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「いたずら」から「セクハラ」へ、経験の再定義

上野千鶴子 社会学者

 性暴力被害が、加害者が被害者の無抵抗を合意に還元し、その加害性や効果を矮小化しようとするのに反して、その実、被害者に甚大なダメージをもたらすことをあきらかにしたのもフェミニズムである。たとえば「つきまとい」を「ストーカー」と再定義することによって、ストーキング行為の悪質さや恐怖はようやく知られるようになった。ストーカー被害の極限は殺人に至る。女性が被害者となる殺人事件でもっとも多いのが「復縁殺人」だが、これを「ストーカー殺人」と呼び変えれば、「状況の定義」は変わる。前者では、「復縁」を迫る男は女に逃げられた被害者に見えるが、後者では女性はいわれなきストーキング行為の一方的な被害者である。

 ちなみに「痴漢は犯罪です」というポスターを、東京都の地下鉄で見たときの感動は忘れない。

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筆者

上野千鶴子

上野千鶴子(うえの・ちづこ) 社会学者

1948年富山県生まれ。社会学者。東京大学名誉教授、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク理事長。1994年、『近代家族の成立と終焉』でサントリー学芸賞、2011年朝日賞受賞。著書に、『ナショナリズムとジェンダー』『生き延びるための思想』『おひとりさまの老後』『身の下相談にお答えします』『男おひとりさま道』『おひとりさまの最期』など多数。近刊に『女ぎらい――ニッポンのミソジニー』(朝日文庫)。