2018年05月17日
GWの昼下がりに『弟の夫』(NHK)が地上波で3話一挙放送があった。
ゲイ漫画家(ゲイ・エロティック・アーティスト)の田亀源五郎が、ゲイ雑誌じゃなくて一般誌に連載した『弟の夫』。同性愛を扱っているけれどエロ場面はいっさいない。
「カナダで死んだ双子の弟の“夫”が自分を訪ねて来日した数週間」を描いた、日本でまだまだ認知されていない(だろう、やっぱり)同性愛、同性婚について、構えずにふつうに考えてもらおうとした漫画。それが実写ドラマ化された。最初にBSで放映されて「なんだよ結局はBSかよ」と怒ってたら(うちはBS映らないので)、GWに地上波でやるというからやっと見た。
これがよかった。元力士の把瑠都が、主人公の双子の弟の「結婚相手」のカナダ人・マイクを演じてるんだけど、これがもう、今後把瑠都はマイクにしか見えないぐらいのハマリっぷり。大きくて心優しい、弟のことをとても愛していた、カナダ人のゲイ。その他のキャストも、漫画に負けないというか漫画を超えたというか、違和感あるキャストがただ一人もいないというすごいドラマなのだった。
ひさびさにこんないいドラマ見たなー、と感動で泣いたりしながら、しかし、私の「何かいちゃもんつけるところを見つけたい欲」は鋭くとぎすまされて、ちゃんと何かを見つける。それは、いちゃもんをつけたい、というよりは「……なんでだろう?」という疑問に近いものであるのだが……このドラマに出てくる食べ物のことだ。
原作漫画を読むと、そもそも連載1話にそれぞれつけられるタイトル、食べ物の名前になってるのがとても多い。「カレー」「チーズマカロニ」「寿司の天ぷら」「ホットチョコレート」とか。
主人公は、妻と離婚して小学生の一人娘と暮らすシングルファーザーで、仕事は親から受け継いだアパート経営なので家事をする時間は充分ある。料理も好きだという設定。
ドラマの、この部分が見事だった。台所の場面。妻と別れた男が、娘のため、多少は自分の楽しみもこめて、切り回している台所。きっと親の代からある家で、でもわりとさいきん水回りは新しくした、みたいな台所。そこで、適度に雑然として適度に整理された専業主夫の台所の雰囲気が、ものすごーくリアルに再現されていた。というか、このドラマのために台所のこまごまを用意したとは到底思えず(一から用意するとなるとものすごくめんどくさそう)、この主人公がそこで暮らして料理してるとしか思えないほどなのだ。
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