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木﨑ゆりあ×お宮の松×矢島弘一インタビュー/上

東京マハロ第21回公演『たぶん世界は8年目』-幸せな私たち、興味がないあなた達-

真名子陽子 ライター、エディター


拡大左から、お宮の松、木﨑ゆりあ、矢島弘一=冨田実布撮影

 東京マハロが第21回公演『たぶん世界は8年目』-幸せな私たち、興味がないあなた達-を、9月にシアタートラムで上演する。東日本大震災後、原発と向き合いながら立ち直ろうと奮闘していたある家族の人間模様を通して、震災から7年半後の福島避難区域の今を描いた作品。東京マハロを主宰し、脚本・演出を手がける矢島弘一、2017年にAKB48を卒業し、本作が東京マハロ公演2作目となる木﨑ゆりあ、そして東京マハロ公演には欠かせないお宮の松に話を聞いた。

一人の作家としてやるべき題材

――まず、脚本・演出の矢島さんへ、今回、この作品を上演しようと思った理由は何でしょう?

矢島:東日本大震災をテーマにした作品なんですが、2015年に上演した『たぶん世界を救えない』の再演というか、リバイバル作品になります。とても好評を得まして、自分でも思い入れのある作品で、いつかリバイバルしたいなとタイミングを探っていたんです。2020年東京オリンピックの年か、前倒して新年号になる来年か……。いろいろ話し合った結果、もうひとつ前でもいいんじゃないかなということで、今年、上演することにしました。

――上演するタイミングも考えられるんですね。

矢島:来年、再来年だと、そういうテーマ性がある作品をやる劇団も増えるだろうと思ったんです。時代に乗ってると思われたくないなと思ったので、先にやってしまおうかなと(笑)。反対に、世間がいろいろ考えてしまうだろう来年、再来年は、演劇だからこそできるバカバカしい作品をやろうと、2020年までの構想ができたんですね。じゃあ、今年だなと思って決めました。

――リバイバルということですが、内容は変わるんですか?

矢島:そうですね。ほぼ変えるつもりです。テーマは福島の避難区域に住む人たちと電力会社の人たちの話ですね。その方たちの物語をうまく描けたらなと思っています。

――東日本大震災、そして原発のお話を取り上げようと思った理由は何でしょう?

矢島:一人の作家として生きている身として、やらなきゃいけない、やるべき題材だなと思ったんです。

――やはり作家として取り上げたい題材なんですね。

矢島:震災があった2011年に震災をテーマにした作品をやっているんです。その年は僕が初めて下北沢に進出する年だったんです。演劇人として下北沢で上演するというのは、ひとつの目標なんですね。8月に下北沢で上演することは決まっていたんですが、やりたいものはあるけれどまったく台本が書けない、そんな時に震災が起きました。実家のことなどでいろいろバタバタしたんですが、そういう中で書けたのが震災をテーマにしたものだったんです。ボランティアに対する皮肉を思いっきり書きまして、それが関係者の方々におもしろいと言って頂いたんですね。自分はこういう風にさらけ出して書かなきゃいけないんだなと思えるきっかけになりました。

――さらけ出すというのは矢島さん自身の思いを?

矢島:もちろん、そうです。3年前の作品は思いっきり政権を皮肉って書いています。具体的に政権に対してどうのこうの言うつもりはないんですが、今、この国の曲がっているところ、ズレているところを考えると政治が関係してきますので、今回も思いっきり書きたいなと思っています。今、ドラマの脚本も書いていて、優先しているつもりはないんですが、テレビの仕事の方が目立ってしまうので、どうしても自分自身が良い子になってしまう。舞台作品を書く僕はこういうスタイルなんだ、と自分に対する戒めというか(笑)、自分自身を元に戻すために舞台の脚本を書いています。

なんでこんなに女子の気持ちが分かるの?

拡大左から、お宮の松、木﨑ゆりあ、矢島弘一=冨田実布撮影

――お宮の松さんは、これまでも矢島さんの作品に出演されていますが……

お宮の松:今回もそうですけど、矢島さんはちゃんと取材をしに福島に行ってるんですよ。僕はスケジュールが合わなくて行けなかったんですけど、ちゃんと取材をされて、地元の方々とも何度もお話をしたり、飲み交わしたりしてるんですよね。そしてその福島の方々は東京マハロの作品を、わざわざ観に来てくださってるんです。そのいろんな方の思いが作品に凝縮されるので、演じる側としてとても楽しみですね。

――矢島さんは人の心理を描くのが上手と言われています。

お宮の松:うちのかみさんが言ってたのは、なんでこんなに女子の気持ちが分かるの?って。この矢島さんという方はそっち系なの? だから女子の気持ち分かるの?って。全然、普通の男性なんですけどね。

――(笑)。なるほど。

お宮の松:女子が隠そうとしている部分をいちいち端的についてくるのが上手です。言葉を紡ぎ出す能力が長(た)けているから、隠しているところをプツンと出せるんです。そして女性は痛い所を突かれるんだけど、自分のことをわかってくれてるんだってほろっとくる。そういう感じをお客さまからひしひしと感じますね。

拡大左から、お宮の松、木﨑ゆりあ、矢島弘一=冨田実布撮影

――女子の気持ちに限るんですか?

お宮の松:男子は、え? 女子はそんな風に思ってるの?ってなる。男子は鈍感だから気づいていないんです。女子の目まぐるしく動く気持ちの描写が非常に上手なので、女性に刺さるんでしょうね。だから僕のお客さまで観に来られる方は女性の方が多いです。男性も観に来てくれますけど、観づらいというか、観たくないと言う人もいますね。僕らもやってて辛いです。

――辛いんですか?

お宮の松:キツイですよ~!

矢島:どうしようもない男たちを書くんでね、いつも。

お宮の松:「えっ、この役を僕がやるんですか? そんな人間じゃないですよ、俺!」って。そしたら、「分かってますけど、でも、アテ書きです」って言うんです。アテ書きってなんだよっ!って……。

木﨑:アテ書きなんだ!(笑)。

(一同笑)

矢島:お宮さんとはいろんな作品をやってますから、性格をアテ書きするのではなく、セリフやセリフ回しをアテ書きするんです。木﨑ともよく話すし、もちろんテレビでも拝見してるので、音がわかると言うか……その人に合うセリフがあるんですよ。

お宮の松:だからしゃべりやすいんです。言いたくない言葉だけど、僕がこのキャラクターになったらこの口調でしゃべるんだろうなという音が、もうセリフの中に入ってるんです。

矢島:そう言ってもらえるとうれしいですね。

お宮の松:だから、音合わせなんです。セリフを言ってても、そっちの感情じゃなくて、こっちの音にして、と言われる。ん? 音って何??ってなるんですけどね。

――音で感情が出るっていうことですか?

お宮の松:そうなんです。だからその音で笑いが起きたりするんです。僕らがコントや漫才でやっているような世界とは全く違う笑いです。新しい発見でしたね。何もしないでくださいって言われるんですけど、僕らは何もしないで笑いが起きるの?って思っちゃうんです。台本からは笑わせようとしている雰囲気を感じるんだけど、何もしないでくださいって言われる。周りの人が言うセリフで笑いが起きるはずなのでって。で、本番に入ったら本当に笑いが起きるんですよ。いちいち僕がリアクションしなくても、笑いが起きるんです。そういうことは、僕たちは分からないんですよ、指示してもらわないと。そのあたりの妙というのがとても心地いいですね。素晴らしいと思います。

東京マハロが初舞台。とても深く演技に触れられた

拡大木﨑ゆりあ(右)=冨田実布撮影

――木﨑さんは初舞台が東京マハロでしたが、その時の感想を聞かせてください。

木﨑:舞台の稽古は演出の方にひたすら怒鳴られたりするイメージがあったんですが、矢島さんはまったく違って、女性らしいというか……。

お宮の松:何を言い出すんだ!?

木﨑:なんて言うんだろう……ハッキリとそれは違うって言うのではなく、とてもソフトにおっしゃるので安心しました(笑)。舞台に立つのが初めてで本当に右も左も分からなかったので、皆さんに必死でついていきました。また題材がとても難しかったので、いろいろな感情が生まれましたね。

矢島:LGBTの話だったんだよね。

木﨑:とても深く演技に触れられたという感覚がありました。ビクビクしながら稽古場に行くことはなかったですし、フランクな気持ちで役と向き合えました。重いテーマを扱う作品でしたので、役以外のことを考える余裕がなく、すんなり入っていけたのかもしれないです。 今回も前回の作品とは違う意味で重みがあるテーマなので、どんな表現ができるか楽しみなんです。まだ稽古も始まっていないですし、台本もまだなんですけど(笑)。

矢島:まだですみません……ちょっと遠回しに言ったね?

お宮の松:台本を早くしろって今言ったなあ?(笑)

(一同笑)

木﨑:(笑)違います! 台本がまだだから不安というのはなくて、どうなるのかなというワクワク感があるんです。重たいシリアスなテーマを、震災を経験したことのある方、ない方に、いろんな視点で何か伝えられるように、どうやったら演じられるかなというワクワク感があって、不安はあまりないです。

お宮の松:とても順応が早かったんですよ。 AKB48をやっていただけあって順応が早い早い!

矢島:勘がすごくいいです。

――それは木﨑さんだから、ですよね?

矢島:もちろんです。

◆公演情報◆
東京マハロ第21回公演『たぶん世界は8年目』
-幸せな私たち、興味がないあなた達-
2018年9月14日(金)~9月23日(日) 東京・シアタートラム
公式ホームページ
[スタッフ]
脚本・演出:矢島弘一
[キャスト]
福田ゆみ、お宮の松、稲村梓、森一弥、工藤潤矢、内谷正文、篠原あさみ、彩木りさ子、泉知束、中村英香、陰山ひろみ、春木生、輝山立、木﨑ゆりあ
〈木﨑ゆりあプロフィル〉
SKE48第3期メンバーオーディションに合格。3rdシングル「ごめんね、SUMMER」で選抜メンバーに抜擢され、中心メンバーとして活躍。2014年にAKB48へ移籍し、チーム4副キャプテンを経てチームBのキャプテンを務めた。2017年9月にAKB48を卒業し、本格的に女優としての活動を開始。初舞台は2016年の東京マハロ第18回公演『紅をさす』。
木﨑ゆりあ公式ツィッター
〈お宮の松プロフィル〉
たけし軍団の無法松と「北京ゲンジ」という漫才コンビを組んでいたが、2005年に解散。 バラエティ番組で活動する他、師匠であるビートたけしが監督した映画『キッズリターン』『HANA-BI』『座頭市』やドラマ、坂上忍作・演出の舞台作品などにも出演。今年上演された舞台『銀河鉄道999』〜GALAXY OPERA〜では車掌役を務めるなど俳優としても活躍している。東京マハロ作品には欠かせない存在。
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〈矢島弘一プロフィル〉
東京マハロ主宰。脚本・演出を務める。2016年に放送されたドラマ『毒島ゆり子のせきらら日記』で第35回向田邦子賞を受賞。“女性の気持ちを描ける男性劇作家”として注目を集めている。劇団公演では、不妊治療や震災直後の被災地問題、いじめ問題や性同一性障害など人間の深層心理を抉るテーマを多く取り上げ、さらにコメディ作品にも幅を広げている。今年7月にスタートしたカンテレ・フジテレビ系ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』の脚本も担当。
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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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