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神田沙也加、『マイ・フェア・レディ』出演

憧れの主人公イライザ役に挑戦

真名子陽子 ライター、エディター


拡大神田沙也加=岸隆子撮影

 不朽の名作『マイ・フェア・レディ』が上演される。1963年に日本人が日本語で上演した初めてのブロードウェイ・ミュージカルで、ロンドンの下町の花売り娘・イライザが、ヒギンズ教授の教育により社交界の華として生まれ変わるシンデレラストーリーと珠玉の名曲の数々は、時代を超えて愛され続けている。

 主人公イライザを演じるのは、宝塚歌劇団退団後初のミュージカル出演となる元宙組トップスターの朝夏まなととミュージカル『キューティ・ブロンド』で菊田一夫演劇賞を受賞した神田沙也加。神田沙也加の取材会が行われ、憧れ続けた本作品への思いを語ってくれた。

夜道で泣きながら真央さんと話した

神田:『マイ・フェア・レディ』は女優としてやってみたいという作品であったのと同時に、ミュージカルファンとして一番特別と言っても過言ではない作品で、今こうして自分のビジュアル写真があって、自分が出演する作品としてお話しできることをとてもうれしく思っています。

記者:どのあたりが特別なのでしょうか?

神田:やはり、何を語るにしても出てきてしまうんですけれども、敬愛する大地真央さんが以前イライザ役をされていて、ずっとファンとして観てきました。真央さんのイライザが私の中では完璧なので、自分がいつかやってみたいとは言えなかったんです。こっそりと憧れ続けている特別な作品であり、真央さんが演じられているのを観るのがとても好きな特別な作品でもある。そういう二つの意味があります。

記者:出演が決まった時、大地さんには?

神田:すぐに言いました!(笑)。出演が決まったことを聞いたのが、『キューティ・ブロンド』の稽古場でしたので、その帰り道に電話しました。そうしたら真央さんが泣いてくださって、私も話しながらまた泣いて……夜道で泣きながら真央さんと話したという、すごく良い思い出ができました(笑)。

記者:何か大地さんから言葉をいただきましたか?

神田:まずは沙也加が思うイライザを作ればいい。でも何か悩んだ時やできることがあったら何でもするから、必ず声をかけてと言ってくれました。

ターニングポイントになる役に絶対にしたい

拡大神田沙也加=岸隆子撮影

記者:イライザについて、今のところどういう風に捉えていますか?

神田:彼女の中に上昇志向がマグマのようにあると思うんです。そういうものを持ちながらも、自分の至らなさに落ち込みながら毎日を過ごしている。でも後ろ向きに過ごしているかと言ったらそうではなくて、男勝りに楽しそうに歌ったりするシーンもありますので、楽しくは暮らしているんですよね。けれど、自分のコンプレックスやウィークポイントを突かれた時に、そのマグマのように持っていた上昇志向が爆発する――そういう何層にもなっている女性かなと思います。

記者:ヒギンズ教授とイライザの関係についてはいかがでしょう?

神田:最初に観た10年以上前と今では全然捉え方が違います。恋愛に寄りすぎることもなく、やはりイライザにとってヒギンズ教授は師であると思います。でも後半、淑女になったイライザがヒギンズ教授に教えるところも多々ありますので、お互いにとって師であるという関係性じゃないかなと思います。もしかしたらパワーバランス的に、イライザが思っているより早い段階から、イーブンなのかもしれませんね。

記者:イライザ役についてどのように自分の個性を生かしていこうと思っていますか?

神田:もうちょっとできたかなというような悔いを残したくないと思っています。真央さんは長く続けていらっしゃいましたけれども、私もターニングポイントになる役に絶対にしたいと思っています。ダブルキャストの朝夏さんは宝塚歌劇団の出身ですが、私は劇団などには所属したことがなく、ルールの中でアカデミックにやってきていないので、思いついたことを何でもやってみるという、フリーダムさの強みというのを生かしたいなと思っています。

記者:イライザはこう作らなきゃいけないというのがない?

神田:そうですね、こうであって欲しいというのはすごくあるんですけれど。皆さんも登場人物に対して、こういう人なんじゃない?って思いながら観ることがあると思うんです。今まではそういう思いに近づけるような、多くの方に共感してもらうような優等生的な正解を出そうと役作りをしてきました。ただ、イライザに関しては好きという思いがある分、私はこういうイライザだと思っている、という風にプレゼンテーションをしてもいいのかなと思っています。

やっぱりマイフェアはマイフェアだな

拡大神田沙也加=岸隆子撮影

記者:日本初演から55年も愛されている作品です。神田さんが思うこの作品の魅力というのはどういうところにあると思いますか?

神田:毎年たくさん新作が制作されていて、作っているクリエイターの方も私たちの年代と近くなってきています。これからのミュージカルシーンでは、どんどん最先端の技術などが取り入れられる傾向になっていくんじゃないかなと思うんですね。そんな中、今回新しく携わる人たちも含めて、みんなが『マイ・フェア・レディ』のクラシカルさを絶対に死守しようというこだわりと信念を持っています。その変わらない、古さという意味ではないクラシカルさ――どんどん新しいものは増えていきますし、どんどん時代は変わっていくんですけれども、変わらないクラシカルさが良いんだと思います。久しぶりにリボーン版を観た時にタイムスリップしたような気がしたんですよね。その時に、やっぱりマイフェアはマイフェアだなって思いました。

記者:イライザのようにこういう経験があったから大きく変われた、成長できたという出来事はありますか?

神田:近年ありがたいことに、やりたいと思う役をさせていただく機会に恵まれています。長く女優でいたいという気持ちが出てきてから、その日々を構築していく助けになっているのは、『キューティ・ブロンド』で主演をやらせていただいたことですね。賞もいただいてすごく気が引き締まりましたし、よくできましたという判子をもらったような気がしましたので、あの経験は大きかったと思います。

記者:賞という形で実力を認められたこのタイミングで、やりたかった作品に出演する。自信を持って挑めるのではないでしょうか?

神田:本当におっしゃる通りですね。それを自信に変えなくてはいけないと思います。どうしても恐縮してしまいがちになってしまうんですけど……。チケットを買って観に来ていただきますので、自信がないままでは許されないなというのを再確認できた出来事でもありました。そして菊田一夫演劇賞ということもとても大きいですね。『マイ・フェア・レディ』を初めて日本で演出されたのが菊田一夫さんです。そのおかげで今回『マイ・フェア・レディ』を演じることができます。賞をいただいた年にイライザ役をさせていただけることはすごくうれしいです。

朝夏さんの柔軟さはトップスターとして積み重ねてきたもの

拡大神田沙也加=岸隆子撮影
記者:ヒギンズ教授役を演じられる別所哲也さんの印象は?

神田:非常に紳士な方です。その紳士な別所さんが、劇中で紳士に扱ってくれなくてプリプリ怒るという、絶対にありえない紳士な別所さんを見られるのがすごく楽しみです。今も力不足なところは多々ありますけれど、以前共演させていただいた作品がとても重くて楽曲も複雑なものが多く、たくさん心配をかけたと思うので、今回はちょっと頼もしくなったなと思ってもらえたらなと思います。

 そして、聞くところによると別所さんも憧れの役だったということですので、そのあたりを一緒にお話したいなと思っています。憧れの役同士でお会いできるってすごくうれしいことじゃないですか! 奇跡が二つ集結しているので、作品について語り合いたいなと思っています。

記者:ダブルキャストの朝夏さんについてはいかがですか?

神田:作品についてのお話はまだできていないんですけれども、自分が出ている作品を観に来てくださって、ダブルキャストの私のことを知ろうとしてくださっているお気持ちを感じました。制作発表記者会見の時も、いろんな舞台を踏まれてきているのに、すごく緊張するねと話しかけてくださったり、とても身近にいようとしてくださっています。

 身長も全然違いますし、持っている雰囲気も違いますから、まったく違うイライザになるんじゃないかなと思いますね。朝夏さんからたくさんのことを学びたいと思いますし、でも追いかけているだけじゃだめだとも思っています。そういう意味では、話し合いながら励まし合いながら、本番ではそれぞれが独立したイライザで会いたいなと思います。

記者:朝夏さんは退団して初めての女性役デビューです。稽古場で神田さんが何か教えるというようなことは?

神田:ないです、ないです、とんでもない!!(笑)

記者:女性役の所作など!?

神田:所作と言うと、制作発表の時にパラソルはどうやって持ったらいいの?とか、どう立ったらいいか?を、この私に聞いてくださるというのがオープンハートな方だなと思いました。私に聞いてくださるということが、本当にお優しいなと思いましたし、そういうところは自分も無くしちゃいけないところだなと思いました。

記者:素直に教えを請うこと?

神田:はい。自分も年下の子に「どうしたらいいの?」「これ綺麗に見える?」と聞いていく気持ちを忘れないようにしたいです。朝夏さんはいろんな知識やいろんなテクニックを持っていらして何でもできるのに、人のアドバイスを聞いてくれるんですよね。その柔軟さは、やはりトップスターとして積み重ねてきたものなんだろうなと思います。

言葉のトリックを発掘して、巧みに表現したい

記者:以前、歌声には多彩な表現があるので声の質感を大切に整えたいとおっしゃっていましたが、それから何か新しい変化はありましたか?

神田:最後列の方が受け取れる情報量は、キャパシティが広くなればなるほど、どれだけ表情でお芝居をしても限界があります。そういう時に歌を聞いて「ああ、こういう気持ちでこういう流れになったんだ」と受け取ってもらって、言ってしまえば最前列の方と同じ情報量で楽しんでもらえるように、私たちはコントロールしなきゃいけないと思っています。

 どうしても歌のことを考えがちですけれども、セリフひとつにしてもそうですよね。一つの言葉を聞き逃したことによって流れがわからなくなったり、登場人物に寄り添えなくなったりという経験が自分にもあるので、そういうことは経験してほしくないという気持ちがあります。あと、声のお仕事を何度かやらせていただいて、日本語についてとても勉強になりました。そういう意味では『マイ・フェア・レディ』は言語を扱う作品でもありますので、言葉の面白さというかトリックをいっぱい発掘して、巧みに表現できればと思っています。

◆公演情報◆
2018年9月16日(日)~9月30日(日) 東京・東急シアターオーブ
2018年10月6日(土)~10月7日(日) 福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール
2018年10月10日(水)~10月11日(木) 広島・上野学園ホール
2018年10月19日(金)~21日(日) 大阪・梅田芸術劇場メインホール
2018年10月24日(水)~10月25日(木) 愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
2018年10月31日(水)~11月1日(木) 大分・iichiko 総合文化センターiichikoグランシアタ
公式ホームページ
[スタッフ]
脚本/歌詞:アラン・ジェイ・ラーナー
音楽:フレデリック・ロウ
翻訳/訳詞/演出:G2
[出演]
朝夏まなと/神田沙也加(Wキャスト)、寺脇康文/別所哲也(Wキャスト)、相島一之、今井清隆、平方元基、春風ひとみ、伊東弘美、前田美波里 ほか

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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