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スタジオライフ演出家・倉田淳×藤原啓児/上

『カリフォルニア物語』を「Next GENERATION」で上演

真名子陽子 ライター、エディター


拡大左から、倉田淳、仲原裕之、藤原啓児=冨田実布撮影

 劇団スタジオライフ『カリフォルニア物語』が、7月20日(金)から東京・THE POCKETにて上演中だ(8月5日(日)まで)。脚本・演出の倉田淳と役者であり劇団代表の藤原啓児に話を聞いた。10年前の初演時のことや、今回「Next GENERATION」として上演する理由、またキャスティングした役者への思い。そして、長年、一緒に劇団を支え、作品を上演してきた二人だからこそ語ることができる創始者・故河内喜一朗のことを交えて、愛情たっぷりに語ってくれた。

そろそろ本腰を入れて次なる世代を育てていきたい

――『カリフォルニア物語』は10年ぶりの再演です。今回、上演しようと思った理由は?

倉田:今年で劇団は33周年なんです。Jr.1の役者たちが1995年の12月に入ってきてくれて、気が付いたらseniorやJr.1が年をとっていて……(笑)。彼らはお客さまのおかげでキャリアを積ませていただきましたから、そろそろ本腰を入れて次なる世代を育てていきたいと思い、若手を中心にした公演をやろうと思いました。それで演目をどうしようと考えた時に、若い役者たちが自分の気持ちに即したところで、分かりやすく共感を持ち得る作品ということで、『カリフォルニア物語』にしました。吉田秋生さんが描かれた原作の軸がしっかりしているので、絶対にいいなと思って。

――どういう物語なんでしょうか?

倉田:1975年にベトナム戦争が終わりましたが、その後78年から吉田さんが描き始められた作品です。ベトナム戦争のことはとくに出てこないんですけど、ドラッグがあちこちで売買されたり、病めるアメリカといわれた時代。立派な家庭で育ったんだけれど「自分は何者でもない」という強いコンプレックスを持って、あがき苦しむ高校生のヒースが一人旅に出ます。いろんな人に出会うなかで、今までになかった価値観に出会って影響され、人間が生きるうえで大事なものは何か、生きる意味は何か、というものを感じ取りながら、一歩を踏み出す……。でも、立派に踏み出してるわけじゃないんです。まだ混沌の中にいるんだけれど、とりあえず一歩踏み出すという行動に結びつく――。

 吉田さんはこの作品を20歳の時にお描きになられたんです。やはり天才の方たちはすごいなと思います。1995年頃から少女漫画に目覚めて、いろんな方に、「これ、おもしろいよ」と教えていただいた中に吉田秋生さんのお名前がありました。読んだ時にキラキラした世界じゃなくて、ハードで乾いていて面白いなと思ったんです。吉田さんの人間の見方がすごく好み、というと傲慢な言い方ですけど、好みなんです。

初演は稽古場で青春群像劇があった

拡大倉田淳(左)と藤原啓児=冨田実布撮影

――藤原さんは10年前に出演していました。当時を振り返ってみていかがでしょう。

藤原:20歳でこれだけの作品が描けるんだと驚きましたね。例えばヒースという人物に没頭していくと、物語がぐしゃぐしゃになる可能性があるんですよ。それをイーヴやインディアンといった魅力的な脇役をいっぱい登場させて、そのいろんな人間関係のバランスの中、結果的に乾いた状況でひとりの人間が成長していく――これはすごいなと。それを40歳くらいの人が描くなら分かるけど、20歳だったらひとりの人物に没頭していくじゃないですか。そうなっていないんだってことが、この作品に対するファーストインプレッションです。

 公演は初舞台の人がたくさん集まったんです。オーディションをしまして、事務所預かりの人たちが10数人いました。発声練習もしたことがない、舞台に立つことすら初めての人たちだったんです。

――なるほど。

藤原:素質としての感性はちゃんと持ってるんです。人と関わることの感覚などは持ってるんですけど、やはり舞台は素人ではできないんですよね。その経験の一部を約2カ月でどこまで叩き込むことができるかが僕の仕事だったので、そっちの記憶が……(笑)。でも楽しかったんです。それこそ稽古場で、皆がヒースのように成長していくという青春群像劇があったんですよね、2カ月の間に。

――ちなみに、劇団員の方じゃなくても、倉田さんのダメ出しはバンバンあるんですか。

藤原:それはもちろんです。倉田は信頼関係を築くのが早いんです。稽古場で信頼関係を築いちゃうと、もう劇団員に負けないくらいばばばばっと言って、あとで僕がフォローする、みたいなね(笑)。人生のダメ出しまで入ってくるので、慣れてないとめげるんですよ。「言いたいことは、そういうことじゃないんだよ」って話をして。それも楽しかったですけどね。

1000の言葉を尽くすよりも、ひとつのメロディ

拡大倉田淳=冨田実布撮影

――物語に歌を入れるというのは、倉田さんが考えられたんですか?

倉田:心情を話す言葉を綿々と言っていたら、台本のページと言葉数だけが増えていきます。ならばひとつの心情を歌にしてぎゅっと凝縮したほうが話は進みやすくなるし、100の言葉、1000の言葉を尽くすよりも、ひとつのメロディってよく思うんです。こういう心情なんだ、って歌を歌う役者たちも、そこにすっと情感が寄っていくんです。セリフで10ページも費やすところを、1曲で進めたりできるので。それに青春グラフィティに音楽はやっぱり欠かせないですよね。

――「生きる意味を問う」は、倉田さんからよく聞く言葉です。なぜ、そこに惹かれるのですか?

倉田:確かにいつも言ってますね。なんでだろう……良い小説や芝居は、やはりそこへ連れていくんですよね。そして自分のことは置いといて、この登場人物たちはこうやってレゾンデートルを探しているんだなって思うんです。人の人生だとそう思えるんです。そこに意味を見いだそうとしてしまうんですよね(笑)。

藤原:というか、人間・倉田淳としての根本だと思うんです。人間って誰でも生きがい感って必要じゃないですか。レゾンデートルって言いましたけど訳し方はいろいろあって、生存意義という意味があります。倉田は少女時代からそういうことを考えていたんだなって話を聞いていて思います。だから、脚本家として作品の中にそれを見出していくのは当たり前のことだと、30年付き合っていて思いますね。オリジナル作品をやっている時からずーっと言ってましたよ。原作物をやりだしてからも同じ、変わらないです。生きがい感はやはり必要で、みんなが無意識のうちに模索しているものだから、共感してもらえるのかなと思います。そして名作と言われる作品は、そこを必ず押さえてるんです。

◆公演情報◆
スタジオライフ『カリフォルニア物語』
2018年7月20日(金)~8月5日(日) 東京・THE POCKET
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:吉田秋生「カリフォルニア物語」(小学館刊)
脚本・演出:倉田淳
[出演]
仲原裕之、宇佐見輝、澤井俊輝、若林健吾、千葉健玖、吉成奨人、伊藤清之、鈴木宏明、前木健太郎/中野亮輔(客演)、宮崎卓真(客演)/石飛幸治、藤原啓児 ほか
〈倉田淳プロフィル〉
東京都出身。1976年、演劇集団「円」演劇研究所に入所。第1期生。芥川比呂志に師事。氏の亡くなる1981年まで演出助手をつとめた。1985年、河内喜一朗と共にスタジオライフ結成、現在に至る。劇団活動の他、1994年より西武百貨店船橋コミュニティ・カレッジの演劇コースの講師を務めた。また英国の演劇事情にも通じており、その方面での執筆、コーディネーターも行っている。
〈藤原啓児プロフィル〉
劇団スタジオライフ代表。スタジオライフシニア(1987年入団)。30年以上にわたり劇団員として活躍。劇団以外にも数々の作品に出演している。スタジオライフ作品は、『アンナ・カレーニナ』『はみだしっ子』『卒塔婆小町』『THE SMALL POPPIES』『エッグスタンド』など、ほぼ全作品に出演しながら若手の育成を行っている。

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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