青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト
1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
若妻嬢、お手伝いさんに覚醒剤。いかにもなにかありそうだが……
やはり衝撃だったのは、NHKの夜7時のニュースのトップ(確か)で「紀州のドン・ファン」という言葉がアナウンサーから発せられたことと、そのニュースの中でデヴィ夫人のインタビューが流れたことである。
今さら、NHKがお固いテレビ局だなんて言う人もいないだろうけど、NHKの定時のニュースってのはそれなりに威厳のあるもんじゃないかと思ってしまうというのが昭和生まれの悲しさ。それでも、のっけから「紀州のドン・ファン」&「デヴィ夫人インタビュー」ほど「NHKのニュースもついにそこまで……」と思ったことはなかった。
つまり、2018年のこの時まではぎりぎり威厳を保ってたということか。ここが蟻のひと穴となってザザザザと崩れていく……ってこともないだろうが、私はNHKの7時のニュースにおける歴史的一日としてこの日を忘れない(と言いつつそのニュースの日付がもうわかんなくなっています。すみません……)
で、紀州のドン・ファン氏だが、このニュース全体に漂うエロ臭。それも、生臭い、しかし懐かしいようなエロ臭。何かこう、たまらずひきつけられて、ついクンクン嗅いでしまう傷口のウミみたいな匂いである。
何しろ、まず紀州。田辺。地方都市で、けっこうイナカで、そして関西圏。
主人公のドン・ファン氏は「女を抱くために金を稼いだ」と豪語している。こういうタイプのおっさんの場合、関西弁か東北弁だと、臭さが増して話がますます熟成してくる。というか、読む側の脳内で勝手に熟成されていく。
そしてドン・ファンのルックスが、割と愛嬌があって、どっちかというとオバチャンぽい顔である。ここでさらに下世話さが増す。
さらに、50歳以上年下の若妻さん。
この若妻嬢、いい具合に露出しつつ、いい具合に何も言わない。いわば「顔のない、イメージとしての、カネに目がないチャラチャラしたギャル」という、観客(われわれ)のゲスな好奇心をかきたてる。そして、
「ドン・ファンは果たして若妻と
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