

山口県出身。東京大学法学部卒業後、株式会社リクルート勤務を経て独立。ミュージカル・2.5次元から古典芸能まで広く目を向け、舞台芸術の「今」をウォッチ。とくに宝塚歌劇に深い関心を寄せ、独自の視点で分析し続けている。主著に『タカラヅカの解剖図館』(エクスナレッジ )、『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』『宝塚歌劇に誘(いざな)う7つの扉』(東京堂出版)、『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡』(ポプラ新書)など。早稲田大学非常勤講師。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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