青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト
1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「お前のシケたツラを見てるとメシがまずくなる!」
と、酒乱の亭主がちゃぶ台をひっくり返すという場面がある。横暴な亭主が生活に疲れた妻(ひっつめ&後れ毛)に向かって怒鳴ったあと、パチンコにでかけたりするというベタな場面である。今どきのドラマでもこういう場面にこのセリフはつきものだ。
ひどいセリフだが、一面の真理を突いてるからだろう。
一緒に食べてると食欲がなくなる人、というのは確かにいる。
しかしそんな人のことを細かく書いていると気分も暗くなるので、その逆の人のことを考えてみたい。
一緒に食べていると美味しくなる人だ。お前と一緒にいるとメシがうまくなる!と亭主も喜ぶような、そういう人。
ズバリ、日本でいちばん「一緒に食えばうまくなる人」は、ぐっさんだ! 山口智充!
土曜朝のワイドショー『にじいろジーン』(関西テレビ制作、フジテレビ系)を見ていてそのことに気づいた。
土曜のワイドショーってのは、事件事故を扱わない、ぬるいほのぼの番組で面白くもなんともないのだが、他に見るものがないからしょうがなく見ていた。
その中で、ゲストがどっかに行って何かやるのにぐっさんがついていって一緒にやる、というコーナーがあった。まさにぬるいワイドショーにふさわしいコーナー!
その日はアウトドアでちょっとした料理をつくって食べる、みたいなやつで、まあキャンプ飯的なもの。卵をほぐしてスクランブルエッグみたいにしたら、それをアルミホイルで包んでさらに焼いたらいい感じにオムレツになる……みたいな。
アウトドア料理というのは、とにかく大きな焚き火、大きな火力、大きな鍋やフライパンや鉄板、大きな具材で勢いにまかせてつくることが「美味しそうに見える」ものだ。あとは、どちらかというと夕暮れから夜にかけての撮影のほうがいい。ハムのCMで焚き火にハムかざしてパチパチやってたやつなどを思い出すと納得できる。
ただし夕暮れにそういう場面を撮るとなるとカメラもいいものじゃないとダメだし、ライティングにもそれなりの機材が要求されるんではないか。
で、まあ、『にじいろジーン』のそのキャンプ飯は、まっぴるま、チマチマとしたキャンプグッズによる調理であり、はっきりいってそれほどうまそうにも見えないものであった。そもそもその料理をつくる人は料理のプロでもなく、別に料理のうまさをそこで見せたいわけではなく、「アウトドアで楽しくやってるよー」という画作りのために、ちらっと出てきたにすぎない場面なわけだ。
しかし。