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佐藤隆太、『アンナ・クリスティ』に出演

お芝居に対する甘えがあれば叩き直してもらいたい

木村桂子 フリーライター


拡大佐藤隆太=岸隆子撮影

 篠原涼子主演の舞台『アンナ・クリスティ』が7月に東京・よみうり大手町ホール、8月に大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演される。ノーベル文学賞受賞作家であるユージン・オニールが1921年に発表し、ピューリッツァー賞を受賞した戯曲であり、世界の名優たちが舞台や映画で生き生きと演じてきた本作。これまでオニール作品を3本手がけてきた栗山民也が演出を担い、主演の篠原は2001年の『ハムレット』、2005年の『天保12年のシェイクスピア』以来、約13年ぶりの舞台復帰作となる。

 父と娘、そして娘の恋人による濃密な人間ドラマが魅力の本作にて、佐藤隆太は主人公・アンナと恋に落ちる火夫、マット・バーク役を演じる。大阪で行われた取材会では、今回演じるマットへの思いをはじめ、篠原との共演や栗山演出への思いを語ってくれた。

自分にマット役が務まるか不安だった

記者:作品についての印象を教えてください。

佐藤:少ない人数で展開される舞台なので、セリフ量が膨大で、発する言葉もエネルギッシュで感情と感情のぶつかり合いになりますし、非常にタフな公演になるなと感じています。やはり少なからず緊張感があります。

記者:今回演じられる役、マットについてはいかがでしょう。

佐藤:“ザ・男”というかたくましくて荒々しい船乗りの役で言葉も強いので、最初は自分に務まるかなと思ったのですが、読み進めるうちに彼も繊細で、ある種女々しい一面を持っていて。そういうところをヒントに役作りをしていけたらなと思っています。

記者:女々しい一面というと?

佐藤:知りたくなかったアンナの過去がどうしても頭から離れなくて、うじうじもがいてしまうところですね。男性の方は自分の過去の恋愛を思い出して恥ずかしくなるかもしれませんね(笑)。今の時代でもきっとある、普遍的な部分を描いた作品かなと思っています。

マットのような女々しい部分は持っている

拡大佐藤隆太=岸隆子撮影

記者:女性の過去はやっぱり気になりますか?

佐藤:若い頃はそういう時期もありましたね。でも時間をかけて向き合ううちに信頼関係が生まれて、過去も忘れられる、と思いつつ……男はやっぱり女々しい部分を持っていますよね。よく人からそういう相談を受けると、「そんな過去のこと気にしないで。今が大事じゃん!」とか言うんですが、あれ、これを言える権利が俺にはあるのか? と思ったりもします(笑)。

記者:佐藤さんご自身の女々しいエピソードがあればぜひ教えてください!

佐藤:日常的なことだと、ドラマの撮影現場で、さっきの芝居はもうちょっとこうした方がよかったかな……と反省してしまいます。結局、反省しても撮り直せないんで、そんな思いは断ち切って次のシーンのことを考えた方が絶対にいいんです。「でもやっぱりさっきのは……いや、次の台本読めよ!」と葛藤してしまいます。

 あとは、街中で「写真撮ってください」って言われたんですが、ちょっと(重た目な)考え事をしてて断ったんです。でもしばらくして「断って大丈夫だったかな……」って、考え事より断った事のほうが気になってしまって。結局、その人を探しに戻って「やっぱり撮りましょう」と言ったんです。でもその人にとっては一度終わった事なので、「(困惑した感じで)ああ、じゃあ……撮りましょうか?」という風になったり(笑)。

心の動きがしっかり伝わるようなお芝居にしたい

拡大佐藤隆太=岸隆子撮影

記者:過去の映画や舞台は拝見されましたか?

佐藤:映画を観始めたんですが、途中でやめました。というのも、脚本が出来上がって、ある程度自分の中に役が入ってから観ないと、映画のイメージに引きずられるなと思ったんです。マットが登場してからしばらく観続けていたんですが「やっぱり後にしよう」と思って。自分の中で、役についてなんとなくこういう形かなと思い描けた段階で観直したいなと思います。

記者:心の動きがとても激しい役柄ですが、どのように演じたいと思っていますか?

佐藤:すごくうねりのある作品ですが、マットがやってることはシンプルなんです。アンナに「お前なんか最低だ、この野郎!」と言いながらキスしちゃったり、でもまた「最低だ!」となったり(笑)。アンナに近づきたいと思いつつやっぱりダメだというのが繰り返されるので、そんな中でも“これをきっかけにアンナに近づきたいんだな”ということがちゃんと伝わるようなお芝居にできたらと思っています。

稽古が始まって篠原さんにがっかりされないといいな(笑)

拡大佐藤隆太=岸隆子撮影

記者:アンナ役の篠原さんとは本作で初共演となりますね。

佐藤:じつはこのお話をいただいた直後、篠原さん主演映画での共演のお話をいただきまして。『アンナ・クリスティ』で篠原さんとご一緒できると喜んでいたんですが、先に映画の現場でご一緒させていただきました。篠原さんとも、「今年はご縁ありますね」なんて言って。その時にスタッフの皆さん含めて食事に行きまして、ゆっくりお話しさせていただきました。この舞台に向けてすごくいい機会をいただけたかなと思っています。

記者:篠原さんの印象を教えてください。

佐藤:この作品のビジュアル撮影で初めて一緒にカメラの前に立たせてもらったんですが、すごく刺激的で楽しかったですね。大先輩ですし緊張もあって「こうしましょう」なんて最初は話せなかったんです。でも、距離が近かったので慣れてくるといろいろ試せましたし、短い時間でもすごく刺激的でしたので、長い時間ご一緒できるのはますます楽しみになりました。篠原さんにも「楽しかったです」と言っていただけたので、稽古が始まってがっかりされないといいな、と思っています(笑)。

記者:アンナという女性はどんな女性だと捉えていますか?

佐藤:魅力的な女性だなと思いましたし、そのアンナを篠原さんが演じられると思うとワクワクします。辛い環境に立たされていますが、芯がしっかりした女性なので逞しくも感じます。傷を負ってしまった部分を含めて、すごく人間くさいというか。マットは彼女の過去に対して拒絶してしまいますが、反対にそういうところも含めて惹かれてしまう部分もあり……。人間力の強い女性だなと思います。

本作への出演で、役者としてもっと引き出しを作りたい

拡大佐藤隆太=岸隆子撮影

記者:今回初めて栗山さんから演出を受けますが、楽しみにしていることを教えてください。

佐藤:舞台でデビューさせていただいてあっという間に20年近く経ちましたが、舞台は自分の至らなさが出てしまうところだと思っているのですごく怖いですし、毎回お話をいただくとすごく嬉しい反面、ひるむんですよね。でも、これからも役者としてお仕事を続けさせていただく中で、もうすぐ40代にも差し掛かりますし、もっと引き出しを作らなきゃいけないなと思っています。舞台という世界の大先輩である栗山さんとご一緒させていただくことで、イチから見つめ直して、お芝居に対する甘えみたいなものがあれば叩き直してもらいたいですね。怖いですが(笑)。先輩の役者さんにも「どんな感じの方ですか?」って聞いて回っちゃったりして(笑)。皆さん「やさしくて、刺激的な稽古場」だとおっしゃっていたので、すごく楽しみです。

記者:本作に出演することで、どのような引き出しができるとお考えですか?

佐藤:具体的な何かではなくて抽象的になってしまうんですが、毎回どんな作品であれ1歩ではなくても半歩は成長したいなと思っています。でもその実感を持つことはすごく難しいんですよね。過去を振り返って成長したなと思えるのって、苦しい思いをした時が多いんです。自分にとって『アンナ・クリスティ』は怖さのある作品で、その中で成長する実感を珍しく欲しがっている自分がいるんです。どのくらいの歩数かわからないけれど、後で振り返った時に何か残るものが欲しいなと思っています。

記者:では最後に公演を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。

佐藤:篠原さんが13年ぶりに舞台に立たれます。とても素敵な方で、そんな篠原さんを生で観られる機会はなかなかないと思いますので、ぜひお楽しみにしてください!

◆公演情報◆
『アンナ・クリスティ』
2018年7月13日(金)〜7月29日(日) 東京・よみうり大手町ホール
2018年8月3日(金)〜8月5日(日) 大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
公式ホームページ
[スタッフ]
演出:栗山民也
[出演]
篠原涼子、佐藤隆太、たかお鷹、立石涼子、原康義、福山康平、俵和也、吉田健悟

筆者

木村桂子

木村桂子(きむら・けいこ) フリーライター

1982年生まれ。ファッション誌や情報誌などの編集を経て、エンタメ系週刊誌の編集部に長く在籍。2014年に独立し、現在は大阪在住。エンタメをはじめ観光情報誌や公報誌など、さまざまなジャンルで執筆中。

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