30代で大関、横綱となれば史上初の快挙
2018年06月12日
栃ノ心はジョージア(旧グルジア)出身の30歳。2017年まで「大関候補」の声を1度もきいた記憶はないが、2018年初場所で平幕優勝(14勝1敗)を果たす。平幕優勝力士の多くは、翌場所関脇で大敗するケースが多く、史上最年少で幕内最高優勝の記録を打ち立てた第65代横綱2代目貴乃花でさえも、5勝10敗と上位陣に跳ね返されてしまった。
ところが栃ノ心は違った。春場所は10勝5敗という好成績で、夏場所は大関昇進を懸ける場所となった。本年初・春場所の通算成績は24勝6敗なのだから、9勝をあげるだけで、大関昇進の目安とされる3場所合計33勝に達する。
夏場所前に両国国技館で開催された横綱審議委員会稽古総見では、第72代横綱稀勢の里を相手に2戦2勝。確実に力をつけており、どちらが横綱なのかわからないほどの取り口だった。栃ノ心の四つ相撲は、完成の域に近づいたと言っていいだろう。上手をとってからの引きつけの力が強くなった。
私は栃ノ心の相撲を見て、「11勝以上なら大関昇進は確実」と見た。初場所で優勝していることもあり、9勝では物足りないこと、1度優勝したことで、「ほかの大関よりも昇進のハードルが高くなる」とにらんだからだ。
夏場所は初日から12連勝。惜しくも本場所15日制初の関脇全勝優勝を逃したが、13勝2敗という好成績で大関を手中に収めた。直近3場所の37勝8敗、勝率8割2分は、第71代横綱鶴竜の38勝7敗、勝率8割4分に次ぐ好成績で、まさに横綱に匹敵する。
栃ノ心は今まで“チャレンジャー”という立場だった。上位戦(横綱、大関)の勝利、早い勝ち越し、三賞受賞などの場合、NHKの大相撲中継でインタビューを受ける。いわば、自身の名と顔を視聴者に売り込めるという“待遇”がある。
しかし、これからは優勝しない限り、中継内のインタビューがないほか、大関以上は常に優勝争いをしなければならない立場なので、“勝って当たり前”という目で見られる。
近年の大関を見ると、豪栄道は大関在位23場所中、優勝1回。しかし、2ケタ勝利はわずか3場所、休場4回。ケガなどの影響により、大関昇進後は低迷が続いている。
高安は大関在位6場所中、2ケタ勝利は2場所、休場3回。体重の増加により、ケガが多くなった印象を受ける。同じ部屋の第72代横綱稀勢の里ともども、増え過ぎの感がある(稀勢の里は体重の増加で、動きが鈍くなった)。いまだ優勝がなく、現時点では栃ノ心より格下の大関と言える。
2018年初・春場所とも、優勝次点となる12勝3敗をあげ、夏場所で優勝すれば第73代横綱推挙の可能性もあったが、休場により事実上、一から出直し。名古屋場所以降、この成績を持続できたら、将来は頂にのぼり詰めるだろう。
一方、栃ノ心は
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