介入する都議・都教委はあまりに時代錯誤
2018年05月24日
本年3月24日付朝日新聞によれば、東京都教育委員会は、自民党都議会議員の指摘を受け、足立区の中学校で行われた性教育実践に関して、今後足立区教委に対して指導に入る予定でいるという。その後、具体的な「指導」についての情報も耳にしたが、都教委がこうした方向で動いている事実を、私は憂える。
この報道を見て思ったのは、当然、2003年に都立七生(ななお)養護学校(当時)の性教育に対してなされた当の都議ならびに都教委等による不当な介入である。
それまで同校では、知的障がいのある子どもたちに性について教えるために、教師たちが長い時間をかけて各種教材を開発してきたが(障がいのある子どもたちが性にまつわる被害者にも加害者にもならないようにするために、どれだけ涙ぐましい努力が重ねられてきたか)、この時、当の都議らおよび都教委は同教材を、なかでも人形教材を、あたかも「アダルトグッズ」であるかのように断じて持ち去ったばかりか、都教委は「学習指導要領違反」を理由に、都下の各種学校の性教育について、強い介入をくり返したのである。
都教委の介入に対して、2005年には七生養護学校の保護者や教師が立ち上がって提訴し、2008年、東京地方裁判所は「性教育教材を持ち出した」都議や都教委の行動を違法と認定し、賠償を命じる判決を出した。後に東京高裁もこれを支持し、最高裁は上告を棄却した。
七生養護学校への介入以前から、性教育に対するバッシングが目立っていたが、ことにこの介入以降、バッシングは質量ともに強まったと判断される。当時、同校から都教委が奪った人形を、下半身をあらわにして並べ、これを指弾する安倍晋三氏(当時は幹事長代理)の姿が、自民党のHP上で見られたものである。自民党政府のバッシングは多方面に及び(「ジェンダー」を使うなという言葉狩りもその一つ)、性教育は委縮し、それは悲惨な事態にまで立ちいたっていた。
田代美江子 中絶や避妊、性交を扱う性教育は「不適切」か――教育内容への政治的介入は許されない(WEBRONZA)
田代美江子 続・中絶や避妊、性交を扱う性教育は「不適切」か――自分の性行動を考え、多様性を学ぶ「性の学習」(WEBRONZA)
私自身が経験した、典型的な例をあげよう。
2004年、つまり七生養護学校に対し都議・都教委が介入した翌年、私は、くしくも今回両者が介入した足立区の――教育委員会そのものではないが――男女共同参画課から、ポルノ・買売春に関するパンフレット作りを依頼された。実際、その依頼に応じて原稿を送った。だが
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