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杉田水脈議員問題、差別への“赤信号”をルールに

ヘイトスピーチは、信号がない中で起きた大事故。差別禁止法制が必要だ

増原裕子 LGBTアクティビスト・LGBT法連合会事務局長代理

自民党本部前で同党の杉田水脈衆院議員の発言に抗議する人たち=2018年7月27日20180730拡大自民党本部前には、杉田水脈衆院議員の発言に抗議する人たちが集まった=2018年7月27日
 杉田水脈衆議院議員が『新潮45』に寄稿した「『LGBT』支援の度が過ぎる」という論稿が、ネットで大炎上している。「LGBTのカップルは子供を作らない、つまり『生産性』がない」と言いきり、税金を使うことに疑問を唱えたのだ。「生産性」という言葉を持ちだして公然とLGBTを差別する言説は、優生思想につながるとして、LGBTの当事者だけでなく、人権感覚を持ちあわせる多くの人が危機感をつのらせ、批判を展開した。

 公人によるLGBTへの差別発言はこれまでもたびたび繰り返されてきたが、ここ数年は社会での認知の広がりもあり、SNSなどで炎上し、すぐに謝罪や弁明に追いこまれることが続いた。だが杉田氏は、この論稿への批判や謝罪を求める声が大きくなった現在でも、一切会見や謝罪などは行わず、沈黙を貫いている。

石原慎太郎元都知事と杉田水脈氏の違い

 私はこの杉田氏の主張を目にしたとき、2010年に当時の石原慎太郎東京都知事が同性愛者について行った差別発言のことを思い出した。石原氏は「(同性愛者は)どこかやっぱり足りない感じがする。遺伝とかのせいでしょう。マイノリティーで気の毒ですよ」と発言し、当事者たちから批判を受けたが、あまり大きく社会問題化することはなく、謝罪をすることもなかった。

 あれから約8年。杉田発言については、あまりの無知、無理解そして偏見による明らかなヘイトスピーチで見過ごすことはできない、という声の広がりの大きさに正直驚いている。社会の中でLGBTの受け入れが進んでいることが感じられる、嬉しい驚きだ。それと同時に、石原発言と杉田発言の違いについてもおさえておく必要がある。

 石原氏の差別発言は、本音がぽろりと出てしまった、失言の類のものだと理解している。もちろん失言だからといって許されるものではない。一方で杉田氏の主張は、推敲を重ねた文章のはずであり、また編集者も関わったであろう、雑誌における掲載だ。失言レベルのものでは全くなく、確固たる信念を持ってマイノリティへの差別を扇動する文章だ。それこそ「度が過ぎて」いて、看過することはできない。政治家によるヘイトスピーチは、一般市民に与える社会的影響力がきわめて大きいからだ。実際に、杉田氏はこのようなヘイトを喜んで消費し拡散する一定の層を意識して発言していると思われる。

 今回、多くの人が杉田氏の主張に対して大きな怒りや悲しみ、恐怖を表明している背景には、過去に出演したインターネット番組で、「同性愛者の子どもの自殺率が6倍高い」ということを半笑いしながら語る動画が出まわったことがある。雑誌に載った文章と、声のトーンや表情、共演者の同調や笑いといった生の情報で語られる動画とでは、同じヘイトスピーチでも受けとる情報量が圧倒的に違う。問題の動画を見て、「背筋が凍った」「怒りや絶望の感情に押しつぶされそうになった」「死にたくなった」などの声が多くの当事者から聞かれた。

問われる自民党の対応

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筆者

増原裕子

増原裕子(ますはら・ひろこ) LGBTアクティビスト・LGBT法連合会事務局長代理

1977年、横浜市生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程修了。慶應義塾大学卒業。在ジュネーブ国際機関日本政府代表部、会計事務所、IT会社勤務等を経て起業。企業のLGBT施策の推進支援を手がける。2015年、東京都渋谷区パートナーシップ証明書交付第1号となる(2017年末にパートナーシップ解消)。元パートナーの東小雪さんとの共著に『同性婚のリアル』(ポプラ社)、『女どうしで子どもを産むことにしました』(KADOKAWA)など。