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みんな卓球に夢中!なんて知ってましたか?

“元卓”がピンポンマーケティングの最先端を行く

菊地史彦 ケイズワーク代表取締役

伊藤美誠拡大伊藤美誠選手
張本智和拡大張本智和選手

 6月の卓球・ジャパンオープン荻村杯では、14歳の張本智和選手と17歳の伊藤美誠(みま)選手がそれぞれ中国の強豪を破ってシングルスの男女アベック優勝を勝ち取った。威勢が良いのは競技の卓球ばかりではない。2016年リオオリンピック以来の卓球人気は、幅広い世代にピンポンブームを巻き起こしている。

50年ぶりの卓球トレーニング

 中学の3年間と高校の2年間、卓球部にいた。遥か1960年代のことである。

 中学ではバスケットボール部に入るつもりだったのだが、体育館に練習を覗きにいってやめた。でかいコワモテのお兄さんたちが、床をバッシュ―できゅっきゅっと鳴らしながら走り回っているのを見てビビったのである。その体育館の奥の方で、ひっそりと小さな白球を打っている人たちはもう少し優しそうだった。だからそっちを選んだ。

 高校ではサッカー部に入ろうと思っていた。天才釜本・韋駄天杉山に魅せられたからだ。同じクラスで知り合ったばかりのU君と一緒に練習を見にいった。ところがこのU君というのが中学サッカー界の有名選手。泥だらけの先輩たちが、「おおU君か、待ってたぜ」と猫なで声を出すのを聞いてイヤになった。行き先はやっぱり、体育館の奥の卓球部だった。

 つまらない私事で申し訳ないが、学校スポーツにおける(かつての)卓球のポジションをそれとなく示しているような気がして書いてみた。正直にいえば、私にとって“元卓”は長らくカミングアウトのようなものだった。

 そんな私が今春、50年ぶりに卓球を再開した。実はこの背景には、今回のテーマである「卓球ブーム」があるのだが、本人は気がついていなかった。張本智和選手や伊藤美誠選手の活躍にあやかってというのは冗談のようで、けっこう当たっている。彼らが発散するアスリートフェロモンにくらくらっときたのだ。

 近くの市民スポーツセンターで毎週行われる卓球教室に申し込み、同時に個人指導をしてくれるスクールも探した。せっかくなら、打球感覚を多少は取り戻したい。もつれそうな足もしゃんとさせておきたい……。こうして私の二度目のピンポンライフがよろめきつつ始まったのである。

 もちろん、やってみると、す・ご・く・た・の・し・い! ボールを弾く乾いた音が脳を心地よく刺激してくれる。思っていたより軽快に打てるのは、半世紀の間にラケットとラバーが格段に進歩したからだが、まずは上々のピンポン再デビューだった。

おお、これが卓球酒場!

 さてこのあたりで、ようやく本題が始まります。

 ひょんなことから「卓球酒場」の存在を知った。実はごく最近のことである。G社の女性編集者が「ウチのそばにあるわよ」というその店は、「卓球酒場ぽん蔵 西荻窪店」。要はお酒と食事を楽しみながら、球も打ち合うところらしい。私もWEBRONZAのTさんも、そんな話は聞いたこともなかった。

 ちなみに「ぽん蔵 西荻窪店」の開店は2006年。その後、吉祥寺、渋谷(現在は2店舗)、高田馬場と多店舗展開を行っている。また「中目卓球ラウンジ」も同様のコンセプトの老舗で、中目黒本店の他に川崎や横浜、札幌に店を出している。

 調べているうちに渋谷地区が、この手の店のメッカらしいことが分かってきた。先の「ぽん蔵」に加え、「EST 渋谷東口会館」や「バグース 道玄坂店」などが渋谷駅周辺に点在している。店の様相も居酒屋風からカフェバー風まで多彩である。卓球台の他に、ダーツやビリヤードも備えて、飲食と遊戯を同じ空間で楽しませるという趣向である。

 さっそく「ぽん蔵 渋谷店」を訪ねた。井の頭通りのビルを6階まで上がると、比較的早い時間にもかかわらず、7割ほど客が入っている。フロアの奥に卓球台が1台据えてあり、若い男女がミックスの熱戦中だった。たぶん男性と女性の一人ずつは“元卓”。相手の浮いたボールをピシッと容赦なくスマッシュ! 打った方はガッツポーズ、打たれた方は呆れ顔。おおなるほど、これが卓球酒場か。

ぽん蔵 渋谷店=撮影・筆者拡大「ぽん蔵 渋谷店」=撮影・筆者
 メニューも手頃な価格で、高校時代の卓球部のN君とふたりで、そこそこ食べて飲んでひとり3000円。夕方、別の場所で2時間打ち合ったので、「ぽん蔵」では飲食のみ。高齢者が飲んでから打つのはちょいとキケンだしね。

 2012年から店長を務めている佐藤尚渡(なおと)さんに話をうかがうと、「お客さんの中心は20代の半ばから後半。みなさん、勝手に飲んで食べて、遊んでますね。そういう自由きままさがウケているんだと思います。とにかく合コン利用がすごく多い。飲食だけでは間が持たないから、ちょうどいいんじゃないでしょうか」とのこと。

卓球はカッコいいスポーツ!?

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筆者

菊地史彦

菊地史彦(きくち・ふみひこ) ケイズワーク代表取締役

1952年、東京生まれ。76年、慶應義塾大学文学部卒業。同年、筑摩書房入社。89年、同社を退社。編集工学研究所などを経て、99年、ケイズワークを設立。企業の組織・コミュニケーション課題などのコンサルティングを行なうとともに、戦後史を中心に、<社会意識>の変容を考察している。現在、株式会社ケイズワーク代表取締役。国際大学グローバル・コミュニケーションセンター客員研究員。著書に『「若者」の時代』(トランスビュー、2015)、『「幸せ」の戦後史』(トランスビュー、2013)など。

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