「ソル・ギョングがイム・シワンを見るときのまなざしを見てほしい」
2018年05月03日
映画『名もなき野良犬の輪舞』(5月5日(土)から東京・新宿武蔵野館ほか全国公開)は、どんな役でも自在に演じる韓国きっての演技派俳優のソル・ギョングと、アイドルグループZE:A出身で、最も成功した“演技ドル(演技のできるアイドル)”と言われてきたイム・シワンのふたりによる、新しい韓国ノワールだ。
ソル・ギョングは前作『殺人者の記憶法』ではアルツハイマーの連続殺人鬼という役を演じたが、本作ではスタイリッシュに豹変。もともとは、額を出すヘアースタイルや、身体を鍛えてスーツを着こなすことには躊躇していたというソル・ギョングを説得したのは、本作の監督のビョン・ソンヒョンであった。
彼は、イム・シワンについても、これまでの優等生な姿を覆したいし、彼がこの映画に出演した理由もまさにそこだったと語る。
カンヌ国際映画祭でも絶賛された、色を感じさせる独自のノワールを完成させた監督に話を聞いた。
「前作のときにラブ・コメディを一気に見たことには理由があるんです。ラブコメは、それまであまり見たことのないジャンルだったんです。今回のようなノワール作品は、普段から見ていたので、改めてノワール作品を見るということはなかったですね」
――ノワールに初めてふれた作品や、最初に印象に残ったのは何でしょうか。
「今回の『名もなき野良犬の輪舞』に影響を与えた作品というわけではないんですが、一番印象に残っているのは、アラン・ドロンの『サムライ』(ジャン=ピエール・メルヴィル監督)ですね」
――韓国のノワールを作ろうと思ったときに、これが自分のノワールだと意識したことはありますか?
「この作品はノワールというコートをまとっているんですけど、ほかの作品と差別化するために、物語の展開において、少しメロドラマ的な要素を入れているんです。それから、以前のノワールに、重くて無彩色の印象があったとしたら、『名もなき野良犬の輪舞』ではカラーをたくさん取り入れて多彩な画面作りを意識しました」
――本作を、ブロマンス(男性同士の強い絆で結ばれた関係性を示す造語)を超えた作品であるとソル・ギョングさんが言われていますが、監督はそれはどういうところにあると思われますか。
「今回ふたりの登場人物が破滅的方向に向かうなかで、いろんな選択をするんですけど、よく見ると、論理的ではない選択が多いんですね。単に友情や義理では説明できない微妙な感情があったし、そうあるべきと思って撮っていたんです。時にジェホ(ソル・ギョング)がヒョンス(イム・シワン)を見るときのまなざしを観客のみなさんには見てほしいなと、その点に気を付けながら撮っていました」
――「まなざし」に関しては、監督が指示を出した部分と、役者が感じて演じた部分もあったんでしょうか。
「私はだいたいの方向性を指示して、ディテールについてもときどき演技指導したくらいです。あとはシナリオに全部書いていました。なので、本人の演技に任せていれば大丈夫と考えて撮影していました。ソル・ギョングさんに最初にお願いしたのは、温かいまなざしでヒョンスを見てほしいということでした。それも最初に言っただけで、あとはもうお任せしていました」
――アクションも魅力的でしたが、監督自身には、どういうこだわりがあったんでしょうか。
「最初、漫画的なアクションを私が求めたら、アクション監督はちょっと懸念していたんです。シナリオにそのアクションは合っているのか、もっと現実的なアクションのほうがいいのではないかという話になったんですね。でも、私としては、アクションをリアルに見せるためのアクションではなく、この映画では、ふたりの関係性を見せるためにあるんです、と説明したところ、納得してくれました。そのことを説得するために、その前の前の場面を見せたりもしたところ、アクション監督は、現場でもアクションのイメージをさらに変えてくれましたね」
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください