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調理器具のCMって、逆効果なのでは…

青木るえか エッセイスト

料理を美味しそうに見せるのは難しい(写真は本文とは関係ありません)拡大料理を美味しそうに見せるのは難しい(写真は本文とは関係ありません)

 ふつうテレビに出てくる食べ物は「美味しいもの」として出てくる。グルメ番組料理番組。それでもときにゲテモノ料理でスタジオをキャーとか言わせたり、「こりゃ食えねーよ!」という感想を引き出すためのものもある。

 テレビを見ながら「うへえ、まずそうだなこりゃ」と思いながら画面の中の食べ物を見つめる。妻がまずい料理を出してうんざりする夫がやがて妻から心が離れて浮気を……というようなドラマであればそれは必要な描写だ。あとは、大食い番組で用意される、うんざりするほど大量の食い物も、美味しく見えなくてもいいものだろう。そう、必ずしも美味しくなくてもいい、テレビの食べ物。

「視覚最優先」は当然だけど

 しかし、何がどうあっても美味しく見えなければいけないテレビの食べ物というのがある。それは、

 「調理器具のコマーシャルにおける食べ物」

 これがまずそうだと、調理器具を買おうという気にならないから、ぜったい美味しいものができるように撮らないとダメだ。

 そして、私はかねがね「テレビで見る食べ物でいちばんまずそうなのは調理器具のCMに出てくるやつだ」と思っているのである。

 もちろん、有名家電メーカーの石窯電子オーブンレンジとか、そういうやつは、きっちりつくりこまれスタイリングされて「美しくうまそうな料理」を皆様に見せつける。きっと電通か博報堂か知らないが有名広告代理店に有名アートディレクター有名スタイリストが寄ってたかって、うまそうにつくってある。

 料理本の編集者の言によれば、カメラ映りのいい料理というのは往々にして味はめちゃめちゃだったりするらしい。過剰なテリをつけるために油が多すぎたり調味料が多すぎたりというような。それでも、「カメラで味わうことはできない。視覚最優先。とにかく見栄えの良さによって購買意欲をかきたてる」になるのは当然だろう。

 それなのに。テレビの、調理器具のコマーシャルで、すっごくまずそうな食べ物を出すものがある。

揚げ物も炒め物も鍋料理も…

 ここで、特定の製品や企業のことを言うと差し障りが出るらしいのでざっくり書いてみると、

 「スタジオでタレントを相手に料理つくって見せて、なんと●●円!と驚かせて電話申し込みの通販で買わせる調理家電のコマーシャルに出てくる、そのつくってる料理がすごくまずそう」

 なのである。

 最近よく見かけるのは、油をあんまり使わないでヘルシーに揚げられるフライヤー。

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筆者

青木るえか

青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト

1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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